今日も良い天気ですね~。
皆様いかがお過ごしでしょうか、なえぼ駅前歯科の大村です。
6月に入り、ここ札幌も日増しに暖かくなってきました。
先週からYOSAKOIソーラン祭りが始まっており、今日がいよいよフィナーレです

また昨日、今日とこの暖かな日差しの中、北大祭も行われており、1年生やサークル団体が中心となった様々な模擬店が
出店されているようです。
当院に直結した旧苗穂駅の取り壊し作業もいよいよ始まり、跡地に何ができるのかはわかりませんが、当院の周辺は
苗穂新駅直結のツインのタワーマンションの建築もすでに始まっており、確実に再開発が進んでいるようです。
先週2日の日曜日、天候に恵まれた千歳JAL国際マラソンでしたが、原生林に囲まれたコースの中、雨上がりの路面
状態も程良く、ハーフを練習のつもりで気持ちよくゆっくり(2時間半)完走してきました。
スタート地点でたまき矯正歯科の玉木先生ともお会いし、玉木先生は例年通りフルマラソンにエントリーされていました
(2週間前に罹った風邪が長引き、体調は不良とのことでしたが)。
最後までゆっくり走ったためあまり足にも来ず、もう少し走れたかな~と思いつつも、まあ相変わらずの練習不足なので
こんなものだと思います

ところで先日、九州の中野充先生がご逝去されたという訃報が入りました。
2000年10月、日本臨床歯周病学会のアンケートをもとに、「保険診療における歯周治療のあり方を考える」という
座談会が東京の医歯薬出版社で行われ、当時学会長であった関東支部の鈴木文雄先生、九州支部長であった
中野充先生、そして北海道から若手の歯科医師ということで私に白羽の矢が立ち、私にとっては初めてのメジャー
デビューであり、忘れられない座談会となりました(2001年4月号の「歯界展望」巻頭特集に掲載されました)。
まだ開業4年目の30代でしたが、鈴木先生、中野先生は日本臨床歯周病談話会の私にとっては雲の上の方でした。
座談会がご縁で毎年年賀状をいただくようになり、ご心配をお掛けした時期もありましたが、学会でお会いした時には
いつも「先生、元気!」とお声をかけていただいたことは私にとって忘れられない思い出です。
中野先生、ありがとうございました。謹んでご冥福をお祈りいたします。
さて本日は前回のブログでお伝えしたTさん(現在71才、男性)のお話をさせていただきます。
Tさんは7年前(当時65才)の平成24年、左上奥、右下奥がグラグラして痛いということで当院に来院されました。
右上奥の4歯はすでになく、義歯が装着されていました。
初診時のレントゲンと口腔内写真です。

重度歯周炎(7mm以上は重度)に罹患した歯が臼歯部を中心に多く認められ、10mmもしくは10mm以上の保存が難しい
と思われる歯も7歯に見られました。


4年前、残っていた右上奥歯をすべて抜歯し、入れ歯(義歯)になったとのこと。

保存の難しい6歯を初診時抜歯してしまうと治療計画はかなりシンプルにはなりますが、アイヒナーB4症例(残存歯による
臼歯部の咬合支持がなく、前歯部のみが咬合接触)となってしまいますので、すでにフレアーアウトしている上顎前歯の
状況からも、将来上顎は総義歯への道を辿る可能性が高い症例であると考えました。Tさんは予算の関係でインプラント
までは難しいということになりましたが、インプラントなしでもできるなら義歯ではなくブリッジにして差し上げられないものかと
考えました(ここまでは前回のブログと一緒ですね、

)
まずは歯周基本治療と保存の難しい左上臼歯部(5、6、7)の抜髄、自然挺出、上顎の仮義歯装着を行いました。
私が初診時の診査から考えた見立てと治療計画です。


専門的な歯科用語ばかりで申し訳ありません

簡単に解説させていただくと、
①できるだけ歯の保存に努める
②右下8を右上5、6部に歯牙移植を行う
③矯正治療により前歯部のガイドをしっかり作る
④ブリッジが可能であれば、すべての残存歯をクロスアーチに連結固定する
⑤アイヒナーB4になりそうなケースをアイヒナーB2(且つ、左右で臼歯部の咬合支持を作る)に欠損形態を改変する
上下左右の受圧、加圧のバランスを整える
⑥ブラキシズム、咀嚼力のコントロールを行う
⑦歯周治療をしっかり行い、その後のメインテナンスを継続する となります(簡単ではなかったですね

)
左上臼歯部の治療経過です。

左上6、7が保存できるかどうかがブリッジで行うための鍵でしたが、歯周外科処置前に保存できると考えていた
左上6の口蓋根(P)と左上7(3根中、近心頬側根(MB)ともう1根を保存予定)はいずれも根分岐部で根尖まで
歯周病が進行しており、根面の廓清中に抜けてきてしまいました

仕方なく残存している歯根膜を大切にしつつ、口腔外で残った歯根面の歯石等を除去し、エムドゲインを塗布した
後、抜歯窩に戻しました。
7は根間中隔の骨がサクサクですべてなく、ひとつの抜歯窩になっていたため、2根を戻してもブカブカの状態であった
ことから、その時はβ-TCPという骨移植材で周囲を埋めた後、できるだけ歯肉を寄せて縫合し、スーパーボンドにて
固定を行いました。

このように経過をみていきました。
次に右上臼歯部の治療経過です。

歯牙移植後、根分岐部の付着もしっかり得られていたのですが、移植後3ヵ月3週で仮歯にて少し咬合させたところ
頬側の根分岐部で急激に付着を喪失してしまい、結果分割を余儀なくされてしまいました。

この論文は当時すでに知っていましたが、少しでも早くブリッジで咬合させて治療を進めたいと考えたことが、結果として
大きな反省点となりました。もう2ヵ月待って根分岐部の骨が再生された後に負荷をかけるべきであったと思います。
次に矯正治療に関してですが、歯周外科処置終了後以下のような仮歯を装着し、左上7口蓋根のアップライトを行った後、
マウスピース矯正を行っていきました。

治療終了時の口腔内写真とレントゲン写真です。

矯正治療後の後戻り防止も兼ね、ワイヤー+スーパーボンドにて上下顎前歯部は臼歯部と連結固定しています。

予後の不安なところもありますが、歯周ポケットは概ね4~5mm以内とメインテナンスできる歯周環境は確保できました。
4年後の現在の状態です。


これまで一度も腫れたことはなく、日常生活においては全く問題なく経過してはいますが、4年後のレントゲン写真をみますと、
再生再植を行った左上奥だけが少しずつ歯周病の進行を認めます。

左上6、7 は今後問題が顕著になってきたら、速やかに次の一手に踏み切る必要があり、その一手は6 に1本だけ
インプラントの追加を考えています。
ここまで専門用語の多い、理解しにくい長文をお読みいただきありがとうございました。
最後になりましたが、Tさんの今後のご健康とご多幸を祈りながら、口腔健康を通して少しでも T さんの幸せに貢献できます
よう、スタッフ一同一生懸命対応させていただきますので、Tさん、今後も末永くご来院をお待ちしております
