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アリババと手を組み中国のIT化を進める先進行政都市「杭州」が面白い

2020年8月31日016713

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アリババとアリババ系金融会社のアント・グループ(旧名アント・フィナンシャル)の城下町「杭州(浙江省)」が新型コロナウイルスとの戦いを経て、面白くなっている。

中国のIT競争というと、アリババVSテンセントやECセールでのアリババVS京東VSピンドゥオドゥオなどいろいろな視点があるが、ひとつの視点として都市の競争というのもある。例えば貴州省貴陽のビッグデータ産業は聞いたことがあるかもしれない。他にも江西省南昌のVR・AR産業や、広東省広州をはじめとしたライブコマース産業など、一部の都市はあるITのジャンルに特化して成長させようとしている。それを実現するために、やる気ある各都市がこぞって有力なIT人材やIT企業に補助金を与え、IT産業振興をしようとしている。

さて杭州である。杭州はアリババのスマートシティ「城市大脳」が導入され、その上で2月に「健康コード」をつくり、中国全土にこの仕組みを拡散させた。健康コードというのは、信号機のように赤黄緑の3色いずれかで表示される各人に割り当てられたQRコードで、住んでいる集合住宅などで新型コロナウイルス感染者がいるといった感染地域にいた場合、赤色や黄色のQRコードが表示されるというもの。駅やオフィスビルやモールや学校などで門番がチェックし、緑色の健康コードでなければ通行を許さない、といった仕組みだ。

杭州市の健康コード

アリババ(アントフィナンシャル)発の健康コードはその後テンセントのWeChat(微信)などにも表示された。多くの都市で採用されたことから、各都市でアリババかどこかの企業のスマートシティが運用されていて、その上で健康コードが活用されたわけだ。5月には、中国国家標準委員会により「個人健康情報コード」として健康コードが標準化される。その中国の標準化にアントフィナンシャルやアリクラウドが携わった。

アリババ「健康コード」で市民の健康管理、全国1万社近い企業で導入広がる

さらに3月には新型コロナウイルスにより鈍化した経済を活性化するために杭州市民に対し、アリペイ上でクーポン券を発行した。その後他の都市も後に続くようにアリペイやウィーチャット上でクーポン配布をはじめた。クーポンの配布自体ははじめてではなかったが、新型コロナでの活用においては杭州の動きが最も早かった。

杭州市はアリババと提携し、その後も様々な新しい「行政+IT」を出していく。そうしたニュースではしばしば「健康コードを出した杭州が、さらに中国全土に先駆けて新しいテクノロジーを導入していく」といった文言が出てくる。

36krで紹介したものでは、7月に開始した中国初のブロックチェーン電子印鑑サービスが挙げられる。杭州市内の企業の電子印鑑は、すべて非特定化処理後ブロックチェーン上に記録されるというもので、物理的な印鑑に代わるブロックチェーン電子印鑑を実現する。電子印鑑の使用は信頼性の追跡が可能で、改ざんもできないため、電子「偽造印」のリスクは根絶されるという。これもまたアリペイを活用するもので、杭州市民はアリペイの「杭州市ブロックチェーン電子印鑑アプリケーションプラットフォーム」にアクセスすれば、物理的な印鑑に完全対応する電子印鑑を取得できる。

杭州市、国内初のブロックチェーン電子印鑑サービスを開始

4月には、杭州市余杭区で学食での新型コロナウイルス感染防止を目指した「学食健康コード」をリリース。これは食品加工場所での消毒記録、新型コロナウイルス対策用具のストック、食器の消毒、学食での食材の保管状況などが都市大脳の学校情報に組み込まれ、スマートフォンアプリからオンラインで確認できるというもの。8月にはこの学食健康コードを、地域全体の飲食企業を対象にした「餐飲企業健康コード」が登場した。つまり市内の各食堂の厨房やスタッフや食材の状況がスマホで把握でき、消費者はこれまでのメニューや値段に加え、食堂の衛生状況も加味して店を選ぶことができるようになるという。

7月には、アリペイに「退役軍人コード」の機能を加えた。これは退役軍人向けの各種行政サービスをデジタル化するもので、これにより指定病院で優先受診や、指定店舗での買い物が割引されるといった退役軍人向け社会保障をスマートフォン上で実現するほか、ライブコマースやECサイトでのショップ開店運用トレーニングも行うというもの。これまで中高年が手続きのために役所に向かうとなると人が密になるリスクがあったが、オンライン化によりそのリスクを減らすことができよう。またECショップ開店による家こもりの良さを伝えることにより、EC利用者の少ない中高年ユーザーをいち早く囲い込むアリババ陣営に狙いがあるかもしれない。

他にも杭州の「中国初」は数多くある。8月には未来の農村をつくりあげることを目的とした「未来郷村実験区」や、中国初の城市大脳によるオンライン予約とホテルでの顔認証による「非接触宿泊」や、インターネット保険「相互宝」に多くの村民が加入する「相互宝村」など、次々と「杭州で中国初の行政サービス」が報じられている。杭州は中国の未来の行政や人々の管理を予想する上で注目すべき都市なのだ。

アント・フィナンシャルの医療共済「相互宝」、赤字続きでもアリペイに重要価値

最後に私事ではあるが、ITにより感染拡大を抑えた中国の新型コロナ対策についてまとめた著書「中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか? 中国式災害対策技術読本(星海社新書)」が紙と電子ブックで発売される。手に取ってもらえれば幸甚だ。

(作者・山谷剛史)

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