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ケンショウ・ワタナベ指揮東京フィル 髙木竜馬(ピアノ)(3月9日・オーチャードホール) | ベイのコンサート日記

ベイのコンサート日記

音楽評論家、長谷川京介のブログです。クラシックのコンサートやオペラなどの感想をつづっています。

出演予定の首席指揮者アンドレア・バッティストーニは、
今年1月のケガ(右肩前方脱臼)の回復の遅れのため、医師の診断により出演できなくなり、2019年にも東京フィル定期に登場したケンショウ・ワタナベが代役として指揮を執った。

 

6年前のマーラー「交響曲第1番《巨人》」は若々しく溌剌とした表情があり、終楽章最後の勝利の頂点はカタルシスをもたらし、場内からブラヴォが多数飛んでいた。

その時のブログ(プロフィールも紹介)↓

ケンショウ・ワタナベ 東京フィルハーモニー交響楽団 舘野 泉(ピアノ) | ベイのコンサート日記

 

前回はどう登場したのか覚えていないが、今日のワタナベの小走りで指揮台へと向かう姿は、軽やかで颯爽としており、その動きには、若々しさがあふれていた。

 

ストラヴィンスキー/バレエ音楽『ペトルーシュカ』(1947年版)

はリズムに切れがあり、色彩感もある。身体の動き同様、軽やかな響きで、ガツンと来るような重心の低さはない。

 

ストラヴィンスキーは当初ピアノとオーケストラのための協奏曲風の作品として1910年に構想したので、ピアノが大活躍するが、グリーグ国際ピアノコンクール優勝の髙木竜馬のピアノはさすがにうまい。第1場「ロシアの踊り」の並行和音の旋律、第2場のペトルーシュカの呪詛の踊りのオーケストラとのかけあいは、髙木のピアノが際立った。

 

コンサートマスターの近藤薫以下、東京フィルは各奏者が集中力のある演奏。フルート、トランペット、ファゴット、クラリネット、バスクラリネット、バステューバなどみな素晴らしい。特にトランペットのソロは聴かせどころが多く難しい。第3場で踊り子が踊る場面の長いソロは少し不安定だったが、その前の第2場最後のペトルーシュカが踊り子に振られる場面でのトランペットのファンファーレはきれいに決まった。

 

第4場の謝肉祭の市場の夕方と「乳母の踊り」は華やかで色彩感もあるが、なぜかもうひとつインパクトがない。「御者の踊り」も華やか。

ペトルーシュカの亡霊を表すトランペットが鋭く吹かれる。最後は静かな幕切れ。

 

ウェーバー/歌劇『オベロン』序曲

冒頭のホルンのソロ(首席高橋臣宜)が見事。弾けるように始まる主部は、騎士ヒュオンの主題。軽やかに進める。再びホルンの動機が出たあと、ヒュオンのアリアをクラリネットと弦で優しく歌わせる。コーダは華やか。

ワタナベはメトロポリタン歌劇場で「ラ・ボエーム」を11月に5回、来年1月に3回、計8公演指揮する予定でもあり、オペラも得意とする。彼の指揮するオペラを日本でも聴く機会があるといいのだが。

 

ヒンデミット/ウェーバーの主題による交響的変容

これはなかなか素晴らしかった。ヒンデミットの緻密なオーケストレーションを混濁することなく、細部まで明晰に聴かせた。

第3楽章を振り終えタクトを挙げたまま少し間をとり、アタッカで入った第4楽章マーチも切れ味良く色彩感が豊かであり、エンタテインメント性にも富む。

 

バッティストーニが降板となり、客席は空席が目立ったが、代役としてきちんとした指揮を聴かせたケンショウ・ワタナベには拍手を送りたい。

 

この後12日(水)東京オペラシティ、14日(金)サントリーホール、各々19時開演で同じプログラムの公演がある。

また22日(土)15時から文京シビックホールで、辻彩奈(ヴァイオリン)とのグラズノフ「ヴァイオリン協奏曲」、ベートーヴェン「交響曲第6番《田園》」他も指揮する。これもバッティストーニの代役である。

 

東京フィルハーモニー交響楽団第1012回オーチャード定期演奏会

2025年3月9日(日)15:00開演(14:15開場)

Bunkamuraオーチャードホール

指揮:ケンショウ・ワタナベ 

ピアノ:髙木竜馬*

コンサートマスター:近藤薫

ストラヴィンスキー/バレエ音楽『ペトルーシュカ』(1947年版)*

ウェーバー/歌劇『オベロン』序曲

ヒンデミット/ウェーバーの主題による交響的変容

〈ヒンデミット生誕130年〉

 

写真:ケンショウ・ワタナベfacebookより転載


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