プリオリは、ミッスル家に仕えるようになってからまだ半年が経たない。
かつて仕えていたユード家を見限ったその理由は、もはや誰もが知っていることだ。
ユード家は先月、クキ帝国の無情な攻撃を受け、完全に滅ぼされた。
プリオリは、その命運を予見していたわけではなかったが、あの家族に仕えていた自分の選択が正しかったと感じていた。
家族からの厚遇は変わらないものの、重臣たちの態度が時折冷たく、どこか遠い存在であることに気づく。
ある日のこと、プリオリは重臣たちが集まっているのを見かけた。
彼らは一見、何でもない話をしているように見えたが、その背後には微妙な緊張が漂っていた。
「どうして私を呼ばない?」プリオリは胸の中で呟いた。
彼女はもう、何かを見逃すわけにはいかない。それでも、ミッスル家の中で自分の位置が定まらないことが、次第に不安を募らせていった。
しかし、もしもクキ帝国からプリオリに粛清命令が下されれば、ミッスル家は何の躊躇もなくそれに従うことだろう。
しかし、現実にはそのような命令が下される可能性は極めて低いとされていた。
ユード家のように滅ぼされることは、考えにくかった。
それでも、プリオリはそのリスクを胸に抱えたままだ。
彼女は以前、あのユード家の人々が最後に見せた表情を忘れられない。
忠義と誇りがあったはずなのに、結局は何も守れなかった。
彼らの無力さと恐怖に満ちた眼差しを、今でも鮮明に思い出す。そして、自分も同じようにその運命に飲み込まれるのではないかという恐れが、プリオリを支配していた。
だが、彼女がその話に関与することはなかった。
プリオリはそれを聞き流し、ふと立ち止まった。その瞬間、心の中で反復される言葉があった。
「もう誰も信じない。」
そのフレーズは、彼女がユード家を見限った時の決意を思い起こさせた。
だが、今の自分に対してもそれを思う瞬間があった。
彼女は信じられるものが何もないことを痛感していた。それでも、何かを信じなくては前に進むこともできない。
翌朝、プリオリは重臣たちとの短い会話で少しだけ希望を持った。
心の中でその言葉を繰り返しながら、再び少しだけ立ち上がる気力を見出すことができた。
ミッスル家に仕えている自分の立場が、彼女の決断をどれほど大きく左右するのか、それはまだわからなかった。
プリオリはその一歩を踏み出すと、再び歩みを進めていった。