
M18 クレイモア地雷(M18 Claymore)は、アメリカ軍の使用する指向性対人地雷の1つである。
愛称の"クレイモア"は、スコットランドで使われた大剣にちなんだ名称である。


敵の歩兵らによる自陣への侵攻を阻止する待ち伏せ攻撃や、非装甲車両への攻撃に使用される。重量は1.6キログラム。価格は1基あたり$250である。
内側は比重が大きく強固な外殻で覆われており、ミスナイ・シャルディン効果によって鉄球のある前面に爆風が集中することで加害範囲に前方への指向性を持たせている。この為、本体には「FRONT TOWARD ENEMY」(こちら側を敵に向けろ)の文字が成形されている[1]。2箇所の信管挿入口の間にある凹部は簡易照準器になっている。約15cm後方から照準器を通して目視確認し、設置の位置や角度を調節して約50m先の地表へ指向させる。本体の背面には「BACK」(背面)や型式・名称がモールドされ、注意書きや製造ロットも印刷されている。
設置する際は、本体頂部にある2箇所の信管挿入口に起爆信管を1-2個装着する。目的により、有線リモコン操作によるM57起爆装置を用いた手動起爆、ワイヤートラップに繋げてワイヤーが引っ張られて起爆、時限装置による起爆などを選べるが、その内ワイヤートラップ連動の場合は地雷のように接近する人間を無差別に殺傷可能なため、対人地雷禁止条約の規制対象になる。リモコン操作の場合は、人間が起爆するため無差別殺傷に当たらず、条約規制対象外である。
湾曲した箱状のケーシングに樹脂でモールドされた700個の鉄球、その背面にC-4を内包する。起爆すると前方に向けて樹脂が砕けつつ放出され、鉄球が飛び散り、1基で広範囲に殺傷能力を発揮する。鉄球の最大加害距離は約250m、有効加害距離は約50mで、左右に60度、上下それぞれ最大18度の範囲に撃ち出される。鉄球1つあたりのエネルギー量はおよそ50-60ポンドに達し、強力な空気銃弾に相当する。爆風や二次的な破片は前方のみならず全周囲に及ぶおそれがある。そのため、設置時の立入禁止エリアは前方180度、そして側方・後方を含めた半径16m圏内で、遮蔽が必要な危険区域は加害範囲外の半径100m圏内である。
アメリカ軍においては本体1個と付属品一式、あるいは本体2個を収納できるキャンバス製の肩掛式ショルダーバッグであるM7 bandolierとセットで支給される。このショルダーバッグには使用方法の図解が縫い付けられている。バッグは収容能力が大きく、ある程度の防水性があるため、クレイモア地雷の使用後には雑嚢として重宝された。
採用されたM18A1は、折からのベトナム戦争で多用された。ベトコンや北ベトナム軍が鹵獲したM18A1を元に、ソビエト連邦はM18A1をコピーしたMON-50(英語版、ロシア語版)を開発し、改良型のMON-90(英語版、ロシア語版)や弾体を円形にして大形化したMON-100(英語版、ロシア語版)、MON-200(英語版、ロシア語版)を生産してアフガニスタン侵攻などで使用した。中華人民共和国も、M18A1をコピーした66式定向地雷を製造した。ユーゴスラビアでも、これらを元に類似した地雷であるMRUD(英語版、ロシア語版)を製造した。
2022年ロシアのウクライナ侵攻では、ウクライナ軍がドローンにM18クレイモア地雷搭載してロシア軍に対抗した[2]

似た外見の装備としてM5 Modular Crowd Control Munition(群衆制御弾薬)がある。M5は正面の外見こそクレイモアと同様の暗緑色だが、ゴムやプラスチックの弾を打ち出す非致死性兵器であり、区別のため裏面が明るい緑色で、四角錐の凹凸がつけられている。イラクにおいては、刑務所を警備するアメリカ空軍のM113装甲兵員輸送車が外部の攻撃や収容者の暴動に対処するためM5を車体側面に搭載しているが、外見の似たクレイモアを搭載していると誤認されたこともあった。
日本の陸上自衛隊が装備する指向性散弾も名称や仕組みや加害効果がクレイモアに似ているが、これはスウェーデンが開発した指向性対車両地雷であるFordonsmina 13(FFV 013)のライセンス生産品で、クレイモアより大型で威力が大きい。なお、日本が対人地雷禁止条約を批准したため、指向性散弾は規制対象外にするために、遠隔操作のみに限定されている。
本体