映画ライター服部香穂里さんの『こらむ・シネマ百景』第247回“ホームドラマの戦慄”演者のエゴが散見する芝居が主流になりつつある今では死語かもしれない“ザ・いぶし銀”の妙演で、幅広い作品に迫真性を注入してきた名優の晩年を、TV界に身を置く実の娘が並々ならぬ覚悟で記録した『うしろから撮るな 俳優織本順吉の人生』。放送作家やディレクターなどとして活躍する中村結美監督は、セリフ覚えの早さにも定評のあった父・織本順吉...

映画ライター服部香穂里さんの『こらむ・シネマ百景』第246回“暮らしの流儀”広島県尾道市で、100歳を超えてもひとりで生活を淡々と営む石井哲代さんの日常を、敬愛の念いっぱいに見つめる『104歳、哲代さんのひとり暮らし』。坂の多いことでも知られる地元を知り尽くし、脚への負担を最小限に抑えるべく後ろ向きにゆっくりと歩みを進めたり、自家製野菜も必ず具に入れる味噌汁は、出汁用のいりこごと余さず食したり。大切に日々を...

映画ライター服部香穂里さんの『こらむ・シネマ百景』第245回“生々堂々”半世紀にわたる逃亡の末に、自身の素性を明かして生き抜いた、東アジア反日武装戦線の元メンバー・桐島聡の生涯を、かつて日本赤軍に属していた足立正午監督が、切なるシンパシーや、社会に今なお巣食う矛盾への並々ならぬ憤怒を注ぎ込み映像化した『逃走』。誰もが目にしたことがあるに違いない、“重要指名手配犯”らしからぬ屈託のない笑顔そのままに、志半...

映画ライター服部香穂里さんの『こらむ・シネマ百景』第244回“見えんけど……”東京都・大久保でアイヌ料理店を営む宇佐照代さんの多岐にわたる活動を軸に、アイヌのひとたちを取り巻く現状や歴史を紐解く『そして、アイヌ』。様々なルーツをもつひとたちが足繫く通うアイヌ料理店の女将として腕を振るう一方、アイヌ文化の伝承やPRにも日々奮闘する照代さんの基盤にあるのが、生まれ育った釧路を離れて上京し、自分たち5人きょうだい...

映画ライター服部香穂里さんの『こらむ・シネマ百景』第243回“あした、転機に……”三十路手前で公私にわたり葛藤を秘める小学校教師が、ラップを通じてしなやかに変貌を遂げるさまを、丹念に描写を重ねて活写する『雪子 a.k.a.』。生徒ひとりひとりの言動に気を配るも、教師としての在りように漠たる不安を抱く29歳の雪子。家庭訪問にも応じてくれない不登校の生徒や、30歳の誕生日を機に結婚を匂わせてくる恋人たちとの関係に悩む中...