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ファンタジスタ 単行本 – 2003/3/26

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フットサルとリフティング占いに依存している、わたし。ダキマクラに夢中のリョウジとの同居。そんななかで行われる首相選挙。性・家族・職業・国家の“らしさ"に違和感を抱える人間を描く作品集。第25回野間文芸新人賞受賞作。
  1. 本の長さ
    232ページ
  2. 言語
    日本語
  3. 出版社
    集英社
  4. 発売日
    2003/3/26
  5. ISBN-10
    4087746410
  6. ISBN-13
    978-4087746419
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商品の説明

商品説明

濃密な男女の関係を幻想的に描いた『目覚めよと人魚は歌う』で第13回三島由紀夫賞を受賞した星野智幸。端正な文章で、どこか異国を感じさせる作風を得意とする作家である。本書は、日系移民を撮り続けている映像作家のビデオ作品に着想を得た「砂の惑星」、フットボールを題材にした野間文芸新人賞受賞作「ファンタジスタ」、ハイウェイを暴走する若者が奇妙な労働に関わる「ハイウェイ・スター」の3編を収録。どれも日常と非日常という、ふたつの要素を併せ持った作品である。

たとえば「砂の惑星」では、集団自殺事件を起こした小学生と、森で暮らすホームレスたちの姿を対比させて描く。森に現れる老人の一人芝居を通して、かつてドミニカ共和国で行方をくらませた男の消息が、寓話的に語られる。また「ファンタジスタ」では、スポーツを介した仲間同士の交流を軸にしながら、元プロ選手が立候補した首相公選をめぐる物語を展開。フットボールと政治という、一見関連性のないものを見事に織りまぜてみせる。肉体の消滅と再生をテーマにした「ハイウェイ・スター」も含め、平凡な主人公に導かれ読み進めるうちに、読者はいつの間にか別世界へと引き込まれていく。

移民問題、政治といった近寄りがたいテーマを組み込んでいながら、押しつけがましくならないのは、物語を継いでいくなめらかな筆致のおかげである。また各作品に、南米地域やフットボールという、星野の読者にはお馴染みの素材が散りばめられているのも特徴だ。これらが独立したそれぞれの小説に共通点を与え、本書独自の世界を盛り上げている。(砂塚洋美)

内容(「MARC」データベースより)

砂にふれられたものは皆、砂に変身するという。砂と戦え。とつぶやき続け死んでいった父。川井喜延は17歳の時、妹と母とで庭を掘り、父を丸裸にして埋めた-。芥川賞候補作「砂の惑星」を収録した小説集。

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著者について

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星野 智幸
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1965年、 アメリカ・ロサンゼルス市生まれ。88年、 早稲田大学卒業。2年半の新聞社勤務後、 メキシコに留学。97年『最後の吐息』で文藝賞を受賞しデビュー。2000年『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、 03年 『ファンタジスタ』 で野間文芸新人賞、11年 『俺俺』 で大江健三郎賞、15年 『夜は終わらない』 で読売文学賞を受賞。『焔』『呪文』 『未来の記憶は蘭のなかで作られる』 など著書多数。

カスタマーレビュー

星5つ中2.5つ
3グローバルレーティング
全体的な星の評価と星ごとの割合の内訳を計算するために、単純な平均は使用されません。その代わり、レビューの日時がどれだけ新しいかや、レビューアーがAmazonで商品を購入したかどうかなどが考慮されます。また、レビューを分析して信頼性が検証されます。
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5つ星のうち5.0

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上位レビュー、対象国: 日本

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  • 2021年2月25日に日本でレビュー済み
    フォーマット: Kindle版 (電子書籍)
    ○この作家の他の作品(俺俺、呪文など)は良いと思うのだが、この短編集はよくわからなかった。

    ○砂の惑星。作品全体にゆとりがないが、読ませる。作者に何らかの主張か想定があって、それを簡潔に表現すれば誰も足を止めないようなものであったとしても、それを思わせぶりに表現できれば、もっともらしい小説になる。そういう意味ではオペラに似たところがある。この作品は、作者の主張(それが何であるかはいまだにわからないが、それほど深いものではないように思う)をドミニカのエピソード、小学生の失踪のエピソード、ホームレスのエピソードを纏わせることによって、飽きさせない読み物に仕立てた。よく言えば読み手に考えさせる作品になっている。魅力は、何よりもドミニカのエピソードと、言葉遊びだ。ありふれたストーリーに風変わりなアリアとひねりを加えたオペラのようなものだ。良いと思う。

    ○ファンタジスタ。同棲する二人の会話を通じて物語は展開する。きちんとした状況説明は読者に与えられず、それぞれの会話や独白のなかに断片的に提供される情報から掴める仕組みになっている。時間はいまだけれども、政治状況は大きく変わって、中国の経済力が支配的になっている架空の日本に生きていて、それぞれが家族との関係で問題を抱えている二人が、明日にせまった首相選挙をどうするか饒舌に語り続ける。作者のメッセージは200字で書けるはずであるが、そのように表現してしまえば浅薄なステイトメントになるところを、饒舌の煙幕で覆うことによって、考察するに値する思想と呼ぶべきものが潜んでいるような気になる。さらに饒舌の隅々に難しい言葉をちりばめて、何らかの意味ある思想の断片が込めているようにも思える(当然ながら作者は本気でそうしているつもりだ)。思わせぶりの勝利だ。悪くない。読者に考えさせれば良いのだ。ただ、砂の惑星には、読者を前に引っ張っていく題材の面白さがあったのだが、いかんせんフットボールと選挙ではそこまでの魅力はない。短編ならごまかし切れる。長編だと限界が見えてしまう。

    ○ハイウェイ・スター。16歳の少年が悪友とともに穴掘りのアルバイトをする物語。退屈ではないが、意図がよくわからない。思わせぶりが過ぎる、と思った。
    1人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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  • 2008年7月26日に日本でレビュー済み
    フォーマット: 単行本
    3つの中編小説の1つが「サッカー小説」=「ファンタジスタ」。他2編のうち1つは芥川賞候補作である。
    どの作品にも幻想的と呼ぶにはやや泥臭い、というかややチープな、それでいて独特の雰囲気はしっかりもった〈ホシノワールド〉が存在している。
    「ファンタジスタ」は近未来というよりはむしろパラレルワールドに同時並行的に存在する〈もう一つのニッポン〉の数年後の姿のよう。
    「大統領」に立候補したサッカー界の大物。階層化が進み隊列が長くなる社会。
    「国際化」に埋没していく大多数の中下層〈ニホンジン〉。フットボールと呼ばれるようになった〈ニホンのサッカー〉。主人公の恋人?が愛用する異様な「抱き枕」。
    キーワードとして使われているボールリフティング。
    リアリティーがあるようなないような。幻想的であるようなないような。
    そこに〈サッカーの真実〉はあったか?〈人生の真実〉はあったか?
     〈閉塞感〉だけはあった。
    「現代社会を覆う閉塞感」などとこの作品世界の〈閉塞感〉を対置させるのはあまりに陳腐に過ぎよう。〈閉塞感〉はそのものとして受け入れよう。
    そのうえで、その〈閉塞感〉を突き抜けた向こうにある〈ナニモノか〉の存在を本書のなかに感得できたか?僕は感じることができなかった。存在の暗示すらも。
    閉塞され、その向こう側に待つ〈ナニモノか〉を感じ取れない世界。それもまた〈サッカーの真実〉なのか。
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ファンタジスタ