イラクの旧フセイン政権時代に行われた国連の人道支援事業「石油と食糧の交換計画」をめぐる不正疑惑が波紋を広げている。独立調査委員会の中間報告を受けて、アナン事務総長は疑惑を指摘された元事務次長らを停職処分にした。疑惑の商社を経営していたのが前事務総長の親類だったなど、新たな事実も浮上している。アナン氏の息子の関与の有無についても、近く報告が出る。 ◇友人の石油商社に便宜 元事務次長 独立調査委の中間報告は、計画の責任者で、国連事務次長だったセバン氏の行動を詳細に分析している。それによると、イラクの石油輸出の一部を「アフリカ中東石油」という商社に割り当てるよう、何度もイラク政府へ働きかけたという。 この会社は98年から01年の間に5回、計730万バレルの原油輸出を仲介する契約を結び、150万ドル以上の収入を得ていた。しかし、会社の実態は「登記先のパナマには事務所も施設も従業員もおらず、モナコに3人が働く事務所があった」。輸出の仲介ができるとは考えにくいとしている。 セバン氏はイラクの石油相らに「友達(が経営するアフリカ中東石油)を助けて欲しい」と繰り返し要求。イラクが求めていた石油産業用の部品供給を安保理が認めるように同氏が尽力した直後、イラクが同社への割り当てを決めたことなどが報告で指摘された。 セバン氏は99年から03年にかけて、キプロスのおばから合計16万ドルの現金を受け取ったと国連に申告していた。だが、報告はおばの生活ぶりや友人の証言などから、多額の現金を持っていたとは考えられないとしている。 ◇銀行選定、仏大使と協議? 前事務総長 アフリカ中東石油の経営者は、96年まで国連事務総長だったガリ氏のいとこだった。報告はガリ氏と同社との関係にはそれ以上言及していない。しかし、石油収入がもたらす巨額の事業資金を管理するための銀行の選定に、ガリ氏がどうかかわったかについては多くの紙幅を割いている。 ガリ氏は96年、イラクやフランスの国連大使と会談を重ね、フランスのパリ国立銀行を選定したとされている。当時の国連財務官だった高須幸雄・現ウィーン国際機関政府代表部大使らが準備した銀行リストや分析、入札結果とは関係なく決まった。 ガリ氏は独立調査委の事情聴取に対し、銀行の決定前に仏大使に選定内容を話したことはないと述べた。4日付の米紙ニューヨーク・タイムズによると、ガリ氏はインタビューで独立調査委について「国連システムに関する知識に欠けている」と批判したという。 96年には銀行に続き、オランダのセイボルト社がイラクの石油輸出検査、英国のロイズ社が人道物資輸入の検査にそれぞれ選ばれた。いずれも、入札では別の企業が最低価格で応募していたが、国連側がセイボルトとロイズに決めたという。 ◇石油の密売、米など認識 独立調査委が指摘 国連の衝撃は大きい。ある国連幹部は「国連内は疑惑の話ばかりで心ここにあらずだ」と嘆く。数週間以内にも出る次の報告では、アナン氏の長男コジョ氏が、ロイズ社とは別にイラクの人道物資輸入を検査したスイスのコテクナ社から不正な報酬を得ていたとの疑惑に対する判断が示される。アナン氏は「早く明確な結果が出ることを望んでいる」としているが、国連内で調査結果の影響を心配する声は少なくない。 一方、独立調査委は、米国を含む安保理メンバーにも厳しい視線を向けている。報告書は旧フセイン政権時代のヨルダンやトルコなどへの石油密売が、「交換計画」での水増し請求やリベートなどの不正収入よりも巨額だったと強調。推定金額について、独立調査委は2億7000万ドルが計画関連の不正収入で93億ドルが密売によるとするものから、75億4000万ドルが計画がらみで136億ドルが密売による、などの数字を列挙。そのうえで、密売の事実を当時の安保理が知っており、対処する責任があったと指摘している。(02/14 08:29)
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