2014ランクイン作家インタビューパレス・メイヂ久世番子別冊花とゆめ
2014/07/03
美しき帝・彰子とその少年侍従・御園の宮中での暮らしを描いた『パレス・メイヂ』。『暴れん坊本屋さん』などコミックエッセイでその名を轟かせた久世番子先生が真正面から描く少女マンガは、どのようにして誕生したのか。久世先生を直撃した。
後編はコチラ!
【インタビュー】三島由紀夫でセレブエッセンスを補給!? 『パレス・メイヂ』久世番子【後編】
愛知県出身。
2000年「月刊ウィングス」(新書館)でデビュー。
2005年、自らの書店員時代の経験をもとに描かれた「暴れん坊本屋さん』(新書館)が話題に。その後『私の血はインクでできているのよ』(講談社)『よちよち文藝部』(文藝春秋)などコミックエッセイを多く発表する。
現在は、「別冊花とゆめ」(白泉社)にて『パレス・メイヂ』を、「Kiss」(講談社)にて『神は細部に宿るのよ』を連載中。
——これまでエッセイマンガでヒット作を連発してきた久世先生だけに、『パレス・メイヂ』には驚かされました。たいへん失礼ながら、こんなにおもしろい正統派少女マンガを描かれるなんて、と。
久世 私、いちおう、少女マンガでデビューしたんですけど、2005年ごろからエッセイマンガばかり描いてきたので……本当に描くのに勇気がいりました! 編集さんから「少女マンガを描いてください」と言われたときは、「ご冗談を」と(笑)。その応酬で1年くらい経ったんですが、そこまで言ってくださるなら1回だけ描こうかなと。
——1話だけのつもりだったんですか?
久世 最初『パレス・メイヂ』は読切だったんです。ですが、1話が掲載されたあとに「せっかくだから、1冊の単行本にしましょう」と言われたので、4話分描くことになったんです。
——たしかに1巻だけでも、きれいに話が一段落していますよね。
久世 1巻が出る直前になったら、「アンケートの結果がよかったから続けましょう」と。「ほんとかな~っ?」て疑いながら続けることになって、今に至ります(笑)。
——ストーリーの題材は、久世先生からの提案ですか?
久世 はい。昔、同人誌で戦前の皇族のマンガを描いていたんです。デビュー後、商業誌にネームを出したこともあって……そのときはボツになりましたが。今回「何か描きたいものありますか?」と聞かれて、ああ、あれがあったなと。
——久しぶりの少女マンガに不安を感じつつも、好きなものを楽しんで描こうという気持ちで取り組んだわけですね。
久世 描くとなったら開き直って、好きなようにやらせてもらっちゃおう、と! もし失敗しても私のせいじゃなくて、頼んだ白泉社さんが悪いんだもん(笑)。といっても少女マンガ誌で描かせていただくわけですから、少女マンガっぽくドラマティックな作品にしないといけないな、と。そこは考えましたよ。やっぱり恋愛要素は必須だろうと。
——そもそも戦前の皇族を描くに至ったのはどこに魅力を感じたためだったのでしょう。
久世 じつは私、歴史学科卒業で、卒論を明治天皇で書いたんですよ。戦前の皇族って何もかも豪華で、宮殿もドーンと豪華、大礼服や軍服も、絵的にけれんみがあるんですよ。やっぱりその華やかさが描きたかったですね。当時は厳格な身分の違いがあったためといえますが。
華やかな宮殿内の描写には、史料にもとづいた久世先生ならではのこだわりが!
——貴族的な雰囲気……というと、『ベルサイユのばら』が思い浮かびますが。
久世 それです! 私はもちろん『ベルばら』はもう大好きな作品ですから、その刷りこみはありますし、憧れますね!
——ただし、舞台が日本だと華やかさの雰囲気もまた違ったものになりますね。
久世 『ベルばら』の場合は、フランス革命という時代背景も大きいですよね。
——久世版“オスカルとアンドレ”ということで?
其ノ七扉のカラーイラスト。連載では彰子様のお顔が隠れたものが採用された。
久世 そう言っちゃうのはおこがましいですが……やっぱり『ベルばら』に影響は受けてますので。彰子と御園のダブル主人公は、描いてるうちにどんどん好きになってきましたね。
©久世番子/白泉社
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