←レオナルド博士の等身大ぬいぐるみ
先週土曜日に横浜みなとみらい・ブリリアショートショートシアターで開催された、「ハマの蛙男祭り」にトークイベントのゲストとして出演しました。蛙男商会デビュー五周年記念イベントの一環でして、「ええ?もう五年経ったの?」と驚きました。俺はほぼデビュー時から蛙男さんとお付き合いさせていただいていましたので、本当にあっという間でした。この「たけくまメモ」もこの12月に五周年ですから、蛙男さんのキャリアと「たけくまメモ」は、半年くらい向こうがお兄さんですけど、同い年というわけです。
この五年の間、蛙男さんはネットからテレビに進出し、DVDを多数リリースし、劇場アニメを5本も公開させ、海外にも進出しているわけです。「たけくまメモ」は、相変わらず個人ブログのままですので、蛙男さんの活躍には目を見張るばかりです。会場は7割くらいが女性の印象で、蛙男作品がアニメファンにではなく、女性を中心にした「お笑いファン」に支持されていることがよくわかるイベントでした。
←トークでの俺・FROGMAN・別所哲也さん
トークは俺と蛙男さん、この劇場の代表で、ショートショートフィルム映画祭実行委員長、そして俳優の別所哲也さんの三人で行いました。個人のFLASHアニメーション作家としては、数少ない商業的成功を収めたといえる蛙男商会さんのこれまでの軌跡を振り返るとともに、トークは「表現者の志(こころざし)」についての話題に及びました。
蛙男さんは実写映画やテレビドラマの助監督出身で、30歳を越えて初めてアニメを作り始めたわけです。別所哲也さんも俳優業のかたわら、世界中の短編映像作家にスポットを当てる仕事をされて、ついにはこのような立派な「短編映画専門劇場」を運営するに至りました。俺は、ずっとマンガ畑のライターでしたが、44歳でブロガーとなり、今は大学の先生もしています。
それぞれ、なんらかの志を胸に秘めて活動しているわけでして、それを中年になっても持続しているところに共通点があるといえます(少し強引なまとめですが)。蛙男さんの最新作「京浜家族」も上映されたので見たんですが、相変わらずギャグが冴えていて、場内爆笑に包まれ、まったく衰えを感じませんでした。彼はアニメ作家というより、資質としてマンガ家に近いと思うんですが、たいした才能だと改めて思いました。
俺が蛙男さんにお会いしたのは四年前でしたが、彼は東京でのテレビの仕事を一切辞め、年収が60万円に激減しながらも、島根の山奥でアニメを作り始めて一年目でした。すでに30歳を越え、妻子まで抱えた状態での転身ですから、普通は首をくくってもおかしくない状態だったはずです。
しかし彼のFLASHアニメは滅法面白く、2~3分の作品なら一人で二日あれば出来てしまう驚異のコストパフォーマンスは、成功の可能性を感じさせるに十分でした。それが今では年に1本は長編アニメを東宝系劇場で公開するようになり、島根県に家まで建てたというからすさまじい成功ぶりです。奥さんやお子さんも、これで報われたのではないでしょうか。
トークでも話しましたが、蛙男さんは、お笑いの才能もさることながら、自分に出来ること・出来ないことを的確に見極めて、自分の得意領域を最大限に利用して最高の成果をあげる自己プロデュースの才能が抜きんでていると思います。
普通、アニメ作家を志す人は、「絵が描きたい、動かしたい」という動機から入ることが99パーセントだと言えます。中学時代以来まともに絵を描いてなかったという蛙男さんのような人がアニメ作家になることは、普通はあり得ません(絵描きではなく、純粋に演出家としてアニメ界に入った高畑勲監督のような人もいますが)。蛙男さんはもともと実写映画の監督を志していたわけで、それが30歳でアニメに転身することになったのは、実写映画の製作システムに大きな疑問を抱いたからでした。
もちろんどの業界にも構造的な問題はあり、それはアニメ界も同様なわけですけど、蛙男さんはアニメ業界に入ることはなく、業界的な知識も人脈も持たず、ただPCでFLASHを作ってインターネットで公開するという道を選んだのでした。「一人で映画を作る」というテーマに真面目に取り組んだら、PCでFLASH個人制作という方法以外の選択肢は存在しなかったのです。
その際、彼の武器は実写ドラマの世界で培った脚本能力と編集能力、そして親から授かった美声でした。こうしたものは、アニメにとっては本質的ではないと思われがちですが、アニメといえど映画なわけです。映画としての面白さにはさまざまなものがありますので、脚本と声の演技・編集に特化した蛙男商会のような作品も、もちろんアリだと俺は思います。
蛙男商会さんには、今はまだ発表できない計画がいくつかあるようです。俺にも計画がいくつか進行中ですが、これは近く「たけくまメモ」で発表するつもりです。
http://www.kaeruotoko.com/keihin/
↑ハマの蛙男祭り公式
2009/07/06アニメ・コミック,日記・コラム・つぶやき,業務連絡,創作論|固定リンク
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