2024.02.22@Tel Aviv🇮🇱


興味本位で飛び込んだ僕が悪かったのかもしれない。

気付けば僕は男のホストと二人きり、彼の自宅で全裸になってテキーラを煽っていた。


ただここまでは想定通りだった。

彼はカウチサーフィンの自己紹介欄に

「俺はヌーディストです。うちに来るからにはあなたも裸になってもらいます。」

と明記していたからだ。


男に裸を見せるのも、男の裸を見るのも温泉民族の日本人からしたら全く問題ないと考えた僕は、そんなのは屁でもないぜと言わんばかりに二つ返事でOKを出した。



しかし、雲行きが怪しくなったのは、テキーラの瓶が4分の1ほど減った頃、ほろ酔いの彼が唐突に「一緒にポルノでも見るか」と呟いた時だった。


いくら温泉民族とはいえ、他の男の元気なジョニーを見るのなんて僕には耐えられないし、気が散って鑑賞に集中できないのはポルノ作品にも失礼である。


「あー、そういうのはあんまり興味ないんだよね。俺あんまりポルノとか見ないんだ。」

と嘘をつけない人間だったはずの僕の口から信じられないほどの大嘘が飛び出す。




しかし彼はここから、一緒に自慰行為を行うことに信じられないほどの熱量を見せる。


「これまでうちに泊まった旅行者は皆やっていた。騙されたと思ってやってみた方がいい。

俺は生きてる、俺は男だ、という強いエナジーを感じることができるから。」


日本人が「皆やっているからあなたも」という営業文句に弱いことを知っていたのだろうか、一瞬それなら俺も…と心が揺らぎかけるが、何とか理性で持ち堪え、遠慮しておくと丁重にお断りする。


すると更に続けて彼は

「お前は自己紹介欄にオープンマインドな人間だと書いていたが、それでも本当にオープンマインドだと言えるか?」

と言う。


これまた痛いところをつくセールストークである。

オープンマインドを自称する人間はそのオープンマインドさを否定されることを嫌うことを彼は知っているらしい。


しかし、これが世界基準のオープンマインドだと言うなら僕は誉れあるクローズドマインド人間でいることを選ぶ、と結論を出し、

「すまないが、俺にはできない。」ときっぱり告げると、まだ何かブツブツと呟く彼を尻目に「それよりちょっと寒くなってきたから服着させてもらうわ」と僕は彼に告げた。



そういえばTel Aviv(テルアビブ)はLGBTQが多い街だと地球の歩き方に書いていたっけ。

あの本の情報収集能力はなかなか侮れんなと思いながら、僕はいそいそとパンツを履くのだった。