冷やし中華は、冬が近づくと夏季に酷使した体温冷却機能を回復するため、ため込んだ食料とともに巣穴にこもって冬を越す。冬眠に関する研究を行う東北農業大学の伊達真紀教授によると、公園周辺の冷やし中華はクマやリスと同じように冬眠していたが、10年ほど前から冬眠の習性を失い、巣ごもりに移行したという。「温暖化の影響で秋以降も需要が衰えず、冬眠時間を十分に確保できなくなったためではないか」と分析する。
仙台市内で中華料理店を営む陳健三さんも冷やし中華の生態に変化を感じている。冷やし中華は月の平均気温が20度を超えると活動期に入ることで知られるが、活動期の開始と終了にそれぞれ掲出していた「冷やし中華はじめました」「冷やし中華終わりました」の張り紙を3年前から取りやめた。客からのクレームが増えたためだという。
「春先は『こんなに暑いのにまだ始めないのか』、秋口には『まだ暑いのにもうやめるのか』と文句を言われることが増えました。これほど暑い日が増えると、期間限定をアピールする意味もなくなってきましたね」
巣ごもりを終えた冷やし中華は、暑さが本格化する来年5月ごろから活動期に入るとみられる。「このまま温暖化が進めば、冷やし中華が備えるホメオスタシス(恒常性)が維持できなくなり、『温(ぬる)中華』になるかもしれない」と、伊達教授は警鐘を鳴らす。
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