成長の限界 (せいちょうのげんかい、原題:英語 :The Limits to Growth 〈英語圏で多用される略称はLTG 〉)とは、ローマクラブ が資源と地球の有限性に着目し[ 3] 、マサチューセッツ工科大学のデニス・メドウズ を主査とする国際チームに委託して、システムダイナミクス の手法を使用してとりまとめた研究で[ 4] 、1972年に発表された[ 注 1] 。コンピュータを用いた再現手法 (英語版 ) を援用して、経済 と人口増加をモデル化し有限な資源の供給と対照した[ 6] 。「人口増加 や環境汚染 などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らしている[ 7] 。
以下の文は著名である。
これは時系列で考えると「人は子供が生まれてその子供がまた子供を生むので「掛け算 」で増えていくのに対し、食料はある土地では年に1回それも同じ量しか生産出来ない、つまり「足し算 」になるという概念に基づく[ 注 2] 。
なお、この概念をトマス・ロバート・マルサス (『人口論』)が論じた時点では肥料 は伝統的な有機質肥料 が中心であり、単位面積あたりの農作物の収量は増え続ける人口に追いつかず、人類は常に貧困 に悩まされるという現象は自明であったが[ 11] 、1900年以降にハーバー・ボッシュ法 などで化学肥料 が安定供給されたことにより克服された[ 11] 。
本書で述べた予測結果と現状の比較は、例えば産業技術総合研究所は鉱物資源 について「主要国のベースメタル 、レアメタル の生産量と埋蔵量、可採年数」[ 12] などが継続的に調査されている[ 注 3] 。
World3モデルの標準の解析結果。原書『The Limits to Growth』に掲載。 研究は「World3 (英語版 ) 」というコンピュータ・モデルを採用し、地球環境と人間のシステム2種の相互作用の結果をシミュレーション しており[ 注 4] 、その基盤となった理論はメドウズの大学同僚のジェイ・フォレスター (Jay Forrester)教授が唱え[ 15] 、著書『World Dynamics』に述べた[ 16] ものである。
委託者のローマクラブに代わり、研究の成果は1971年の夏にモスクワ とリオデジャネイロ の国際会議で公表された[ 17] 。著者代表としてドネラ・H・メドウズ (英語版 ) 、デニス・メドウズ とヨルゲン・ランダース (英語版 ) の名前が記され、3名を含む寄稿者陣はウィリアム・W・ベーレンス3世 (英語版 ) (William W. Behrens III )を加えた研究者17名であった[ 18] 。この本は出版以来、日本語を含む30言語に翻訳されて累計販売部数はおよそ3000万部にのぼる[ 19] 。時間が経っても議論を巻き起こして、複数の後続の出版物が主題に採用してきた[ 20] [ 注 5] 。
続論は翻訳され、『限界を超えて (英語版 ) 』(1992年※ )[ 注 6] と『成長の限界 : 人類の選択』(2005年※ )[ 注 7] がある("※"=それぞれ和訳の発行年)。
共著者のヨルゲン・ランダース(スウェーデン語 :Jørgen Randers )は2012年に40年後の予測を『2052: A Global Forecast for the Next Forty Years (英語版 ) 』と題して出版した[ 32] 。ドネラ・メドウズは鬼籍 に入り、『成長の限界』の原著者デニス・メドウズとランダースはさらに10年を経た2022年に19名の寄稿者を得て著書『Limits and Beyond』を上梓している[ 注 8] 。
本書の中で、経済成長がもたらす資源・環境問題について、フランスの子ども向けのなぞなぞを用いて説明している[ 35] [ 36] 。
ある池があって、そこには水蓮があります。水蓮は1日に2倍に増加し、水蓮が池を覆い尽くすと水の中の他の生物はすべて窒息して死んでしまいます。いま、水蓮がその池の表面を半分覆い尽くすのに100年かかったとします。では、池の残りの半分を水蓮が覆い尽くすのに、あと何年かかるでしょうか。
答え
答えはもちろんあと1日です(100年ではありません)。
つまり、まだまだ大丈夫(半分覆うのに100年もかかったではないか)などと考えていたら、もはや手遅れになってしまいます。
ローマ・クラブ は、このなぞなぞで示されたような認識を基礎にして、世界中の人びとに一刻も早く対策をとるように警鐘を鳴らしている[ 35] 。
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洋書 主な執筆者や編者のアルファベット順。
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人物
アイレス, ロバート (英語版 ) アリエール, ヨハン・マルチネッツ (英語版 ) コスタンツァ, ロバート (英語版 ) ジャクソン, ティム (英語版 ) シューマッハー, エルンスト・フリードリッヒ ジョージェスク-レーゲン, ニコラス スパッシュ, クライブ (英語版 ) ソディー, フレデリック デイリー, ハーマン ノーガード, リチャード B. (英語版 ) ポドリンスキー, セルゲイ (英語版 ) ボールディング, ケネス E. 団体
カテゴリ
発行年順。
続刊、『成長の限界』(1972年)、『限界を超えて』(1992年)、『成長の限界 : 人類の選択』(2005年)の全3刊。(情報提供元: サピエ図書館資料検索) 大来佐武郎(著)、科学技術と経済の会編集部(編)「国際協力におけるローマ・クラブの役割」『技術と経済』第6巻10(通号69)、科学技術と経済の会、1972年10月、20-25頁、doi :10.11501/3300886 。 国立国会図書館デジタルコレクションNDLJP :3300886 、送信サービスで閲覧可能(13-15コマ)、掲載誌別題『Technology and economy』。公文俊平 著「「成長の限界」と今日の問題性 : 変革期の人間社会」、日本青年会議所 編『省資源日本の構図』ダイヤモンド社、1974年。doi :10.11501/11975433 。国立国会図書館書誌ID :000001150144 。 。東京都立大学都市研究委員会 編『都市研究関係文献目録』 昭和48年版、東京都立大学 都市研究委員会〈都市研究文献目録 ; 8〉、1974年10月。doi :10.11501/11917441 。 国立国会図書館デジタルコレクションNDLJP :11917441 、送信サービスで閲覧可能(41コマ、99コマ)茨城大学 農学部霞ケ浦研究会(編)「霞ケ浦」、三共出版、1977年7月、doi :10.11501/9583338 。 国立国会図書館デジタルコレクションNDLJP :9583338 、送信サービスで閲覧可能(95コマ、109コマ)河宮信郎「エントロピー入門 : 4 : 経済的「進歩」とエントロピー」『経済セミナー』第355号(日本評論社、1984年8月)国立国会図書館デジタルコレクションNDLJP :1413648 、国立国会図書館内限定(90-96頁、47コマ–)。 「REPORTS チェンマイ市のごみ処理事情(上)」『生活と環境』第35巻第6号(通号410)(日本環境衛生センター、1990年6月)国立国会図書館デジタルコレクションNDLJP :3443472/1/15 、送信サービスで閲覧可能(25-33頁、15コマ–)。 米沢 健「広域行政の新たな展開--福岡市を中心として」大阪市 政策企画室企画部総合計画担当 編『都市問題研究』第45巻第4号(通号508)(大阪市政策企画室企画部、1993年4月)送信サービスで閲覧可能(71-82頁、40コマ–)掲載誌別題『Journal of municipal problems』 三浦義雄 『滅びのアテナ : 自然と人間社会とのかかわり』北樹出版 、1998年。 『鉱物資源の動向 : 「成長の限界」から35年 』産業技術総合研究所地圏資源環境研究部門、2006-08 エラー: 日付が正しく記入されていません。(説明 ) 。「1970年以降の鉱物資源の動向についてまとめた資料です。レアメタルについては、クロム、コバルトなど15鉱物がとりあげられ、埋蔵量、生産量等が解説とともに掲載されています。後述のMineral Commodity Summariesが主な出典データです。」 ウィキメディア・コモンズには、
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