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こんな気持ちでいられたら

ロートル病理医。地味な医者ですが、縁の下の力持ちでいられることに誇りを持っています。

私のことそんなに噂しないで

今、世間を騒がせている人の名前をネットでググると、あっという間にその経歴が出てくる。親族係累に著名な人がいたら、その人たちの名前もリンクが張られていて、どこにも逃げ隠れできないかのようだ。人間の噂好きという欲求がネットを利用してどんどん高められている。こんなことを考えていたら、筒井康隆の『おれに関する噂』という小説を思い出した。これまたネットで調べてみたら、もう40年以上前の作品だから、筒井の慧眼には驚いてしまうが、読んだ頃には”こんなことが”現実になるとは思っていなかった。

”(私コロ健の)本名+病理”で検索しただけでもそれなりの数がヒットする。これで、私が何かしでかして、そのことが一旦マスコミに取り上げられたりしたらどうしようもなくなるであろうことは想像に難くない。自分で利用しておいて、それに対して危惧するなんて自分勝手なことだが、それだけこれらのことを切り離して考えることが難しい時代になってきているということだ。

それにしてもこういう様々な記録がネット空間に永遠と残ってしまうというのは、気がかりなことだ。今は、人ごとだけど、もしこれが我が身の上のこととなったら相当辛い。今は、自分の名前を探しても、著作、講演、論文などの仕事関係のことしか出てこないのでそれほど抵抗はないが、検索するたびに自分が忘れたいと思っていることまでが書かれているのを見るなんてことになったらそんなこと2度としたくなくなる。先手を打って自分の名前をWikipediaに載せて、あることないこといいことばっかり盛った経歴を書いておくなんてことをしたらいいのかもしれないが、そんなことしている暇もない。


ずいぶん窮屈な世の中になってしまったと感じるのは、私たちの世代だけだろうか。でも、ブログだったらよくて、実名ではちょっと、というのもよくわからない感覚だ。インスタ世代の若者たちが30年後ぐらいに、この電脳化社会とどう付き合っているのかを見てみたいけれど、その頃には私の頭は相当濁っていて、そんなことどうでもよくなっているだろう。私の記憶はあやふやになっているだろうけど、ネットの中では記録は色褪せることなく永遠に鮮明に残されている。

どんどんこんがらがってくる

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おれに関する噂 (新潮文庫)
筒井康隆
新潮社

 

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