私は中堅私立大医学部の出身なので、大学の同級生には医者の師弟が多い。同級生の三割ぐらい、いやもっとがそうだったのではなかろうか。どうしても子供に“家業”をつがせたいと思う医者がそれだけ多いのだろう。勤務医だった私の父ですらそうだったのだから、開業医さんなど設備投資のことを思えばなおさらのことだろう。医業が家業というのも、生まれてきたほうにとっては迷惑な話だ。それでも真面目で気の弱い医者の子供は黙々と勉強して、なんとか私立医大ぐらいには滑り込む。医者という“立派”な仕事をしている親を見て、その親に説得されたりしたら断る理由はなかなか見つからない。

私のまわりを見廻しても、私立大医学部出身の病理医というのは国公立大医学部出身者より遙かに少ないように感じる。これは、家業としての医者を継ぐ人間が私立大学に集まる傾向が強いからだろうと思っている。だからといってはなんだが、このような中堅私立大医学部の卒業生で病理医になる医者はとても少ない。私は臨床医とはいっても勤務医の子供だが、それでも珍しがられた。私立大学出身の病理医で親が臨床医、とくに開業医という人は果たしてどのぐらいいるのだろう、知りたいものだ。

私が通っていた中高一貫進学校は、医学部への進学率が高かった。学年の二、三割が医者になった。この年になって、友人たちを見ていると、理三に進んだ奴も、旧帝大に進んだのも、地方国立に進んだのも、私立に進んだのも、みんなそれぞれ適当にやっているようにみえる。開業医の子供は多くが家業を継いでいて、そのまた子供を医学部に入れてかんばらせている。いくら家業といっても、医学部入試というハードルがあり、その先には国家試験もあるので、子供もなかなか大変だ。
高校の同級生で病理医が一人いる。地方国立に進んで、そのままそこにとどまって病理医として活躍している。数年前、講演会に呼んでいただき、少ししゃべらせてもらった。その時に話をしたら、病理医不足は地方も同じとこぼしていた。それはさておき、友人をみても、会えば学生時代の感覚に戻ってしまうので、病理医と臨床医との違いというのをそれほど感じることはない。
違いを作ろうと思えば違いになるし、そうしなければ何も違わない
結局は個人レベル
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