転がった二人の男の血で、辺りは赤く染まっていた。
暗闇でその血溜まりが見えないことが残念だった。それを見ることで、私の復讐の成果を実感したかったからだ。
怯えきった表情の男に笑顔でゆっくりと顔を近付けていく。男がさらに身を小さく固める。
――そうだったんだ。やっぱり、そうだったんだ……
自分のことは自分が一番よく知っているという言葉は今まで何度も聞いたことがあった。しかしそれは間違いだ。私は今こうして、あらためて新しい自分自身を再発見しているのだから。
じわじわと相手を追い詰める感覚。抵抗できない相手を威圧しながら迫る喜び。この行為が姉の復讐という大義名分の下、正義という免罪符を翳して堂々と行えるものであるという優越感。
私はこの時確かに、加虐性欲に目覚めていたのだ。
「ふふ。覚悟はいいね。お馬鹿さん……」
「ひ……は……あああ……」
男が示す恐怖心は、もはや私の性欲を掻き立てるもの以外の何者でもなかった。
そして相手の顔が恐怖に歪むほど、自分の表情が涼やかになっていくのを感じた。
髪を掴んで男を持ち上げ、目線の高さを合わせる。そのまま木を背にさせる。私は膝を大きく後ろに引いた。
……!!!……
静寂に囲まれた公園内に激しく鈍い音がこだまする。
私の膝が男の内臓の感触をしっかりと受け止める。内部を破壊するその瞬間を肌で感じる。
無抵抗のままで膝を突き刺された男は眼球が飛び出すほどに目を見開き、内部から込み上げる嘔吐感を表情に表していた。
酸素を求めてか、内部から今にも何かを押し出したいという身体の反応からか、男は舌をだらりと垂らしながら、しきりに口を金魚のようにパクパクと動かしていた。
膝を抜くと、まるで破裂した下水管から水が溢れるように、勢いよく口から血を吐き出した。
「肝臓……だよ。その血の源流はね。」
あまりに冷静な言葉が口をついて出る。私はその行為と男の反応に、言いようもないエクスタシーを感じていた。
男は身体中の力が抜け、手を放すと腹を抱えて地面に突っ伏し、うつ伏せになって吐血を繰り返した。
その腹に焦点を絞り、さらに何度も爪先で蹴り上げる。じわじわと……まるで自分がネズミを弄ぶ猫になったような気分だった。
「うえぇぇ……お、ごほっ……ぐが……げほおお……」
男の苦悶の声がこんなにも耳に心地よいということを初めて知った。
私は興奮を抑えきれず、再度男の髪を掴んで無理矢理立たせると、また膝をその腹に突き刺すのだった。
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