概略:中華後宮モノラノベのコミカライズ作業における不満を爆発させた漫画家を小学館の畑中雅美が説得する内容がマジで凄い。
「関係者全員が可哀想」中華風ファンタジーのコミカライズ担当になった漫画家が「原作者の対応」に不満…→相談を聞いた「編集者の回答」が重く鋭い - Togetter [トゥギャッター]
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のmondの前半がコミカライズ担当者の不満。後半が編集者の回答。
ぶっちゃけ質問部分は「面倒な人が怒ってる」で終わらせて回答だけ読めばいい感じ。
まず出だしのこの言葉がすごく的確ですね。
「そんなこと言わせてゴメンな……」の「本当に使える版」ですねコレが。
これぞ基本です。
これ以外の手は意図して行っても「奇策」ですし、意図してないなら「愚策」です。
定石は大事です。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!褒め殺しだ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
これをいきなり打たないで10行ぐらい相手を待たせるのが上手いですね。
まず「原作者にはこういう意図があったのでしょうね」と語って相手を焦らしています。焦らしなんですよコレは。
相手は既に限界状態なのでさっさと「よしよし……そんなこと言わせてゴメンな……ギュッ……」ってされたい気持ちしか頭にない。
でもいきなりこれをやってしまうと相手の頭がいよいよ赤ちゃんになってしまうから少しだけお預けする。
そのためにも初手で「分かるよ……みんな可愛そうだよね……」を入れて10行分程度エネルギーを回復せさえ手おくんですね。
もうこれで相手は「あっ、この人は私の話をちゃんと聞いてくれるんだ。じゃあ私もちゃんとこの人の話を聞こう」になってますよ。
上手いですね。
現状の整理と褒め殺しを織り交ぜながらの話が続きますが、その中でも要石はここにあります。
「あなたの判断は、あなたの視点から見れば、たしかに妥当なものでした」と言ってあげるのです。
このあとに「でも、相手の視点から見れば、そこには簡単に首を縦に振れないものがありますよ」が続くのですが、まず先に「あなたの意見は確かに妥当でした」と言っておくんですね。
これ、結構難しいんですよね。
一歩間違えると「あなたが正しいです」と言った瞬間に相手が「そうでしょ?やっぱアイツが全部間違ってるんだよ!これから一緒に殴りに行こうか」となってしまいます。
そうしないためには相手のモードを脊髄反射モードではなく、傾聴モードにする必要があるんですよ。
ここで聞いてくるのが今までの焦らしです。
褒める→現実を受け止めさせる→褒める→現実を受け止めさせるのループを繰り返したことで相手はある程度の長さの話を聞けるだけのテンポが産まれています。
なので、「あなたは正しい」にすぐに飛びつかず、「相手も正しい」と続くまでを耐える余裕が出てくるんですね。
どっちを先にするかは難しいのですが、ここでビビって「相手も正しいんですよ。あなたも正しいですけど」という順番にしてしまわなかったのはこれまでの話術が効いているという自信があってこそでしょうね。
素晴らしい。今まで自分が稼いだポイントを自分でちゃんと計算しながら組み立てている。
素晴らしい責任転嫁。自家中毒で脳みそが弱りきった相手を説得するのってこうやればいいのか!と舌を巻くしかないです。
これね、「今回の件はあなたの頭や性格が悪いのではなく「知識」というものが力を持ちすぎてるからそれに飲み込まれちゃったんですよ。知識って怖いですよね~~~」という見事な責任転嫁なんですよ。
罪を憎んで人を憎まずとは言いますが、憎むべき罪と相手を切り離すのは結構難しいわけですが、これはもう見事にそれを切り分けてます。
人間は自分が裁かれたり攻撃されていると思うとどうしても気持ちが落ち着かなくなるし、防衛本能で敵意さえもみなぎってしまいます。本能って怖いですよね~~~。
その問題を「これもすべて知識って奴のせいなんだ」とすることで解決してます。
この文章が実際何に対して言ってるのかをちゃんと読み取れるの、日本人全体の半分もいないと思いますね。センター試験の現国にも採用できそうです。
これはですね……「原作者がコミカライズ担当者の意見に猛反対しないのは、原作者側が落ち度を認めているからなんだ」というコミカライズ側の慢心を諌めるためのものです。
拗れきった関係性を一刀両断ではなく丁寧に紐解いて軟着陸させようという心意気も凄い。
確かにここで上手くやらないと「でも原作者は自分の知識不足を認めてるくせに適当なおべんちゃらで逃げ続けてきた卑怯者だし……」とさえ思いかねないのがこのコミカライズ担当者ですからね。
ちゃんと対処しておくのは大事ですが、そのために頭捻って絶妙なバランスを取りながら表現しようって気持ちが凄いなあ。
説得というのはこうやってやるんですね。
相手の感情と認知状態をコントロールしつつ、一つ一つ丁寧に認識の齟齬を正しい状態へと変えていく。
状況認識そのものがおかしくなってしまった相手に対処するにはこういう技術が必要なんですね。
実に難しいということがよく分かりました。
正解を見ながらなら私もなんとなく何をしてるのか分かりますが、それを自分が出来るかと言われればぜひプロに丸投げしたいなあとしか……。
本当大変だなこういうの。
まず出だしのこの言葉がすごく的確ですね。 拘りと被害者意識が強い女性漫画家に対して完璧な入り。 「そんなこと言わせてゴメンな……」の「本当に使える版」ですねコレが。 ...