糸井重里
・ああ、これ前々から思ってたことなんだけど。
口に出して言ったこともなかったし、
わざわざ言うつもりもなかったなぁ。
ということを、つい言った。
老人になったおかげのような気がする。
年を取ると、なにかと漏れるのかもしれない。
まぁ、それはそれで気をつけたほうがいいんだけどさ。
状況が、言いやすそうだったからかなぁ。
初対面の人も3名いて、
前から知っている人たちも3名ほどいて、
「ほぼ日」の乗組員も3名で、そしてぼく自身。
夕食をご馳走になっているという場面だった。
ちゃんとしたホテルの日本料理の店でね。
食事の前の「お飲み物」の注文がそろって、
ビールと、ノンアルコールの小びんが運ばれてきた。
びんと、それぞれのグラスが、それぞれの前にある。
まだ本題に入らないままだね。
もうすぐだから、ちょっとがまんしてくんろ。
おつかれさまでした、ありがとうございました。
口々にみんながそんなことを言いながら、
ビールやノンアルコールビールのびんを持って、
近くにいる人のグラスに注ごうとしている。
おっとっと、ぼくは小びんを右手に持ったけれど、
だれに注いでいいのか考えたりもせず、
じぶんのグラスに注いでしまったのだった。
他人のグラスを探す小びんたちは、少々迷っている。
だれが、だれに、注ぐかについての逡巡もある。
最年長の人であるぼくは、つい、言った。
左手にはじぶんで注いだ飲み物のグラスがある。
「お酌してなんかいいことがあったか?」
お酌をやめて、それぞれにグラス持って、乾杯しよう。
なんとなく、そういえばそうだということになった。
ぼくは、生まれてはじめて、お酌をとめた。
お酌されてよろこんでる人も、思えば見たことない。
今日も、「ほぼ日」に来てくれてありがとうございます。
お酌は、酒がもっと貴重だったときの慣習だよね、たぶん。
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