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2025-02-07

AI推進派と反AIから見る現状の生成AIを取り巻く環境

生成AIが登場してからAI賛成・反対で争いが続いているように思うので、とりあえず現状を整理する意味中立視点で生成AIを捉えてみる。極力中立意識して書くが、個人主観意図せず入ることはご容赦願いたい。まずは議題をまとめるために、議論ターゲット定義する。

この議論ターゲット

基本的には画像生成、テキスト生成、動画生成、音楽・音声生成などの生成AIターゲットとする。具体的なサービスとしては

  • Stable Diffusion
  • Midjourney
  • ChatGPT
  • Gemini
  • Claude
  • Grok
  • DeepSeek
  • Sora
  • SunoAI

などの生成AIたちがターゲットである

ここでの議論では、生成AI技術的な内容にはあまり触れず、これらの生成AIは「モデル」に「データセット」を「学習」させることで作られることとする。また、生成AIユーザーはその「学習済みモデル」を使って画像テキスト動画、音声などを「生成」することができるとする。

そして、生成AI推進派はこれらの生成AIを推進する、あるいは使っている人たちのことを指し、反AIはこれらに反対する、あるいは使わない人たちのことを指す。

それらとは別に、生成AI話題に無関心、疎いな層も一定数いることを付記しておく。

まずAI推進派、反AIの主な意見を見ていく。

生成AI推進派の意見

AI意見

現行法による理解

現行の著作権について

日本現行法に照らし合わせるとデータセットの作成にあたり、著者の許可は「原則不要である

詳細は文化庁AI著作権」のP.37~40を参考。(AI著作権,文化庁,https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf]

一方で、生成AIが出力した著作物著作権侵害をしているか否かの判定については、「人とAI区別することなく」著作物著作権侵害をしているかどうかを既存ルールに則って判断される。(同P.43~)

例えば、最近だと「エヴァ」のポスターを生成AI作成して販売した人が書類送検された事件(参考:AIで「エヴァ」のポスター生成し販売 神奈川初、著作権違反容疑で男性2人を書類送検,yahooニュースhttps://news.yahoo.co.jp/articles/33573f324daa8f9f894660b6309ff356a4d338b0])が発生している。上記理解に則ると生成AIが使われたか否かは関係なく、ポスターが「エヴァ」の著作権侵害していることが原因である理解できる。

AI学習禁止」の明記について

最近では著者が自身著作物保護するために、著作物に対して個別に「AI学習禁止」を掲げている場合や、プラットフォーム上で著作物AI学習に使われないように申告(オプトアウト)することができる。このようなケースは「契約」と捉えることができる。そのため、上記のようにデータセットの作成にあたり法的に著者の許可不要であったとしても個別対応必要であり、無断でそのような著作物データセットに使うことはできない。

例外的データセットについて

では「AI学習禁止」を明記していれば著者の権利が正しく保護されるかというとそうとも限らない。さら議論を重ねることになるが、簡単に思いつくだけでも以下のような例外的データセットが存在する。

1つ目の「生成AI登場以前に作成されたデータセット」については、そもそもそのデータセットが作られた段階ではAIによる学習禁止を明記していない著者がほとんどであったと考えられるし、各種プラットフォームにそのような設定項目も存在しなかったと考えられる。そのため、それらのデータセットを使った学習禁止することは法的には難しい。2つ目の「生成AIによって生成されたデータ(合成データ)によるデータセット」についても、生成AIが出力した著作物がたとえ学習元のどれかの著作物類似していたとしても、学習元の著作物の著者が著作権を主張することは困難である

これらのようなデータセットが存在することを考えると、仮に「AIによる学習禁止」を掲げていたとしても、著作物絶対データセットに使われないと言い切ることは難しいであろうと考えられる。

実際に、以下の例ではDeepSeekが学習に用いたデータセットにOpenAI提供するモデルの出力が使われている可能性について話題になっているが、明確な根拠は今のところ示されていない。

DeepSeekの学習データにOpenAIモデルの出力が使われていることについて

OpenAIは、OpenAIAIモデルの出力を他モデル学習に使うことを禁止している。しかし、OpenAIが発表している生成AIモデルに使われているデータセットは非公開であり、そのデータセットに一部無許可データが含まれている疑いは当初から挙がっている。それらの前提のもとで、最近だとDeepSeek がOpenAIの出力データ学習に使っているという疑惑(参考:DeepSeekがオープンAIデータ不正入手か、マイクロソフト調査中,Bloomberg,https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2025-01-29/SQTXNQT0AFB400])があり、DeepSeekの妥当性が疑われている。(OpenAI自身データセットを非公開としており、データセットの透明性が確保されていないことからダブルスタンダードであるとの見方もある。)

しかしながら、このDeepSeekの疑惑については一考の余地が残されている。DeepSeekに限らずその他数多くのAIモデルもOpenAIの出力を学習している可能性があり(参考:逆に、すべてのローカルLLMは開発元をOpenAIだと思い込んでいる説, zenn,https://zenn.dev/yuiseki/articles/d90c4544ea3ea6])、OpenAIの出力が何らかの形で間接的にその他AIモデル学習に使われていると考えることもできる。例えば、OpenAIユーザがOpenAIの出力を加筆修正してインターネット上に公開したサイト(例えば上記zennのページのようなAIの出力が含まれているサイト)が、他AIモデル学習に使われるケースなど。このような場合には、OpenAI以外の他AIモデルは明確にOpenAIの出力を学習に使ったと断言できないため、OpenAIの主張を全面的に賛成することには疑問であると考えることもできる。

現行法に対する指摘

ここまでの議論では、現行法に則って事実ベースで生成AI解釈した。一方で、現行法だけでは法整備が追いついておらず、生成AIの脅威が考慮されていないとの意見もある。具体的には以下のような例である

それぞれの主張について、もう少し具体的に意見の内容を掘り下げる。

著作権侵害適用限界

著作権侵害は一部非親告罪となっているものの多くが親告罪となっており、著作権侵害が判明した際には著者が主体的に動く必要がある。一方で、生成AIによって生成された著作物は通常の何倍もの速さで作られるため、生成AIの出力を確認するために多くの労力を割くことになり、都度親告することは非現実的である。また、著作権侵害裁判に関する訴訟費用や、認定されるまでの期間などを考慮すると現行法適用するだけでは限界がある。

特に法整備に関しては問題が起きてから強化されることが多々ある。(例えば、あおり運転飲酒運転違法アップロードなどは社会的問題を受けて強化されている)そのため、現行法適法であってもそれが今後も適法であるとは限らず、継続的議論を経て強化される可能性がある。

クリエイター保護観点の欠落

生成AIの構築にはモデルだけではなく、データセットも不可欠であるしかし、そのデータセットに多大な貢献しているクリエイターに対してインセンティブがなく一方的著作物搾取されている。このような状況では、クリエイターは生成AIの構築に協力する理由がない。その上、生成AIにより一部の仕事が奪われる可能性が考えられており、そのような業界からはかなり反発がある。例えば、イラストレーター翻訳家声優新聞ニュースなどの業界では、既存業務が生成AI代替される可能性を危惧しており、かなり否定的である

現状の法整備ではそのような業界に関わる方々のリスペクトが一切なく、生成AI一方的データセットとして学習に使っている現状がある。クリエイターの方々の努力があったからこそ、生成AIが登場できたのにも関わらず、生成AI側が一方的搾取しているためかなりいびつ構造となっている。そのような構造を解消するため、クリエイター保護念頭に置いた生成AI規制が導入される可能性がある。

国際的な生成AIの扱い

ここまで日本法律ベースとして議論を進めたが、生成AIを語る上では海外の生成AI取り組み状況も欠かせない。現状では、生成AIアメリカのOpenAI業界リーダー立ち位置を確保しており、大手ではGoogle, Meta,Microsoft などが追従している。また、生成AIの開発にはGPU必要不可欠であり、GPUの開発・生産の最大手であるNvidiaアメリカ企業である。一方で、最近話題になったDeepSeekは中国で開発されたモデルである中国はほかにもAlibabaが生成AIを開発しており、アメリカ技術を競うことができている。それ以外の国の生成AI研究アメリカ中国とはかなり水をあけられており、ヨーロッパですらアメリカ中国の間に割って入ることができる技術力を持ち合わせていない。(唯一フランスのMistralは米中の各種モデルに引けを取らないレベルモデルを発表できている程度)そのような事実から日本は生成AI研究ではほとんど世界インパクトを残せておらず、アメリカ中国が開発した生成AIにかなり依存してしまっている。

日本で生成AI規制するリスク

このような背景から日本で生成AIに強い規制をかけてしまうと、生成AIの分野で世界から全く相手にされないほど遅れを取る可能性が否定できない。特にテキスト生成については日本ローカライズには一定価値があり、アメリカ中国モデル日本語に翻訳するだけでは日本の文化的背景が正しく反映されない可能性がある。例えば、DeepSeekは「尖閣諸島中国固有の領土」(参考:中国AIディープシークが「尖閣中国固有の領土」 自民小野寺氏、衆院予算委で懸念表明,yahooニュース,https://news.yahoo.co.jp/articles/3c710d40d096b74670f09a8bc377b29f33b814a3l])と日本認識とは異なる回答をしてしまう。そのようなことを考慮すると、今後の国際社会情報戦のために生成AIに取り組む必要があり、日本規制を強めた結果として生成AIの開発が出来なくなることは国際領土問題にすら発展しうる可能性がある。

また、他国から見てもこれは同様で、自国で生成AI規制を強めた結果として他国に遅れを取ることがかなり大きなリスクになることを懸念していると考えられ、いわばチキンレースのような状態になってしまっている。

EUAI規制状況

ここから世界AIに対する規制状況を見ていく。アメリカ中国日本EUの中で一番AIに対する規制が強いのはEUであり、昨年AI法が成立している。(参考:EUAI法案加盟国承認され成立規制2026年適用の見通し,NHK,https://www3.nhk.or.jp/news/html/20240521/k10014456551000.html]EU個人情報保護観点世界リードしており、AI法もそのような風潮に乗っていると考えることができる。AI法はAIが持つリスク使用用途に応じて評価しており、リスクが高いと判断された使用用途でのAI利用が禁止されたり、人による確認義務付けられたりしている。

まとめ

ここまで生成AIに対する賛否と、生成AIを取り巻く環境をみてきた。賛成、反対にそれぞれ筋の通った主張があり、どちらかが一方的に正しいと判断を下すのは難しい。とはいえ、実際に生成AIが広く普及したことで表出してきた問題点があるのはたしか。だからと言って、生成AIの完全な禁止国際的視点から見てもやはり有り得ない。賛成派、反対派が歩み寄り、折り合いがつく着地点を少しずつ模索していくことが重要

ここでは触れられなかったが、言及たかたこ

筆者の感想

生成AIは「正しく」使えば便利な道具だと思うが、悪用が悪目立ちするので印象がよくない。そもそもインターネット治安なんてもともとこんなもんだった気がするが、生成AIでよりお手軽にイラスト文章を作れるようになってしまったので、お手軽に治安の悪さが発信できているだけのように見える。

一方で企業レベルでは生成AIを正しく使って業務改善する動きが活発であり、今後数年かけて業務改善していくなら週休3日か、所定労働時間を5時間ぐらいにしてほしいなと思っているところ。仕事を早く終わらせたところで増えるのは給料ではなく仕事になる予感しかしない。

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