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< anond:20250105002121 |anond:20250104180822 >

2025-01-05

ブラコン妹が激しくウザい

 俺には、二歳下の妹がいる。一般的に「ブラコン」というと、「お兄ちゃん大好き♡」と言わんばかりに愛情を注いでくる妹を想像するかもしれないが、うちのはそれを遥かに通り越して「ウザい」レベルに到達している。名前真奈(まな)。俺は一応「健太(けんた)」と名乗っているが、この妹だけは決して俺のことを「健太」とは呼ばない。

「おにーちゃん、朝だよ! 起きてる? 起きてないよね? 起こしに行っちゃうよ?」

 朝の6時。目覚ましよりも正確に飛び込んでくるこの声が、本当に鬱陶しい。平日の学校ならまだわかるが、今日日曜日だ。部活バイトもない貴重な朝に、どうしてこいつはこんなにも元気なのか。

 妹が俺の部屋の扉を勢いよく開ける。コンコンノックする概念はどこへ行ったのか。ベッドに突撃してきそうな気配に身構えるが、俺は慣れたものだ。ぎゅうっと布団を抱えて寝返りを打ち、「今、すごくいい夢見てたのに……」とムニャムニャつぶやいた。

「ねえお兄ちゃん、早く起きて! 今日お兄ちゃんと一緒に買い物に行くって約束したじゃん!」

 ちょっと待て、そんな約束などした覚えは……ない。が、真奈の頭の中ではどうやら「自分一方的提案したこと約束」らしい。俺は溜息をつきながら、布団から頭だけ出して相手を見る。

「寝ぼけてるの? 先週の土曜日に『来週の休日は一緒に外出しようね』って言ったの、お兄ちゃん忘れたの?」 「いや、それは真奈勝手に言ってただけだろ」 「じゃあイエスともノーとも言わなかったよね? つまり、それはイエスなんだよ!」

 その論理はどこからまれたのだろう。こんな屁理屈に付き合っていられない。大体、日曜日くらいゆっくり寝かせろってのに……。仕方なく俺は観念して、渋々起きあがった。

「30分だけ待て。シャワー浴びるから」 「うん、じゃあ早めにお願いね♪」

 真奈は満面の笑みを浮かべて、俺の部屋を去っていく。その姿を見るだけで頭痛がするが、俺は無理やりカーテンを開けて朝の光を目に受ける。今日の予定は、ショッピングモールで妹に振り回される一日になるんだろう。高校二年の妹を連れてどこを回るんだか……。はあ、だるい。だが、断れば断ったで、また「お兄ちゃんに嫌われた!」と落ち込みモードに入られ、それはそれで面倒だ。妹ってやつは、いくらブラコンでも男の扱いをわかってなさすぎる。

 シャワーを浴びて着替えを済ませ、リビングに行くと、すでに朝食が用意されていた。真奈エプロンをつけてフライパンを振っている。両親は共働きで、朝早くから仕事に出てしまうので、休日はだいたい俺と妹の二人きりになることが多い。こうして朝食を作ってくれるのはありがたいのだが、それ以上に「俺の傍にいたい」という意図が見え透いていて、こそばゆいというか、面倒くさいというか……

「お兄ちゃん目玉焼きは半熟でいい? いつもどおり塩コショウで食べる? それとも醤油にする?」 「……いつもどおりで」 「はーい。任せて!」

 妹の視線が、やけにきらきらしている。こんなテンションで毎朝絡まれるのは本当に堪える。俺がソファに腰を下ろすと、妹はうれしそうに鼻歌を歌いながら料理を仕上げ、まるでレストランのように見映えまで気にしたワンプレートを差し出してきた。

「召し上がれ、お兄ちゃん」 「……いただきます

 うまい。そこは素直に認める。真奈料理が上手いし、家事手際がいいから、そこは本当に助かる。けれど俺が「ありがとう、美味しいよ」と言うと、「えへへー」と言って顔を赤らめ、さらに俺に近寄ってくるから困る。視線を外そうとしても、まるで小動物のような瞳でずっとこちらを見つめている。

「そんなに見てると食べにくい……」 「だって、お兄ちゃんがおいしそうに食べてくれるの見るの好きなんだもん」 「……ブラコンこじらせすぎだぞ、お前」

 俺が呆れたように呟くと、妹は嬉しそうににへらっと笑う。「ブラコンだろうがなんだろうが、お兄ちゃんはお兄ちゃん!」みたいな勢いで、胸を張っているのが痛々しい。普通の妹なら「えー、そんなに兄のこと好きじゃないよ」とか否定するものじゃないのか?

 食事を終え、皿洗いは妹がやるというので、俺は先に着替えの支度をすることにした。なぜなら「お兄ちゃん、今着替えるの? 見ちゃダメ?」と言い出されると本気で厄介だからだ。そこだけは死守しなければならない。

 結局、支度を済ませてリビングに戻ると、妹はちゃっかり俺のコートほこりを払っていた。まるで執事か何かのつもりなのか。「どうせなら私のコートも払ってくれよ」と言いたいところだが、言うだけ無駄だろう。何も言わずに外に出ると、妹がピタリと俺の左腕にしがみついてくる。

寒いね、お兄ちゃん」 「はいはい、行くぞ」

 こうして、まるで恋人のように腕を組む妹と一緒に、近所のショッピングモールへ向かう羽目になった。俺は18歳の大学一年、妹は16歳の高校二年。一応、年齢的にはそこまで離れていない。だが、このイチャつきぶりはどう見ても普通きょうだいではない。それでいて、妹は周囲の視線をまったく気にしない。むしろ「どう? 私のお兄ちゃん、カッコいいでしょう?」みたいに見せびらかしているフシすらある。

 モールに着くと、妹は嬉々として服屋や雑貨店を回りだした。俺が少しでも反応を示すたびに、「お兄ちゃん、これ似合うと思う?」「あ! このセーターの色、お兄ちゃんが好きなやつだよね?」と、矢継ぎ早に話しかけてくる。うなずくだけで「うん、やっぱりそうだよね!」と興奮し、俺の手を取ってレジへ向かおうとするから困る。

「買うの? それ、高くないか?」 「うん、でもお兄ちゃんが少しでも興味示してくれたから。これ着て、お兄ちゃんに見てもらいたいの」 「……まあ、試着くらいはすれば?」 「うん!」

 試着室に入り、鏡の前でくるくる回る妹を見ていると、やはり普通かわいいと思う瞬間もある。だが、問題は妹がそれを自覚したうえで「お兄ちゃんにだけは見せたい」と張り切っていることだ。しかもこの妹、友達といるときは「兄に興味ない風」を装っているらしい。わざわざ同級生に「真奈ちゃん、兄いるんだってね。どんな人?」と聞かれると、「えー、うちは普通だよ、全然かっこよくないし」などと取り繕うらしい。……実に腹立たしい。だったら家でもそうしろと思うが、家ではその反動が全部俺に向かってくるから手に負えない。

 そんなこんなで、妹の服選びに付き合って数時間。ふと、妹がカフェコーナーでソフトクリームを買ってくると言い出したので、俺は待合スペースの椅子で待つことにした。荷物持ちのバッグには、妹が買った服や小物がぎっしり詰まっている。ここまでくると、彼氏役を任されているような錯覚すら覚えるが、それを本当に「彼氏気分」になって楽しめるなら、俺もこんなに苛立たないのに。いや、そもそも実の妹だ。そんな心境になれるはずもない。

 少し空いた時間スマホをいじっていると、ラインの通知が光った。相手大学同級生女子――朱里あかり)だ。先日同じサークルで知り合った子から、「今度の飲み会健太くんも来るよね?」という確認の連絡が入っている。朱里はけっこうノリが良くて、話しやすい子。実はちょっと気になっているんだが、妹がいるからどうこうというわけではないにせよ、俺にプライベート自由時間ほとんどないのがネックだ。妹がいつも干渉してくるせいで、大学生活の楽しみも半減している気がする。

「お兄ちゃん、どうかしたの?」

 妹がソフトクリームを2つ手に戻ってきた。どうやら俺の表情を見て、何か感じ取ったらしい。気まずさを隠してスマホポケットしまう。

「いや、なんでもない。大学友達から飲み会の誘いがあって……」 「ふーん。行くの?」 「……行くよ、たぶん」

 妹が少しだけ眉をひそめたのを俺は見逃さなかった。嫌な予感がする。まさか、ここから「誰が参加するの?」とか「女の子いるの?」と尋問が始まるのでは。すると妹は、まるで拗ねた子どものように唇を尖らせた。

「お兄ちゃん、私の知らないところで遊ぶのかあ」 「当たり前だろ。俺だって大学生なんだから」 「そっか……。じゃあ私も友達と遊ぼうかな。あーあ、でも高校友達バイトがある人多いし、もうすぐテストもあるし……」

 そういう問題ではない。妹には妹の生活があるんだから、俺を基準自分の予定を立てるのはやめてほしい。俺は心の中でため息をつきつつ、ソフトクリームを受け取り、一口かじる。冷たい甘さが口の中に広がるが、気分はあまり良くならない。妹が「美味しい?」と笑顔を向けてくるのに、俺は曖昧に「まあまあ」と返すだけだった。

 午後も、妹に引きずられる形で雑貨店書店を回った。俺が気になるコーナーに立ち寄ると、「お兄ちゃん、それ何? 見る見る!」「こういうの興味あったっけ?」と付きまとってくる。一人でのんびり見たいと思っても、横からちょっかいを出してくるせいで集中できやしない。帰ろうと言っても、妹は「最後に向こうのゲームセンターだけ寄ろう」と言い張り、クレーンゲームに熱中し始めた。

「お兄ちゃん、これ取って! 私にぬいぐるみプレゼントしてよ!」 「自分でやれっての」 「だってお兄ちゃんと一緒にやりたいんだもん~!」

 人目をはばからず甘えてくるこの調子。もはや呆れを通り越して、引くレベルだ。俺が渋々100円玉を投入してアームを操作してみても、なかなか景品は取れない。一方、妹が「ちょっと貸して」と言ってやってみたら、意外にもあっさり取れたりするから不思議だ。そんなときも「お兄ちゃん応援のおかげだよ♪」などと言って、俺に抱きついてくるから気が気じゃない。周りの視線が痛い……。

 ようやく帰り道に着くころ、外は夕日でオレンジ色に染まっていた。荷物の重みで肩が痛いが、妹の方は「いっぱい買えて大満足~」とご機嫌だ。俺は「今日だけで一体いくら使ったんだよ……」と半ばあきれながらつぶやく。すると妹は「お兄ちゃんと過ごす時間プライスレス!」とわけのわからないことを言い出す始末。本気でウザいが、こいつなりに兄のことを慕っているのだけは伝わってくる。

 家に帰り、夕食を作る気力もなくなった俺は、コンビニ弁当で済ませようと言い出した。だが妹は、「せっかくの日曜日なんだから、私がちゃんと作るよ」と言い張る。慌てて「いや、もういいよ」と止めようとするも、「お兄ちゃんソファで座ってて!」と強引に台所へ消えていく。こうなると俺にできることは、テレビをつけて適当チャンネルを回すくらいだ。

 ジャージに着替えて、ソファでダラダラしていると、妹が途中でやってきて「調味料、どこ置いたっけ?」とか「お兄ちゃんご飯炊飯スイッチ入れてくれた?」などと質問を投げてくる。姉妹じゃなくて妹だけど、まるで新婚夫婦のやり取りじゃないかと考えてしまい、背筋が寒くなる。

 しばらくして食卓に並んだ料理は、どれも手が込んでいて美味しそうだった。疲れた体にしみる優しい味わい。俺は素直に感謝するが、そこに必ずと言っていいほど妹の「べたべた攻撃」が入る。

「お兄ちゃん、食べさせてあげよっか?」 「いや、自分で食べられるから」 「大丈夫大丈夫。あーん……」 「だから、いいって……」

 これではまるで幼児扱いだ。表面上はツンと突っぱねるが、妹があまりにも押しが強いので、最終的には「まあ、いっか」と甘んじてしま自分も情けない。なんだかんだ言いながら、俺もどこかで妹の手料理に癒やしを求めているのかもしれない。家族だしな、仕方ない。

 そんな日常いつまでも続くのかと思っていたある日のこと。妹がスマホをいじりながらニヤニヤしていたので、つい「何見てるんだ?」と聞いてみた。すると妹はわざとらしく「え~、教えな~い」とそっぽを向く。俺は怪訝に思い、「お前がそんな態度とるなんて珍しいじゃん」と続けると、妹はほんのり頬を染めて、「気になる? 気になるならもっと私に優しくしてくれたら教えてあげる」とからかうように笑った。

別に、気にならないけど」 「ふーん。どうせお兄ちゃんは私のことなんかどうでもいいんだよね~」

 妹は拗ねて見せるが、その背中はどこか嬉しそうにも見えた。いつもはあれほどベタベタくっついてくるのに、この日は珍しく部屋に引きこもってしまう。おかしい、これは一体どういうことだ? そう思いつつも、「面倒ごとは放っておけばそのうち妹から寄ってくるだろう」と高をくくっていた。

 ところが、その夜になっても妹は部屋から一向に出てこない。俺がシャワーを浴び終わって、いつもならリビングで一緒にテレビを見ている時間帯なのに、まったく気配がない。さすがに少し気になって部屋のドアをノックしてみると、「なに?」と抑え気味の声が返ってきた。

「……お前、夕飯は? まだ食べてないだろ」 「うん、あとで食べるから先に寝てていいよ」

 妙な距離感に、俺は胸の奥が落ち着かない。あれだけ「お兄ちゃん大好き♡」とまとわりついていた妹が、急にそっけないと逆に不安になる。何かあったのか、それとも単なる気まぐれか。もしかして、あのスマホ相手は男なのか? そんな可能性を思い浮かべている自分に驚いた。いや、妹が彼氏を作るのは自由だし、むしろあれほどのブラコンが誰か他に興味を示してくれるならありがたい。でも、いざそうなると、何とも言えない複雑な気持ちが湧き上がってくるのはなぜだろう。

 結局、その日は妹を放っておくことにして、自室へ戻り布団に入った。しかし、気になってなかなか寝付けない。こんなに落ち着かないのは初めてかもしれない。妹がいないと解放感があるはずなのに、逆に静寂が堪えるというか……。どこまで俺は妹に振り回されれば気が済むんだ。

 翌朝、寝起きが悪い頭を抱えてリビングに行くと、妹はいつもどおり料理をしながら、「おはよー、お兄ちゃん」と微笑んでいた。だが、その笑顔は昨晩の出来事をなかったことにしているかのようで、どこか不自然な明るさが滲んでいる。そして俺が突っ込む間もなく、妹は鍋の蓋を開けて、「もうすぐできるから待っててね」と言うのだった。

 ――ブラコン妹は、激しくウザい。それは今も昔も変わらない。だが、時に何か隠しごとをしている様子が垣間見えると、妙に落ち着かなくなる自分がいる。正直、妹のベタベタが嫌だと思っていたはずなのに、こんなにも翻弄されるとは……。これから先、俺たちにどんな変化が訪れるのかはわからない。だけど少なくとも言えるのは、妹の「お兄ちゃん好き好き攻撃からはまだまだ逃げられそうにない、ということだけだ。

 そして、妹がこれからどんな形で俺に突っかかってくるのか、さっぱり予想がつかない。だけどまあ、ウザいウザいと言いながらも、俺はそれなりにこの日常に慣れ始めているのかもしれない。ブラコン妹が激しくウザいなんて言いながらも、心のどこかで当たり前のようにそれを受け入れている自分がいる。これって一体何なんだろう。

 いつか、俺が大学生活の中で彼女でも作ろうものなら、妹は一体どんな反応をするのだろうか。それはちょっと想像しただけで恐ろしいが、どこかワクワクもしてしまう。ひょっとして……これが共依存ってやつなのか? 違う、違う。断じて違うだろう。とにかく、家族としての境界線は死守しつつ、上手く付き合っていく方法を見つけるしかない。

 そんな思いを抱きながら、俺は毎朝鳴り響く妹の「起きて! お兄ちゃん!」というコールに、これからも頭を抱えるのだろう。振り回されるのは勘弁だが、まあ、これはもう一種の“日常”なのかもしれない。

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