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ペンは剣よりも強く

日常と世相の記

マムダニに投票した理由

 今朝の新聞で、現在ニューヨーク在住の作家・平野啓一郎さんのリポート記事を読んで、ニューヨークの新市長に当選したマムダニ氏と彼に投票した有権者の一人の言葉に感心しました。平野さんはこう書いています。
平野啓一郎:マムダニ旋風と新しい政治思潮 平野啓一郎さんが見たNY市長選 | 毎日新聞

 新たにニューヨーク市長に選ばれたゾーラン・マムダニについて訊かれることが多い。
 市長選の翌日、私は、いつも子供のスクール・バス乗り場で顔を合わせる4、5人の保護者と言葉を交わしたが、そのうち、投票権のある2人は、どちらもマムダニに投票したと言っていた。因みに、マムダニの得票率は、50.8パーセント、2位のクオモが41.3パーセントだった。
 リベラルが多いニューヨークでも、実際には、トランプ支持者も少なくなく(彼自身もニューヨーカーだ!)、また民主党支持者の間でも、主流派と「民主社会主義democratic socialism」を掲げるマムダニとの間には距離があり、政治の話題には気を遣う。…… 
 私の周囲は、それなりの年齢の人たちが大半で、投票はしたものの、マムダニ旋風の熱気に煽られているというより、期待しつつ、様子を見ようという雰囲気だった。
 保護者の一人は、何となく言い訳するように、マムダニに投票した理由として、まず彼が正直であること、そして、考えが正しいことを挙げ、それはやはり大切なことだと言った。それに、私も含め、その場にいた皆が同意した。
 なぜ言い訳するような口調なのかと言えば、この間、マムダニの政策が非現実的であると攻撃され続けていたからである。……
 マムダニは例えば、公共交通は「公共財」との考えから、バスの無料化を公約としている。これなどは、財源論で嘲笑的な批判を浴びてきたが、試算では、利用者はニューヨーク市全体で23パーセント増加すると予想され、その分、貧困層支援だけでなく、経済活動も活性化し、また、乗用車の利用が減る分、渋滞も緩和され、結果として定期運行と速度アップ、排気ガス/騒音の削減といった効果が期待できるという。運営するMTA(都市圏交通公社)は現在も赤字だが、歳入減は一般財源から補填する予定で、ニューヨーク市の年間1,150億ドルの総支出から見れば、問題のない規模だとしている(『社会主義都市ニューヨークの誕生』矢作弘著)。
 その他、子供の保育無償化、市所有のスーパー、家賃管理/凍結とアフォーダブル(手ごろな価格)な住宅の提供など、政策はいずれも生活に密着した内容で、数字的な根拠も示されている。その詳細を見ていると、やはりこれは、トライすべきであり、成功させるべきだと感じられる。
 大企業と富裕層への課税強化もマムダニの政策であり、これまた「金持ちがニューヨークからいなくなる」と批判がなされてきたが、前掲書によると、「タックス・フライト(税の高い州から安い州に移動する)」ということは、現実的には起きないらしい。それはそうだろう。個人にせよ企業にせよ、ニューヨークに住む、拠点を置くということの意味は多層的である。税制のためだけに、テキサスやフロリダに去るということを自ら納得し、家族を説得するのは容易ではない。……

 マムダニに投票した理由――「まず彼が正直であること、そして、考えが正しいこと……それはやはり大切なことだ」と。

 1970年代末にビリー・ジョエルは「オネスティ」という曲で、こう歌っていたことを思い出しました。

 誠実(オネスティ) なんて寂しい言葉だろう
 誰もが 不誠実だ
 誠実 ほとんど耳にしないが
 君に求めたいのは それなんだ

 不正直、不誠実にさらされ、物事にシニカルになりがちな現代人であっても、できることなら自身は正直でありたいし、誠実に生きたいという一縷の願望はあるでしょう。自身がそうならば、他人にも正直さ、誠実さを求める気持ちにもなります。ニューヨークの市民も同じなのかなと思います。70年代末にニューヨーク州生まれの30歳の歌手が曲にした真面目クサイ歌詞が、半世紀近くたって、2025年の現在によみがえったような気がしました。

 当初は小生も、マムダニ氏の掲げる公約のうち、実現できる項目はそう多くはないのではないかと思いましたし、マムダニ氏の当選はトランプ旋風とは対極の逆ポピュリズム現象と見ていましたが、これは一過性の「旋風」では終わらないかもしれません。

 かたや、比べてもしょうがないことですが、日本の政治家の中には、「〇〇(立候補地)から日本を変える」というセリフを口にする人が(今でも)多いものの、その具体策はというと、他地域でも通用するような陳腐化したテーマを掲げ(使いまわし)、ほとんど内容のない話ばかりしています。学歴詐称の責任を自らとろうともせず不信任を突き付けられた市長が、再び市長選に立候補して落選した伊東市の例などは論外ですが、結局、市民はこの「不誠実」な市長のせいで必要のない選挙を行い、高額の「授業料」を払わされるはめになりました(選挙関係の見積りでは、10月の市議選で6,300万円、今回の市長選で3,700万円、計約1億円の出費です)。
「伊東市は死んでいた」こぼれる市民の本音…“田久保劇場”閉幕 専門家「伊東市民は非常に高い授業料を払った」=静岡・伊東市長選【専門家解説(3)】(静岡放送(SBS)) - Yahoo!ニュース
9人乱立の伊東市長選…これで混乱にケリ? トータル1億3000万円かけた選挙に、市民は正直どう思ったか:東京新聞デジタル

 むろん政治家が誠実であれば、政治がうまくいくわけではないでしょうけれど、誠実さのかけらも(見せられ)ないような人に、大袈裟ですが、「命」を預けるわけにはいきません。マムダニ市政はまだ何も始まっていませんから、今の段階であれこれ言うのは時期尚早ですが、来年以降のマムダニ新市長の手腕のほどをよく見させてもらおうと思います。



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「身銭を切る」改革をしよう

 今日は短く。
 今朝の毎日新聞・日曜朝刊の連載コラム「松尾貴史のちょっと違和感」に、キャバクラに行った代金を政治資金から出していた日本維新の会の奥下剛光(たけみつ)衆院議員や青島健太参院議員のことが取り上げられています。他紙情報によれば、奥下議員の後援会の収支報告書では、2023年3~4月に東京・赤坂のキャバクラに36,300円、大阪市のラウンジ(接待飲食店)に57,200円を「交際費」名目で支出。10月には東京・六本木のショーパブにも33,000円支出したことになっているようです。青島議員の場合は、2024年、キャバクラやガールズバーなど計5店舗の代金、計117,400円を「組織活動費」として政治資金から支出していたことが収支報告書からわかったとのこと。事務所曰く、青島氏本人は同席しておらず、秘書が支援者らと店を訪れ、収支報告書には誤って記載されていたので、訂正したと(出た、出た……またまた秘書が……です。秘書ならいいのかって話です)。
 奥下議員の場合、この事実が発覚・指摘されたのは今月6日の土曜ですが、翌7日のNHKの「日曜討論」に、小生は見ていませんが、本人、「堂々」と出演していたってんですから、本人はもとより、この維新という政党はいったいどういう人間の集まりなのか、今さらながらその神経に驚かされます。松尾さんは次のように書いています。
松尾貴史のちょっと違和感:政治資金でキャバクラ 「身を切る」前に身銭を切ろう | 毎日新聞

…… どういう了見でこんな金の使い方をしたのかはわからないが、報道によると、奥下氏の事務所は、いずれも奥下氏本人が企業関係者と共に訪れ、奥下氏側の費用を負担したと説明している。
 企業関係者とだろうが誰とであろうが、なぜキャバクラに自腹で行くことすらできないのだろうか。
 税制上の優遇措置を受けている政治団体なのに、「私たちも一杯いただいていいですかあ?」的、女性の接待を伴う店への政治資金の支出をする。この行為に、正当さを感じさせる言い訳があるのだろうか。
 奥下氏は「急きょ呼ばれた場所で、選べる立場になかった」と釈明しているが、公人としての意識や経験はどこかに忘れてきてしまったのだろうか。政治資金として処理したことについて「ポケットマネーでやるには限界があり、そのための資金団体だ」と主張するが、まるで開き直りにしか聞こえない。さらにショーパブにも支出していたそうで、そこで一体どんな会合を催したのか、ぜひ詳細を聞きたいものだ。
 維新の議員はひとつ覚えのように「身を切る」と言っているが、全く説得力がない。
 奥下議員はSNSに「初対面の企業の方に支払って貰う事は気持ち悪いですし、企業団体からの寄付にあたるとの思いから適切に処理したつもりでしたが、報告書からは伝わり難いので今後は見え方にも更に気をつけていきたいと思います」と投稿していた。本当に「気持ち悪い」のは、本人の弁を信じるならばだが、公人でありながら「初対面」の企業関係者とキャバクラなどに繰り出すセンスのほうではないか。この論理だと、初対面ではない人からは当たり前のように金を出してもらっているということなのか。
 そんな中、彼が7日のNHK日曜討論」に出演しているのを見て、私はひっくり返りそうになった。言葉選びが乱暴で恐縮だけれども、あえて言うなら「どの面下げて」といったところではないか。……

 維新の会が自民との連立の条件としていた国会議員の定数削減法案は審議にすら入れません。維新の「顔」・吉村共同代表は、先行して審議している企業団体献金の法案の審議が先だと野党は主張するが、その企業団体献金法案も今国会中には結論が出ないのだから「とんだ茶番劇だよ」といきり立って(いるふりをして)います。しかし、これには、

 「企業団体献金の件については維新が公明、国民に乗れば決着つくんじゃないですか?」
 「維新が素直に賛成するだけで、議員削減法案は可決する」
 「企業団体献金の受け手規制に賛成すれば 可決してすぐに処理できるので 議員定数削減に順番回ってきますよ」
 「さっさと企業団体献金の受け手規制法案に賛成する意思を表明したら良いじゃないですか」
 「維新が企業団体献金の規制に賛成しないのが悪いだけでは?」
 「維新が賛成したらすぐに終わりますから」

【高市自民】議員削減放置に憤慨する吉村代表に→自民大打撃の企業献金規制に賛成したら? 指摘続々、賛成多数で自民秒殺「すぐ可決」「維新賛成ですぐ終わる」/芸能/デイリースポーツ online

と、至極当然の投稿が上がっているようです。もし「身を切る」んだったら、松尾さんも書いているとおり、議員歳費や報酬を減らす(その分議員数を増やす)という手もあるはずです。

 千葉の田舎に住んでいると、こういう輩の集まる烏合の党を支持する大阪の人たちの肌感覚が知れませんが、このまま行けば維新は世間に物笑いの種を振りまいて顰蹙を買い、さらに党勢を失ったあげく、先日維新を離脱した連中がやったみたいに自民党に合流するってことになるんじゃないんですかね。そうなったら、大阪の維新支持の皆さん、どうするんでしょうか。

 キャバクラで 身を切る前に 身銭切れ

(お粗末 笑)。



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高市「台湾有事発言」再考

 11月7日の衆院予算委員会高市首相の「台湾有事発言」について、立憲民主党の辻本清美参院議員から出された質問主意書に対する政府の回答(答弁資料)からは、これは従来の政府見解に沿ったものではなく=「逸脱」であり、高市首相が答弁書にない内容を自身の判断で述べたものであることが判明したと、今朝の毎日新聞にあります。
高市首相の答弁書に「台湾有事答えない」と明記 存立危機発言当時 | 毎日新聞
つじもと清美:高市総理の「台湾有事答弁」の答弁資料が開示されました。「あの答弁は誰がつくったのか」という私の質問主意書に対し「内閣官房の作成」と閣議決定された文書がこれ。|壺助

 記事にあるとおり、質問者の立憲・岡田克也議員の(事前の)質問通告には「存立危機自体の認定の可能性を軽々に言うのはいかがなものか」とあり、これに対し政府側が予定していた首相答弁では「(台湾有事という仮定の質問にお答えすることは控えるが)我が国の安全を確保し、国民の生命と財産を守り抜くことが政府の最大の責務であると考えている」となるはずでした。ところが、実際は承知のとおり、何を思ったのか、当の高市首相は、戦艦を使って武力行使が伴う場合どう考えても存立危機事態になり得るケース」と「軽々に」答弁してしまったわけで、表現のし方はともかく、すぐに「取り消し」をすればよかったところを、今後は具体的なケースについては言及を避けると述べて(逃げて)お茶を濁し、幕引きをはかったつもりがそうはならず、今に至るまで延々と悪影響を引きずっているかたちです。
 その結果、辻本議員の言うとおり、対中関係の(軍事的)緊張や経済的損失が「エスカレート」し、鎮静化する気配は見えません。このような険悪なムードになることを避けるタイミングは、早い段階ではあったはずだと思いますが、もう時すでに遅しです。

 これで日中の軍事衝突という事態に現実味が増したと思う国民は(日中両国とも)ごくごく少数だと思いますが、毎日新聞の11月の世論調査では、首相答弁に「問題があったとは思わない」とする人は50%(高市答弁の意味というか、重さをよくわかっていない人が多いと思いますが)。むしろ、質問した岡田氏への批判がものすごいってんですから驚きます。いずれにしても、国民の半数くらいは台湾有事が起これば日本参戦もやむなしと思っていることになるわけで、これはゆゆしき状況です。
当然?軽率?高市首相の「台湾有事発言」 世論調査から見た“民意” | 毎日新聞
「スタンドプレーが起こした事故」高市首相 官僚答弁をスルーして“台湾有事”に言及したことが判明しSNS批判続出…元宝塚女優は「今すぐ辞任して」と糾弾(女性自身) - Yahoo!ニュース

 今朝の毎日新聞のコラム「土記」で、伊藤智永さんはこう書いています。
土記:戦後80年は失敗だった=伊藤智永 | 毎日新聞

 戦争が、とても親しく身近になった。地球の裏側の大きな戦争のニュースに限らない。この国でも首相が交代した途端、有事だ、武力行使だと騒ぎだし、武器輸出、レーダー照射、スパイ防止、非核三原則見直しといったコトバが、連日これでもかと飛び交う。
 世論が、その潮流を支えている。危惧や抵抗より、当然だ、何が悪い、といった反応が、若い世代ほど顕著だ。ワイドショーで落語家が高市早苗首相への批判に「日本人じゃないの?」と言い放っても、特に問題にならない。
 その隣に、戦後80年報道もあった。残り少ない体験者の生の証言を傾聴し、戦争はいかに悲惨か、だから絶対に起こしてはならないと締めくくるのが定型だ。
 感想を尋ねれば賛同するだろう人と、世論調査でいざとなれば戦争も仕方ないかなと優しく答える人は、多くが重なっている。
 そこに矛盾がない。ここが戦後80年の現在地だ。つまり人々を反戦へ啓発するつもりの報道は失敗している。定型を疑わない正しい記事が、空回りしている。

……<中略>……

……今30代以下の世代が「戦争」のイメージを形成したメディアは、圧倒的にアニメとゲームだ。
 敵が異星人だったり、家族愛や恋愛が理想化され、鮮血や残酷シーンのない清潔で整った戦闘が描かれる。高度成長期に映画から消えた特攻隊が90年代に美化され復活したのも、この流れに沿う。それらも新種の「反戦」であり、20世紀伝来の戦争体験談は、安全なモノクロの別ジャンルなので、矛盾なく享受される。
 ポップな「戦争」に、構図や物語や感情はあっても、政治や歴史や思想は薄い。重みや固さ、手触りも弱い。汚く醜く不合理なものは除去される。戦後80年はそこに無頓着すぎた。

 伊藤さんは、こうも書いています。

 (戦争体験談を聞いたあなたは、そのときなぜその人が)その場所にいたのかを問わなければならない。黙って……(その人を)見ていた非日本人は、何を思っていたのかを想像し、会ったこともない権力者は、何をしていたかを洞察してもらわなければならない。

 政府側の思惑としては「存立危機事態」という語自体、集団的自衛権を根拠としてアメリカの戦争へ日本も参戦することを国民に認めてもらうための、苦し紛れの口実でしょうし、それでも何でも実際の戦闘は極力避けたいというのが本音ではないんでしょうか。その具体的なケースについて言及したのは、SNSで指摘されているとおり、「スタンドプレーが引き起こした事故」であり、「 イキった発言」以外の何ものでもない感じがします。他方で、補正予算に軍事関連出費を多額に組み込んで、三菱重工川崎重工の株価は、この一年で倍近くも上がっているのに、さらに上昇しそうです。

 多くの人にとって高市首相は今までも今後も(実際に本人に)会うことのない権力者と思われますが、何をしてきて、何をするつもりなのか、しっかり洞察しないといけないと思います。


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