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順序集合

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
曖昧さ回避順序」はこの項目へ転送されています。その他の用法については「wikt:順序」をご覧ください。
この記事には複数の問題があります改善ノートページでの議論にご協力ください。

順序集合(じゅんじょしゅうごう、:ordered set)は集合の要素の間に順序が定義された集合である。順序とは二項関係であって後述する反射律・推移律などを満たすものであり、実数の大小関係や整除関係、集合の包含関係などを一般化したものである。

順序が満たす公理の種類により、前順序集合半順序集合全順序集合がある。多く場合、半順序集合を指して「順序集合」と呼ぶが、分野によっては前順序集合や全順序集合を指す。

定義

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P を集合とし、≤ をP 上に定義された二項関係とする。P を (P, ≤) の台集合:underlying set)または:support)という。

≤ が反射律と推移律を満たすとき、≤ をP 上の前順序:preorder)または擬順序:quasiorder)といい、(P, ≤) を前順序集合という。

 aP, aa{\displaystyle \forall \ a\in P,\ a\leq a}
 a,b,cP, ((abbc)ac){\displaystyle \forall \ a,b,c\in P,\ ((a\leq b\land b\leq c)\rightarrow a\leq c)}

≤ が前順序でかつ反対称律を満たすとき、≤ をP 上の半順序:partial order)といい、(P, ≤) を半順序集合:partially ordered set; poset[注 1])という。

  • 反対称律
 a,bP, ((abba)a=b){\displaystyle \forall \ a,b\in P,\ ((a\leq b\land b\leq a)\rightarrow a=b)}

≤ が半順序でかつ全順序律を満たすとき、≤ をP 上の全順序:total order)といい、(P, ≤) を全順序集合:totally ordered set; toset)という。全順序を線型順序、全順序集合をということもある。

  • 全順序律
 a,bP, (abba){\displaystyle \forall \ a,b\in P,\ (a\leq b\lor b\leq a)}

≤ が全順序律を満たさない(ab でもba でもない)とき、ab比較不能:incomparable)であると言う。全ての二要素が比較可能な(順序が定義されている)順序集合は、全順序集合である。

紛らわしくなければ ≤ を省略し、P を(いずれかの意味で)順序集合という。順序集合 (P, ≤) に対し、≤ を台P 上の順序関係ともいう。

上では順序を記号 ≤ で表したが、必ずしもこの記号で表現する必要はない。実数の大小を表す記号 ≤ と区別するため、順序の記号として ≺ や ≪ を使うこともある。

半順序集合の部分集合AA の任意の異なる二元が比較不能であるものを反鎖英語版という。半順序集合のことを部分順序集合と呼ぶこともある[要出典]が部分順序集合は順序集合の部分集合に自然な順序を入れたものも指す。

半順序集合の元a が他の元b によって被覆される英語版a <:b)とは、ba より真に大きく、かつab の間に他の元がないことを意味する。つまりa <:b とは下の三条件を全て満たすことである。

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  • 任意の二つの有限集合濃度の数)の比較 ≼ は、前順序である。なお、紛らわしくも全順序を満たすが、反対称律を満たさない(同じ濃度の異なる集合の対がある)ため半順序でさえない。
  • 実数全体の集合について、算術的大小関係 ≤ は全順序である。その真部分集合(代数的数全体、有理数全体、整数全体、自然数全体など)についても同様である。
    • しかし、複素数全体の集合には複素数の乗法と"両立"する全順序は存在しない(順序体でない)。単に全順序を入れるだけであれば、直積集合R2 =R ×R辞書式順序を定めることができる。
  • 自然数全体の集合は、整除関係 ∣ を順序とする半順序集合であるが、全順序集合ではない。
  • 任意の単元集合 {e} の冪集合 2{e} = {∅, {e}} は、包含関係 ⊆ を順序とする全順序集合である。
  • 任意の二元以上の集合S冪集合 2S は、包含関係 ⊆ を順序とする半順序集合であるが、全順序集合ではない。例えば、2{1, 2, 3} = {∅, {1}, {2}, {3}, {1, 2}, {1, 3}, {2, 3}, {1, 2, 3}} について、{1, 2} と {2, 3} は比較不能である({1, 2} ⊆ {2, 3} でも {2, 3} ⊆ {1, 2} でもない)。
  • 線形空間の部分空間全体は、包含関係を順序とする半順序集合である。
  • 半順序集合P に対し、P の元の(自然数で添え字付けられた)列全体の成す集合は、列 1 =a = (an)nN, 1 =b = (bn)nN について、
abanbn ( nN){\displaystyle a\leq b\iff a_{n}\leq b_{n}\ (\forall \ n\in \mathbb {N} )}
と定めると半順序集合となる。
  • 集合X と半順序集合P に対し、X からP への写像全体の成す写像空間英語版は、二つの写像f,g に対して、fgX の任意の元x に対してf(x) ≤g(x) となることとして定義すると、半順序集合になる。

逆順序、狭義順序、双対順序

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前述の ≤ は、直観的には「左辺が右辺より小さい、または両辺が等しい」ことを意味するが、逆に「左辺が右辺より大きい、または両辺が等しい」順序関係や、等しさを許容しない順序関係も考案できる。

逆順序

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「大きい、または等しい」ことを意味する順序関係 ≥ を ≤ の逆順序といい、下式のように定義される。

abba{\displaystyle a\geq b\iff b\leq a}

狭義の順序

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一方、等しいことを許容しない順序は狭義の(半)順序と呼ばれ、以下のように定義される:

a<b(abab){\displaystyle a<b\iff (a\leq b\land a\neq b)} …(1)

狭義の逆順序「>」も同様に定義される。

狭義の順序「<」の対義語として、等しいことも許容する順序「」のことを広義の(半)順序(もしくは弱い意味(weak) の(半)順序、反射的(reflexive) な(半)順序)という。

(1) 式で定義された「<」を「」の反射的簡約(reflexive reduction) という。

」が半順序であるとき、その反射的簡約「<」は任意のa,b,cP に対して以下を満たす:

  • 非反射性:¬(a <a);
  • 非対称性:a <b ならば¬(b <a); (非反射性と推移性から従う)
  • 推移性:a <b かつb <c ならばa <c

以上では広義の順序を定義してから狭義の順序を定義したが、逆に上の三性質(非対称性は非反射性と推移性より得られるので条件としては不要)を満たすものを狭義の順序として定義し、広義の順序を

aba<ba=b{\displaystyle a\leq b\iff a<b\lor a=b} …(2)

により定義することもできる。この場合、(2) 式で定義された「」を「<」の反射閉包英語版という。「<」が前述の3条件を満たせば反射閉包「」が半順序であることを簡単に示すことができる。

双対順序集合

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(P, ≤) を順序集合とするとき、P 上の二項関係「{\displaystyle \preccurlyeq }」を

abba{\displaystyle a\preccurlyeq b\iff b\leq a}

と定義する(すなわち「{\displaystyle \preccurlyeq }」は「」の逆順序を順序と見なしたものである)。すると、「{\displaystyle \preccurlyeq }」もP 上の順序になっていることが容易に分かる。(P,){\displaystyle (P,\preccurlyeq )}(P, ≤)双対順序集合という。

双対順序集合はその定義(P,){\displaystyle (P,\preccurlyeq )} よりもとの順序集合(P, ≤) とは"大小が逆転"している。したがって(P, ≤) における上限、極大元、最大元(定義は後述)は(P,){\displaystyle (P,\preccurlyeq )} ではそれぞれ下限、極小元、最小元に対応している。

ハッセ図

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三元集合{x,y,z}部分集合の全体を包含関係を順序とする順序集合と見たときのハッセ図

P を有限集合とし、「<」をP 上の狭義の半順序とするとき、以下のようにしてP を自然に単純有向グラフと見なせる:

頂点:P の元
aP からbP への辺があるa <b であり、しかもa <c <b を満たすcP が存在しない
(すなわちba を被覆している)

この有向グラフを図示したものをハッセ図という。

ハッセ図を用いると、順序関係に関する基本的な概念が図示できる。例えばこの図で{x}{x,y,z} は比較可能だが、{x}{y} は比較不能である。また単集合の族{{x}, {y}, {z}} は反鎖である。さらに{x}{x,z} によって被覆されるが、{x,y,z} には被覆されない。

なお、有限半順序集合から前述の方法で作ったグラフは閉路を持たない。逆に(V,E) を閉路を持たない有限な単純有向グラフとすると、V 上に以下の順序を入れることでV を半順序集合と見なせる:

a <ba からb への道がある

したがって有限半順序集合は閉路を持たない有限な単純有向グラフと自然に同一視できる。

上界、最大、極大、上限、上方集合

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P半順序集合とし、A をその部分集合とし、xPとする。このとき上界、上限、最大、極大の概念、およびこれらの双対概念である下界(かかい)、下限、最小、極小は以下のように定義される[2]

  • xA上界 (upper bound) であるとは、A の任意の元y に対してyx となること。
  • xA上限 (supremum) あるいは最小上界 (least upper bound) であるとは、xA の上界全体の集合の最小元となること。これは存在すれば一意的に決まり、supA あるいはlubA と表される。
  • xA最大元 (maximum element) であるとは、xA の元であり、かつxA の上界であること。これは存在すれば一意的に決まり、maxA で表される。
  • xA極大元 (maximal element) であるとは、xA の元であり、かつy >x を満たすyA が存在しないこと。
  • xA下界 (lower bound) であるとは、A の任意の元y に対してyx となること。
  • xA下限 (infimum) あるいは最大下界 (greatest lower bound) であるとは、xA の下界全体の集合の最大元となること。これは存在すれば一意的に決まり、infA あるいはglbA と表される。
  • xA最小元 (minimum element) であるとは、xA の元であり、かつxA の下界であること。これは存在すれば一意的に決まり、minA で表される。
  • xA極小元 (minimal element) であるとは、xA の元であり、かつy <x を満たすyA が存在しないこと。

上界および上限の定義において、x が必ずしもA の元であるとは限らない、ことには注意が必要である。左閉右開の半開区間[a,b){\displaystyle [a,b)} には最大元は存在しないが上界および上限は存在する(つまり、b)。

極大元の概念と最大元の概念は以下の点で異なる。まずxA の極大元であるとは、A の元は「x 以下である」か、もしくは「x とは大小が比較不能である」かのいずれかである事を意味する。一方xA の最大元であるとはA の元は常にx 以下である事を意味する(このときxA の任意の元と比較が可能である)。したがって最大元は必ず極大元であるが、極大元は必ずしも最大元であるとは限らない(下の具体例参照)。全順序集合においては必ず極大元は最大元に一致する。

さらにAP上方集合(resp.下方集合)であるとは、任意のaAx >a (resp.x <a) を満たす任意のP の元に対しxA となることをいう。

具体例

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三元集合の冪集合のハッセ図から最大元と最小元を取り除いたもの。この図の一番上の行にある各元がこの半順序の極大元であり、一番下の行の各元は極小元である。最大元と最小元はない。集合 {x, y} は元の族 {{x}, {y}} に対する上界を与える。
整除性によって順序付けられた非負整数のハッセ図

正整数全体の成す集合を整除関係で順序付けるとき、1 は任意の正整数を割り切るという意味において1 は最小元である。しかしこの半順序集合には最大元は存在しない(任意の正整数の倍数としての0 を追加して考えたとするならば、それが最大元になる)。この半順序集合には極大元も存在しない。実際、任意の元g はそれとは異なる。例えば2g を割り切るからg は極大ではありえない。この半順序集合から最小元である1 を除いて、順序はそのまま整除関係によって入れるならば、最小元は無くなるが、極小元として任意の素数をとることができる。この半順序に関して60 は部分集合{2, 3, 5, 10} の上界(上限ではない)を与えるが、1 は除かれているので下界は持たない。他方、2 の冪全体の成す部分集合に対して2 はその下界(これは下限でもある)を与えるが、上界は存在しない。

写像と順序

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順序に関する写像の概念に以下のものがある:

定義

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S,T を順序集合とし、f:ST を写像とする。このとき

任意のx,yS に対してxyf(x) ≤f (y)
任意のx,yS に対してxyf (x) ≥f (y)
  • 上の2つを合わせて単調 (monotone) 写像という。
  • f順序を反映する (order-reflecting) とは、
任意のx,yS に対してf (x) ≤f (y) ⇒xy
任意のx,yS に対してxyf (x) ≤f (y)

f:ST が順序埋め込みであるとき、Sf によってT に(順序集合として)埋め込まれるという。また順序同型f:ST が存在するとき、ST順序同型あるいは単に同型であるという。

性質

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上で述べた概念は以下の性質を満たす:

  • 順序を反映する写像は単射である。実際f(x) =f(y) ⇒f(x) ≤f(y) かつf(x) ≥f(y) ⇒xy かつxyx =y である。
  • f が順序埋め込みである必要十分条件はf が順序を保存し、しかも順序を反映することである。また全単射f:ST とその逆関数f−1:TS が順序同型ならf,f−1 は順序同型である。
  • 順序を保つ写像と順序を保つ写像の合成は順序を保つ。順序を反映する写像と順序を反映する写像の合成も順序を反映する。

具体例

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順序を保つが順序を反映しない写像
(f(u) ≤f(v) だがuv でない)
120約数全体の成す半順序集合(整除関係で順序を入れる)と{2, 3, 4, 5, 8} の整除関係で閉じた部分集合族(包含関係で順序を入れる)との間の順序同型

自然数全体が整除関係に関して成す半順序集合から、その冪集合が包含関係に関して成す半順序集合への写像f:NP(N) を各自然数にその素因数全体の成す集合を対応させることにより定まる。これは順序を保つ集合である(すなわち、xy を割るならばx の各素因数はy の素因数にもなる)が単射ではない(例えば126 もこの写像で{2, 3} に写る)し、順序を反映もしない(例えば126 を割らない)。少し設定を変えて、各自然数にその素冪因子の集合を対応させる写像g:NP(N) を考えれば、これは順序を保ち、かつ順序を反映するから、従って順序埋め込みになる。一方、これは順序同型ではない(実際、たとえば単集合{4} に移る数は無い)が終域g値域g(N) に変更すれば順序同型にすることができる。このような冪集合の中への順序同型の構成は、より広汎な分配束英語版と呼ばれる半順序集合のクラスに対して一般化することができる(バーコフの表現定理英語版の項を参照)。

区間

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P を順序集合とし、a,bP の元とするとき、閉区間[a,b]開区間(a,b) を以下のように定義する:

[a,b]:={xPaxb}{\displaystyle [a,b]:=\{x\in P\mid a\leq x\leq b\}}
(a,b):={xPa<x<b}{\displaystyle (a,b):=\{x\in P\mid a<x<b\}}

さらに[a,b) および(a,b] を以下のように定義し、半開区間と呼ぶ:

[a,b):={xPax<b}{\displaystyle [a,b):=\{x\in P\mid a\leq x<b\}}
(a,b]:={xPa<xb}{\displaystyle (a,b]:=\{x\in P\mid a<x\leq b\}}

文献によっては(a,b),[a,b),(a,b] のことを]a,b[,[a,b[,]a,b] と表す場合もある。

半順序集合が局所有限英語版であるとは、全ての区間が有限集合であることをいう。例えば、整数全体の成す集合は通常の大小関係による半順序に関して局所有限である(端点の無い無限区間のようなものは今考えていない)。

順序集合における区間の概念と、区間順序英語版として知られる特定の半順序の類いとを混同してはならない。

順序構造と位相構造

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この節には、過剰に詳細な記述が含まれているおそれがあります。百科事典に相応しくない内容の増大は歓迎されません。内容の整理ノートで検討しています。2016年1月

全順序集合の位相

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順序位相

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全順序集合A に対し、無限半開区間

(,b)={xAx<b}{\displaystyle (-\infty ,b)=\{x\in A\mid x<b\}}
(a,)={xAa<x}{\displaystyle (a,\infty )=\{x\in A\mid a<x\}}

全体の集合を準開基とする位相を順序位相 (order topology) という[注 2]。例えば、実数全体の集合R{\displaystyle \mathbb {R} } を通常の大小関係 ≤ による全順序集合と見ると、その順序位相は通常の距離により定められる位相と同等になる。

全順序集合A の部分集合B には、B を全順序集合と見なした時の順序位相とA の順序位相から誘導される位相との2つの位相が入る。しかしこの2つの位相は一致するとは限らない。(B の順序位相における開集合は誘導位相でも開集合であるが逆は一般には成り立たない)。

例えばA を実数全体の集合とし、A の部分集合

B={x0<x<1}{2}{\displaystyle B=\{x\mid 0<x<1\}\cup \{2\}}

を考えると、A からB に誘導される位相では一元集合{2} は明らかに開集合であるが、B は順序集合としてみたときはそうではない。実際B は(2を1に移す写像により)C={x0<x1}{\displaystyle C=\{x\mid 0<x\leq 1\}} と順序同型だが、C の順序位相で{1} は開集合ではないのでB の順序位相で{2} は開集合ではない。

上極限位相、下極限位相

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単に「実数体上の位相」といった場合、前述の順序位相を指すがその他の位相を考えることも(主に反例として用いるために)できる。

実数体R{\displaystyle \mathbb {R} } 上の上極限位相とは

(a,b]={xR : a<xb}{\displaystyle (a,b]=\{x\in \mathbb {R} ~:~a<x\leq b\}}

全体の集合を開基とする位相のことであり、同様にR{\displaystyle \mathbb {R} } 上の下極限位相英語版とは逆向きの半開区間

[a,b)={xR : ax<b}{\displaystyle [a,b)=\{x\in \mathbb {R} ~:~a\leq x<b\}}

全体の集合を開基とする位相のことである[注 3]

実数体に下極限位相を入れた空間はしばしR{\displaystyle \mathbb {R} _{\ell }} と書かれ、ゾルゲンフライ直線と呼ばれる。またゾルゲンフライ直線2つの直積R×R{\displaystyle \mathbb {R} _{\ell }\times \mathbb {R} _{\ell }}ゾルゲンフライ平面英語版と呼ばれる。

overlapping interval topology

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区間 [-1,1] 上のoverlapping interval topology とは

[1,a){\displaystyle [-1,a)} for0<a{\displaystyle 0<a}
(b,1]{\displaystyle (b,1]} forb<0{\displaystyle b<0}

を準開基とする位相である。

半順序集合の位相

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半順序空間

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位相構造を持つ半順序集合P で以下の性質を満たすものを半順序空間英語版という:

a <b を満たす任意のa,bP に対し、a の開近傍Uで上方集合であるものとb の開近傍V で下方集合であるものが存在することである。

P の位相構造でこの性質を満たすものは1つとは限らないが、それらを全て半順序空間という。)なお、半順序空間と名前の似たposet topology英語版は別概念であるので注意が必要である。

定義より明らかに半順序空間は常にハウスドルフ性を満たす。

半順序空間では以下が成立する:

aia,bib かつ任意のi に対してaibi ならばab である[3]

位相構造を持つ半順序集合P が半順序空間である必要十分条件は以下を満たすことである:

半順序集合P 上の位相構造として、{(a,b) ∈P ×P |ab } が直積位相に関する閉部分集合になる。

2つ半順序空間の間の順序を保つ連続写像のことをdimapという。

上方位相、下方位相

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順序集合P 上の以下の2つの位相は同一である事が簡単に示せる。以下のいずれか一方(したがって両方)の条件を満たす位相を上方位相英語版という。

  1. {xP | x ≤ a} foraP を全て閉集合とする最弱の位相
  2. 任意のaP に対し、一点集合{a} の閉包が{xP | x ≤ a} と一致する最弱の位相

下方位相も同様にして定義できる。

アレクサンドロフ空間

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位相空間Pアレクサンドロフ空間英語版であるとは、P 上の(有限または無限個の)任意の開集合の共通部分が必ず開集合になることである。

アレクサンドロフ空間は前順序集合と自然に1対1対応していることが知られている。実際任意の前順序集合P に対し、

UP の開集合 ⇔UP の上方集合

によりP に位相を入れたものはアレクサンドロフ空間になる。(この位相をPアレクサンドロフ位相という。)

逆に任意のアレクサンドロフ空間P に対しP 上の「specialization preorder英語版」を前順序とすることでP を前順序集合と見なすことができる。

ここで位相空間Pspecialization preorderとは

xy{x}¯{y}¯{\displaystyle x\leq y\iff {\overline {\{x\}}}\subset {\overline {\{y\}}}}

で定義される前順序のことである。上式で{x}¯{\displaystyle {\overline {\{x\}}}}は一元集合{x}閉包である。(なお、PT0空間であればspecialization preorder は半順序であることが知られている。)

以上の対応関係により、集合P におけるアレクサンドロフ空間としての構造とP 上の前順序は1対1対応する。

specialization preorderはアレクサンドロフ空間でなくとも定義可能であるが、アレクサンドロフ空間でない位相空間上ではspecialization preorderに対して上方集合でない開集合も存在する。(なおこの場合でも開集合は常に上方集合である)。したがって前述したような、上方集合を開集合とする位相を考えても元の位相は復元できない。

実数体における例
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実数体(に通常の順序をいれたもの)を前順序集合と見なすことで実数体にアレクサンドロフ位相を入れることができる。アレクサンドロフ位相における実数体上の開集合(すなわち上方集合)は以下のもののいずれかになる:

スコット位相

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上で述べたようにアレクサンドロフ位相は[a,){\displaystyle [a,\infty )} のような「下に閉じた」集合すらも開集合と見なしてしまう。アレクサンドロフ位相からこのような不自然さを取り除いたのがスコット位相である。順序集合P 上のスコット位相 (Scott topology) とは、以下の2条件を満たすP の部分集合O 全体の集合を開集合族とする位相である:

  1. OP は上方集合である
  2. P有向部分集合A で(A を自然に有向点族と見なしたときの)A の極限がO に入っていれば、A の点でO に含まれるものが存在する

後者の条件は内点概念の点列による特徴づけ(O の内点x に収束する点列はO と共通部分を持つ)に類似しており、この条件が「下に閉じた」集合を排除する。

よって実数体にスコット位相を入れた際、実数体上の開集合は以下のもののいずれかになる:

スコット位相を入れた順序集合をスコット空間といい、スコット空間からスコット空間への連続写像をスコット連続 (Scott continuity) という。順序集合P から順序集合Q への写像f がスコット連続である必要十分条件は以下の性質が成り立つことであることが知られている:

  • P の任意の有向部分集合A に対し、AP 内の上限を持てばf (A )もQ 内の上限を持ち、supf (A) =f (supA ) が成立する。

スコット連続な関数は順序を保つ。実際、xy ⇒ sup{x ,y } =x であるので、上述した条件よりsup{f (x ),f (y )}が存在し、しかも sup{f (x ),f (y )} =f (sup{x ,y }) =f (x ) となる。これはf (x ) ≥f (y ) を意味する。

なお、スコット位相と下方位相のいずれよりも強い位相構造の中で最弱のものをローソン位相英語版という。

ストーン双対性

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位相空間の開集合全体の集合は包含関係により順序集合と見なせる。位相空間が「sober性」という弱い性質を満たす時はこの順序構造のみで位相空間の構造が特徴づけられることが知られている(ストーンの双対性定理)。したがってsober性を満たす空間に話を限定すれば、点集合論に頼らなくても順序構造のみで位相空間論を展開できる(ポイントレス位相空間論)。

直積集合上の順序

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2つの半順序集合(の台集合)の直積集合上の半順序としては次の三種類がある。

最後の順序は対応する狭義全順序の直積の反射閉包である。これらの三種類の半順序は、いずれも3個以上の半順序集合の直積に対しても同様に定義される。

上の順序線型空間に対してこれらの構成を適用すれば、結果として得られる順序集合はいずれも再び順序線型空間となる。

  • N × N 上の直積狭義順序の反射閉包
    N ×N 上の直積狭義順序の反射閉包
  • N × N 上の積順序
    N ×N 上の積順序
  • N × N 上の辞書式順序
    N ×N 上の辞書式順序

圏としての順序集合

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任意の半順序集合(および前順序集合)は、任意の射集合が高々一つの元からなると見なすことができる。具体的には、射の集合をxy ならばhom(x,y) = {(x,y)}(それ以外の場合は空集合)とし、(y,z)∘(x,y) = (x,z) と定義する。2つの半順序集合が圏として同値となるのは、それらが順序集合として同型であるときであり、かつその時に限る。半順序集合に最小元が存在すればそれは始対象であり、最大元が存在すればそれは終対象となる。また、任意の前順序集合はある半順序集合に圏同値であり、半順序集合の任意の部分圏は同型射について閉じて英語版いる。

半順序集合からの函手、すなわち半順序圏で添字付けられた図式は、可換図式である。

その他

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関連項目

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脚注

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注釈

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  1. ^ガーレット・バーコフにより提唱された用語[1]
  2. ^原理的には半順序集合であっても同様の概念を定義できるが、本稿の英語版をはじめ、筆者[誰?]が調べた範囲[要文献特定詳細情報]では全順序集合に対してのみ order topology を定義しているため、ここでは全順序のみに話を限定した。
  3. ^実数体でなくとも上極限位相と下極限位相を考えることができるが、これも実数体以外に対してこれらの位相を定義した文献が見つけられなかったので、ここでは実数体のみを対象にした。

出典

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  1. ^Birkhoff, Garrett (1948). Lattice theory (Revised ed.). American Mathematical Society. p. 1, 脚注1 
  2. ^花木 章秀 (2021年1月22日). “集合論 信州大学理学部数学科 講義ノート 2020 年度後期 (2021/01/22)”. 2022年3月17日閲覧。
  3. ^Ward, L. E. Jr (1954). “Partially Ordered Topological Spaces”. Proceedings of the American Mathematical Society 5 (1): 144-161. doi:10.1090/S0002-9939-1954-0063016-5. 
  4. ^Jech, Thomas (2008) [originally published in 1973]. The Axiom of Choice. Dover Publications. ISBN 0-486-46624-8 

参考文献

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この節には参考文献外部リンクの一覧が含まれていますが、脚注によって参照されておらず、情報源が不明瞭です 脚注を導入して、記事の信頼性向上にご協力ください。2016年1月

外部リンク

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