「理論最速」を夢見る格闘ゲーム用“レバーレス”コントローラ
PS3/PC Hit Box (Black) - Large アーケードコントローラをアーケードコントローラたらしめているものとは,一体なんだろうか。人によって意見は分かれるが,個人的にはレバーを使ったインタフェースが最たるもののように思われる。ファミコンの登場以前,「スペースインベーダー」の時代から,アーケードゲームのスタンダードであり続け,家庭用でゲームパッドが主流となってもなお,形を変えず受け継がれてきたそのインタフェースは,まさにアーケードゲームの象徴といっても過言ではない。
レバーインタフェースはまた,格闘ゲーマー達にとっての象徴でもある。1991年の「ストリートファイターII」以来,アーケードと共に歩みを進めてきた日本の格闘ゲームシーンは,(パッド派のプレイヤーが少なからず存在するとはいえ)今なおレバー操作が標準であり続けている。
そんな中,近年の格闘ゲームブームを牽引する北米から,驚くべきコントローラが登場した。格闘ゲームの命といえるレバーを完全に廃し,すべてをボタンに置き換えてしまったという“レバーレス”アーケードコントローラ
「Hit Box」 がそれだ。長年レバー操作に慣れ親しんできた日本のプレイヤーにとっては,なんともキワモノ感溢れる製品だが,これが意外にもよく考えられた
「革命的な」 製品だったりするのである。
本稿では,今回筆者が入手したPlayStation 3版Hit Boxをもとに,本製品がいかに革命的であるかを中心に,従来のレバー型アーケードコントローラとの比較を交えつつのレビューをお届けしていく。正規の流通ルートを持たない,いわゆるガレージ製品であるため,入手はなかなか面倒なのが難点だが,頂点を極めんとする格闘ゲーマーの参考に,あるいはちょっとした話の種に,ご一読をいただければ幸いだ。
今回筆者が入手したブラックモデルのHit Box。2011年12月28日現在,公式サイトではこのほかにも色違いのホワイトモデルとドミノモデルがラインナップされている。以前はサイズの小さい限定モデルがあったのだが,今は販売されていないようだ。ちなみにボタンの色は,オーダー時にある程度選択可能だった (全幅:約407mm / 奥行き:約178mm / 高さ:約53mm / 質量:1835g / ケーブル長:約4.5m,着脱可能,ベルクロストラップ付き / 連射機能:無 / 各種ボタン:三和 OBSN-24,Uボタンのみ三和 OBSN-30RG)
世界初の格闘ゲーム用“レバーレス”コントローラ それではまず,本製品の基本仕様から見ていこう。サイズとしては一般的なアーケードスティック製品と同等ながら,見ての通りレバーが存在しておらず,それだけでもう,何というか,違和感を抱かざるを得ない外観といえる。接続端子には当然のことながらUSBが用いられているため,PCにも接続可能。実際に32bit版 Windows 7がインストールされたPCに接続してみたところ,ドライバが自動的にインストールされ,
3軸13ボタンのPOV付コントローラ として認識された(ただしZ軸および11と12のボタンには対応するキーが用意されていない)。
Mad Catz製アーケードスティック「Official Super Street Fighter IV FightStick Tournament Edition」(右)とのサイズ比較
デバイスマネージャ上では「HID準拠ゲームコントローラ」として,コントロールパネル上では「Hit Box Edition Cthulhu+」として認識されている
各部の詳細を見ていこう。通常のアーケードコントローラと異なるのは,なんといっても本来レバーがあるべき左手の部分。ここにはボタンが3つ並んでおり,左から
,
,
に相当する配列――ここでは便宜的に[L],[D],[R]キーと呼ぼう――になっている。レバーで操作すべき入力はこれらのキーの組み合わせで行い,例えば
入力は,[L]と[D]の同時押しで表現される仕組みだ。では
はどうやって入力するのか。普通に考えれば[L]の上にあって然るべき
=[U]キーは,なんとコンパネの中央下にある。コントローラの上に自然に手を置けば,丁度両手の親指が来る位置で,
方向の入力――つまりジャンプは親指が担当する仕事になるわけだ。この[U]キーの配置が,後述する本製品のカギを握っている。
ボタン配置
右側にある8つのボタンには,それぞれ[×][○][△][□][R1][R2][L1][L2]が割り当てられている。並びも含め,ここは通常のアーケードコントローラと変わらないので,とくに説明は要らないだろう。[PS][SELECT][START]の各ボタンは,筐体に向かって右奥の背面配置だ。
[U]を除いた各種ボタンには,標準的なアーケードスティックに使われるものよりも一回り小さな24φのものが採用されているのも目を引くところだ。これは日本のアーケードではスタートボタンに使われるサイズなので,感覚的にも分かりやすいだろう。なお[U]のみは,標準的な大きさである30φのボタンが使われている。
なおXbox 360用のHit Boxも存在するようなのだが,現在Hit Boxの公式サイトでは取り扱いが行われていない。メールアドレスを登録しておくと,販売が開始されたときにアナウンスが行われるそうなので,もしXbox 360版が欲しいという人がいたら,
公式サイト でアカウントを作成しておくと良いだろう。
内部構造を写真で紹介。本製品を分解するには,まず天面上の10個のボルトを外す必要がある。5/64インチの六角レンチを用意しよう
ファストン端子の林,といった印象の内部構造。ガレージ製品だけあってか,構造自体は至ってシンプルだ
「理論最速」を求めるプレイヤーのために個人的には机に置いて使うよりも,膝に置いたほうがしっくりきた。操作に慣れるまではレバーのない左手の違和感が大きいものの,慣れてしまえば気にならない。基本的に指の力しか使わないので,長時間のプレイでも疲れないようだ。なお本体底面に滑り止めなどはついてないものの,そもそもレバーがないので安定感に問題はない。プレイ中に筐体が動いてしまうようなことはほとんどなかった
それではいよいよ操作性について触れていくのだが,その前に。本製品はレバーがボタンに置き換わっていることは分かったが,それがどう
「革命的」 なのか,という点について説明しておこう。
これまでにも説明してきたとおり,本製品は格闘ゲーム用にデザインされたコントローラである。端的にいえば,本製品を使うことで,格闘ゲームに必要なコマンド入力を最速で行うことができるのである。
例えばいわゆるスクリューコマンド――「レバー一回転+ボタン」を入力することを考えてみよう。このコマンド,格闘ゲームをプレイしたことのある人ならばご存じのことと思うが,正確にいえばレバーを一回転させる必要はない。
の各要素が1回ずつ入力されていればOKなので,3/4回転というのが正しい。つまりレバーでこの3/4回転を入力しようとすると,
からスタートした場合,普通に考えれば
という入力となる。
この例で考えると,スクリューコマンドを成立させるためには,最低でも7フレーム
※ 必要ということになる。ただいくらコマンド入力が正確なプレイヤーであっても,常に7フレームでコマンドが完成させられるかというと,そういうわけでもない。どうしても余計な入力というのは出てきてしまうもので,あくまで理屈の上での最速が7フレームであるわけだ。
ところがHit Boxを使えば,この入力を大幅に短縮することができる。先にも述べたとおり,スクリューコマンドとは,
の各要素が1回ずつ入力されていればOKなのだ。ならば
だけを直接入力してしまえばいいではないか。これなら4フレームでコマンド入力が完成し,レバー入力のほぼ半分の速度で技が出せることになる。……理論的には。
※現行の格闘ゲームのほとんどは,1秒あたり60フレームの描画でゲームが進行している。つまりここでいう7フレームとは7/60秒,約0.11秒に相当する。ちなみに1/60秒以内に2つ以上の方向をキー入力があった場合は,後から入力した方向のみが認識される。なのでレバー入力であっても,4フレームでスクリューコマンドを完成させることは不可能ではない。 一見不思議なボタン配置だが,実際に手を置いてみると,これが実によく考えられたものであることが分かる。それぞれのキーの上に自然に指がのり,さらに大きめの[U]キーは,左右両方の親指で押すことができる
「ストリートファイターIV」で基本的な操作を試す最初はPlayStation 3のクロスメディアバーからゲームを起動するのも一苦労。えーと,このボタンが下で……
というわけで,さっそく実践に移っていこう。最初はやはり,波動拳(
+ボタン)や昇竜拳(
+P)といった基本的なコマンド入力からだ。PlayStation 3版
「スーパーストリートファイターIV アーケードエディション」 のトレーニングモードで,これらの技を試してみる。
例えば波動拳コマンドなら,
「左手の中指と人差し指を使い,[D]→[R]へとズラしながら押して,[D]を離すと同時にパンチボタンを押す」 という操作だ。やってみれば分かるが,ずらし押しする間に[D]と[R]の同時押しによる
入力を自然と経由するので,それさえ理解してしまえば簡単に出すことができる。
昇竜拳コマンドは,
「最初に[R]を押してから,[D]と[R]をずらし押し」 。これも慣れてしまえば難しくない。むしろ昇竜拳コマンドのような,「隣接しない方向を素早く入力するタイプのコマンド」にこそ,Hit Boxの真価があらわれる。レバー操作の場合,
から
を経由することなく
を入力するためには,一瞬レバーから手を離してニュートラル(レバーがどこにも入っていない状態)を通すなどの工夫が必要だが,Hit Boxなら関係ない。
もちろん余計な入力があったとしても技は出るのだが,こと実戦を考えた場合,余計な入力――1フレームの差が勝敗を決することは十分にあり得る。よりコンパクトな入力ができるならば,それに越したことはないのだ。同じく真空波動拳(
+P)なども,途中に
→
の繋ぎがあるので,同様にコンパクトに入力できるはずだ。
ストIVシリーズには簡易コマンドがあるため,研究すればもっとコンパクトな入力も可能だ。例えば真空波動拳コマンドなら「 +P」で出せる。最後にきっちり を入れるのがポイントだ
ニュートラル入力のやりやすさを「鉄拳6」でチェック レバーがボタンに置き換わったことの恩恵としては,必殺技コマンドの正確さのほかにも,同方向への連続入力(
など,いわゆるダッシュ操作)が簡単になることが挙げられる。レバー操作では必ず一度ニュートラルを経由しなければならないため,必然的にレバーから手を離すこととなり,素早く入力するのは非常に難しい操作である。しかしHit Boxであれば,ボタンを単に2連打するだけでOKだ。
この有用性を確かめるために,空中コンボ中に前ダッシュを何度も行う必要があり,また必ずニュートラルを経由しなければならないコマンド技が存在するPlayStation 3版
「鉄拳6」 を起動してみた。
結果……これはイイ。予想通り,各種ダッシュの入力が非常にスムーズにいく。とくにスラッシュ入力(
+攻撃ボタン)はレバー操作よりも俄然素速く行えるではないか。また“山ステ”(後ろダッシュの途中でしゃがみを経由し,再び後ろダッシュを入力すると連続で後ろダッシュできる)や連続横移動(横移動途中で前や後ろに入れ,再び横移動を入力していく)といった特殊操作も,レバーではなかなか実現できなさそうな速度で行える。
※ムービーファイルへのリンク
しかしブライアンのジェットアッパー(
+RP)を繰り出しているときには若干の違和感が。この技はコマンドの途中でニュートラルを経由しなくても出るはずなのだが,素早くコマンドを入力すると立ちRPが暴発してしまう。つまり
が入力されていないワケなのだが,その理由が分からない。
そこで公式サイトを確認すると,
「Left + Right = Neutral.」 という記述が見つかった。なるほど,確かにレバー操作の場合は,[R]と[L]が同時に入力されることはありえない。そのような入力を可能にしてしまうと,ゲームタイトルによっては深刻な問題(例えば溜め技を溜めながら前に歩くなど)が発生しかねないので,理にはかなっている。公式サイトによれば,そのほか
[D]と[U]を同時に入力した場合には, が優先される ようになっているとのことである。
ジェットアッパー
PCに接続して実験。確かに[R]+[L]はニュートラルに,[D]+[U]は と認識される。どうやら内部的にも,上下左右のスイッチをただ配線しただけではないようだ
ともあれこれでコマンドが失敗する理由は分かった。[R]を離す前に[L]+[RP]を入力してしまったがために,立ちRPが暴発しているわけだ。これを踏まえると,
というコマンドをニュートラルを通さずに完成させるためには,[R]を離した1フレーム後に[L]を入力しなければならないことになる。スパIV AEをプレイしていたときには気付かなかったが,これはタメ系の技を出す際にも注意が必要そうだ。
では無駄のない入力が可能であるならば,最速風神拳(
+[RP])はどうだろうか。高い精度で繰り出せるのではと予想して試してみたものの,今度は「完璧な斜め入力」の難しさを実感するハメとなった。
最速風神拳は,最後の
とRPを1フレームの誤差なく入力する必要があるのだが,Hit Boxでこれを実現するには,[D]/[R]/[RP]の3つのボタンを完璧に同時押しせねばならない。とくに鉄拳6のコマンド入力システムにおいては,先行入力も効かない(先行入力できるのは,コマンドの最初の1入力のみ。隙間なく技をつなげるには,前の技の動作が終わった瞬間に残る入力を完成させる必要がある)ので,どうしてもミスが増えてしまった。
最速風神拳
コマンドごとの最適化作業はまるでパズル。独特の[U]キーを使いこなす 次はこれまで触れてこなかった,[U]キーについて説明していこう。これをほかの操作と切り分けた理由は,この[U]キーの扱いこそが,Hit Boxを使う上でのキーとなるからである。
これまでの[L][D][R]キーの操作については,方向に合わせた横並びになっているため,直感的にも理解しやすいのだが,なにせ[U]キーだけは配置も独特である。ジャンプ動作を親指で行うため,ちょうどFPSをキーボードで遊んでいるような感覚に近いのだが,これをコマンド入力に組み込む場合には,操作の“最適化”が必要になってくる。
まずは最初の例でも触れた,スクリューコマンドの場合を例に見ていこう。3/4回転で良いわけだから,まず左手で[L]→[D]→[R]をズラし押しする。このときの各ボタンは,必ずしも単体押しでなくても良いが,[L]と[R]だけは同時に押さないように注意する。そして[U]とパンチボタンを「右手で」同時押しする。なぜ右手かというと,そのほうが同時押しがしやすいからで,これを手に覚え込ませることで,かなり正確に技が繰り出せるようになった。
コマンドの最後に上方向が必要な溜め技,例えばダブルサマーソルトキック(
溜め
+[K])などの場合,斜め方向が何度も登場するため,一見すると難しそうに見えるのだが,実はそうでもない。先ほど登場した「[D]と[U]が同時に入力されると
が優先される」という仕様があるために,[D]はコマンドが完成するまで押し続けて構わない。[L]+[D]で溜めを作ったら,あとは[D]を押したまま[R]→[L]→[U]+Kと入力すれば発動だ。ゆえに連続技に組み込むのも,それほど難しくはなかった。
また低空キャノンスパイクのような,ジャンプ直後に空中必殺技を繰り出すテクニックの場合も,ほとんどミスなく入力できる。とくに通常版のキャノンスパイクを,高度を見てから入力するような場合には,コマンドをコンパクトに入力できるのでレバーより楽に感じられた。これは[U]キーが両手のどちらでも押せることによるメリットで,[U]キーが独立して配置されている意義を強く感じられる操作といえる。
そのほかHit Boxはボタンのサイズが通常よりも小さく,レイアウトも中央に寄っているため,[U]キー以外にも,[□]/[×]キーを左手で押すことができる。これらを活用し,必殺技のコマンド入力を最適化していく作業は,まるでパズルのよう。なんというか,これはこれで面白くて,何時間でもトレーニングモードに入り浸ってしまえる中毒性がある。
最近はめっきり見かけなくなってしまった変態コマンド技だが,何かないかと探していたら「ソウルキャリバーIV」で発見。というわけで,アイヴィーのコマンド投げ「クリミナルシンフォニー」( +[A]+[G])に挑戦してみた。途中の 以外[D]は入れっぱなしでいいのだが,基本的にはただ素速く入力するしかなくて,なんだか音ゲーをやってる気分に
極めるなら,レバーを投げ捨てる覚悟を レバーを廃してボタン入力になったことで,正確性や速度において少なくないアドバンテージが得られるHit Box。とくに同方向連続入力や一回転コマンドなど,比較的大きな動作が必要な場面では,その効果が大きいと感じられた。しかし実戦で使いこなすとなると,まだまだ壁は残っている。
まず一番大きいのは[U]キーによるジャンプに慣れることだろう。コマンド入力やコンボ中などの操作では,最適化した結果を手に覚え込ませればそれでいいのだが,こと立ち回りでのジャンプとなると,これはもうかなりの修練が必要だ。筆者の場合,それほど意識を向けていなかった相手の飛び道具などを飛び越えようとすると,[D]の上の何もない空間を叩いてしまう癖がどうしても抜けなかった。
コマンドを最適化するうえではやっかいなのが[L]+[R]入力。ニュートラルではなく「後から入力したキーが優先」される仕組みにしてくれれば,この最適化パズルも幾分楽になりそうなのだが……
またこれも慣れの問題ではあるのだが,とっさのガード入力が難しいというのも大きな問題だ。なにせ「後ろ方向」にずっと入れておけばいいレバーと違い,立ちとしゃがみを判断した上で,ボタンを押し続けていなければならないのだ。これがどうも直感的ではなくて,「ええと今の後ろはどのボタンだっけ」などと,思考にワンクッションが入ってしまう。
今回は1週間程度Hit Boxで練習してみたが,その程度の時間で,10年以上プレイしてきたレバー操作の感覚を上書きすることは難しい,ということなのだろう。
さらに斜め方向の入力のしにくさも,実戦においては大きな壁になる。とくにボタンが離れていることもあってか,ニュートラルから斜め上(
や
)を正確に入力するのが難しく,ゲームにもよるだろうが,シビアな斜め方向入力を多用する3D格闘ゲームなどでは,困ることになりそうだ。ここについてはどうしても,斜め方向のボタンまで用意した
8方向式Hit Box が欲しくなってしまった。
結局のところ,一朝一夕で使いこなすのが難しいコントローラであるのは確かで,もし本気で「理論最速」を目指すのであれば,それこそ通常のレバー式コントローラを投げ捨ててしまうくらいの覚悟が必要になるだろう。しかし本当に極まってしまえば格闘ゲームにおいて有効な入力デバイスであることも間違いないわけで……なんともやっかいな,いや夢のあるコントローラが登場したものである。
ただ筆者自身についていうならば,幾らHit Boxが格闘ゲームにおいて有利であろうと,今から乗り換えることができるかというと,おそらくは無理だろう。レバー入力というインタフェースはそれほどに筆者の体に染みついており,そして直感的で分かりやすい。そもそも波動拳などのコマンドは,レバー+ボタンというインタフェースの中でこそ誕生しえたゲームシステムなのだから,それも当然だ。
一方,これから格闘ゲームに触れようとするプレイヤーが同じように感じるかどうかは分からない。とくに欧州圏では,PCで格闘ゲームをプレイする人が少なくないと聞く。生まれたときからキーボードで格闘ゲームをプレイして来た人なら,レバーよりボタンのほうがより自然に感じられても,何ら不思議ではないはず。
事実2011年7月にアメリカのラスベガスで行われた世界最大の格闘ゲーム大会
「Evolution 2011」 では,このHit Boxを持ち込んだプレイヤーがいたそうで,残念ながら今回はレギュレーションにより出場が認められなかったらしいが,来年どうなるかは分からない。
海外の大会では,基本的に自作コントローラの持ち込みが許されていることが多く,将来的にはこういった特殊なコントローラを操るトッププレイヤーが登場しても,何ら不思議ではない。
しかしそれは歓迎すべきことではないか。これまで,それほどまでに不可分だったはずのレバー操作から,格闘ゲームが解き放たれつつあるのだ。それはある意味,日本のアーケードの片隅で生まれた格闘ゲームが,真にワールドワイドな競技として,世に受け入れられた証左でもある。実に感慨深い話ではなかろうか。