んーと、まだいろいろ忙しいので昨年のmixiの書き込みから、蔵出しシリーズでお送りします。今週の水曜日には多摩美の講義も始まるし、なんやかんやで大わらわなんですが、今年の俺は「たけくまメモ」に賭けておりますからね! 今後、いろいろ新企画も考えておりますので見捨てないでくださいネ。
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昨日、某新聞の原稿を入稿したら、先方から電話があって「肩書きをどうしますか」と言われた。こういうの、俺の場合すごく多いんですよ。
いつもは「編集家」というのを使っているんですが、たぶん日本で俺しか使ってない肩書きなので、新聞社のような堅い仕事先の場合、「もう少しわかりやすいものを」と必ず言われるわけです。「編集者」の誤植と間違われるからと。
俺がなぜ「編集家」かというと、俺の仕事の原点が編集者であり、今でも心の底では自分は編集者だと思っているからです。しかし現実の編集仕事はもう何年も開店休業状態でありまして、仕事の9割は普通のライター仕事になっている。最近はこれに大学講師も加わりましたが、別にこれだけで生活ができるわけではないので「講師」と名乗るもおこがましい。非常勤だし。
そんなわけで「フリーライター」とか「評論家」「作家」でもいいんだけど、創作に関わらず人間の知的生産活動の基本は「編集」にあると俺は考えているので、「編集+作家」というような意味で「編集家」と名乗っているのが真相であります。
しかし先述の理由で、これが通らないことがある。そうなるとこっちも基本的にはどうでもいいので、向こうが「評論家でいいですか」と言ってきたら「ああ、まあ、それでいいです」と答えたりします。
しかし「評論家」というのも便利だがよくわからない肩書きですね。別に資格があるわけじゃないし、そもそも何の評論家だかわからない。頭に「●●評論家」とつけばまだわかりやすいが、単に「評論家」ってのは。
だから「マンガ評論家」でもいいようですが、そうなると仕事を自分から限定するような気がして、これも抵抗があります。他の仕事をしてはいけないってことはないんでしょうが、最近歳をとったせいかマンガを読むのが億劫でしかたがないし。これでマンガ評論家なんて名乗ったらサギですよ。
とにかく、その、俺は肩書きを名乗るのが苦手なんですよ。自分の可能性を限定したくない、といえば格好いいようだが要はイイカゲンなままでいたいのだと。明日ふっと全然違う仕事をしてもいいような自分でいたい。無理なんですが。
しかし世間はそれでは通らないわけです。なんというかこの、肩書きとか学歴とか、あるいは何か組織の一員であるとか、そういうものがないと一人前の人格として見られないことが多いわけです。若い頃はそれに必死で抵抗する自分がいたんですが、40越えるとそうも言ってられない。だいたい部屋を借りるにしても
「仕事はなんですか」
「いや、そのフリーでいろいろと」
なんて答えようものなら、これは「無職」と同義であると。40越えて無職というのはダメ人間だ。いや、実際ダメ人間ではあるのだが、部屋を借りるような局面では人間、ウソをつかねばならぬこともある。
そんなわけでもっとわかりやすい肩書きはないもんですかね。山本晋也なんてもう20年くらい映画撮ってないはずだが、いまでも「監督」でしょう。実体はともあれ肩書きは大事なんでしょう、ダメ人間と思われぬためにも。
ああいうことを書いてはいますが、歳とともにだんだんどうでもよくなっているのも事実。物書きというのも、じつはよく使います。
どうせなら「ブロガー」にしようかしら。今後は。
投稿: たけくま | 2005/04/11 03:11
近からず遠からずの人で川勝正幸氏はエディターと名乗っていますよね。竹熊氏もエディターと名乗っても違和感ないんと思いますが。フリージャーナリストと名乗るより、ピンと来ますがどーでしょう。
投稿: hopp | 2005/04/11 08:34
桜玉吉さんがエッセイ漫画で
有限会社を設立して「社長」と名乗っておられましたが、
それに倣い、事務所でもつくって「社長」なり「会社役員」と
名乗るのはどうでしょうか。
投稿: 原 | 2005/04/11 11:02
竹熊さんにはその‘東大講師’の方に対して肩書きの件をガンガン突っ込みまくったという過去がありますから、他のヤツはともかく‘大学講師’だけはやっぱちょっと名乗り辛いんじゃないですかね。
略歴に書く/書かれるとかは別として。
投稿: | 2005/04/11 14:45
↑↑↑ええ、非常勤で「大学講師」を積極的に名乗る度胸は、俺はあまりないですね(笑)。やってることは同じでも、立場的には雲泥の差がありますから。非常勤というのは、実態はアルバイトです。
投稿: たけくま | 2005/04/11 21:54
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[:読書:]「・・経営に向いてる人間なんて一握りだ。それでもみんな、やってかなきゃならねえんだよ・・」(”零細リベンジャー\" 佐野ユウジの言葉)<ナリタがこの言葉に思うこと>・・経営者だけじゃない。これはどんな環境にいる人にも当てはまることだね。会社勤めだって、主婦だって、学校だって・・向いてないと思ってもどん底にいても、諦めないで「前を向いている」やつなら誰かが助けてくれる。どこからか追い風が吹く。今の環境に向いているとか向いてないとか言...[続きを読む]
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竹熊 健太郎: 20世紀少年探偵団 (ビッグコミックススペシャル)
『20世紀少年』に登場する「70年代的なるもの」について、ケンヂと同い年の竹熊が書いた“もうひとつの20世紀少年”
篦棒な人々ー戦後サブカルチャー偉人伝
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