Movatterモバイル変換


[0]ホーム

URL:


コンテンツにスキップ
Wikipedia
検索

アルシン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

アルシン

  1. ヒ素の水素化物。本稿で詳述する。(英語:arsine)
  2. 帝政ロシアにおける長さの単位。(英語:arshin)。アルシン (単位)を参照。
  3. カナダのプロボクサー、ヨアキム・アルシン

アルシン
Skeletal formula of arsine
Skeletal formula of arsine
Ball-and-stick model of arsine
Ball-and-stick model of arsine
Spacefill model of arsine
Spacefill model of arsine
  ヒ素, As
  水素, H
物質名

Arsenic trihydride
Arsane
Trihydridoarsenic

別名

Arseniuretted hydrogen,
Arsenous hydride,
Hydrogen arsenide
Arsenic hydride

識別情報
3D model (JSmol)
ChEBI
ChEMBL
ChemSpider
ECHA InfoCard100.029.151ウィキデータを編集
EC番号
  • 232-066-3
Gmelin参照599
KEGG
RTECS number
  • CG6475000
UNII
国連/北米番号2188
  • InChI=1S/AsH3/h1H3 
    Key: RBFQJDQYXXHULB-UHFFFAOYSA-N 
  • InChI=1/AsH3/h1H3
    Key: RBFQJDQYXXHULB-UHFFFAOYAH
  • [AsH3]
性質
AsH3
モル質量77.9454 g/mol
外観無色の気体
匂いかすかに、ニンニクのような
密度4.93 g/L, 気体; 1.640 g/mL (−64 °C)
融点−111.2 °C (−168.2 °F; 162.0 K)
沸点−62.5 °C (−80.5 °F; 210.7 K)
0.2 g/100 mL (20 °C)[1]
0.07 g/100 mL (25 °C)
溶解度クロロホルム、ベンゼンに溶ける
蒸気圧14.9 atm[1]
共役酸アルソニウム英語版
構造
三角錐
0.20 D
熱化学
標準モルエントロピーS223 J⋅K−1⋅mol−1
標準生成熱fH298)
+66.4 kJ/mol
危険性
労働安全衛生 (OHS/OSH):
主な危険性
極めて毒性が高い、爆発性、引火性、潜在的な職業性発癌物質[1]
GHS表示:
可燃性急性毒性(高毒性)経口・吸飲による有害性水生環境への有害性
Danger
H220,H330,H373,H410
P210,P260,P271,P273,P284,P304+P340,P310,P314,P320,P377,P381,P391,P403,P403+P233,P405,P501
NFPA 704(ファイア・ダイアモンド)
引火点−62 °C (−80 °F; 211 K)
爆発限界5.1–78%[1]
致死量または濃度 (LD, LC)
2.5 mg/kg (静脈)[2]
  • 120 ppm (ラット, 10 分)
  • 77 ppm (マウス, 10 分)
  • 201 ppm (ウサギ, 10 分)
  • 108 ppm (イヌ, 10 分)[3]
LCLo (最低致死濃度)
  • 250 ppm (ヒト, 30 分)
  • 300 ppm (ヒト, 5 分)
  • 25 ppm (ヒト, 30 分)[3]
NIOSH(米国の健康曝露限度):
TWA 0.05 ppm (0.2 mg/m3)[1]
C 0.002 mg/m3 [15-分][1]
3 ppm[1]
関連する物質
関連する水素化物アンモニア
ホスフィン
スチビン
ビスムチン
特記無き場合、データは標準状態 (25 °C [77 °F], 100 kPa) におけるものである。
☒N verify (what is ☒N ?)

アルシン英語:arsine)とは、化学式が AsH3 と表される、ヒ素水素化合物である。水素化ヒ素英語:arsenic hydride)や、ヒ化水素 (英語:hydrogen arsenide) とも呼ばれる。

性質

[編集]

アルシンの化学式はAsH3であるため、その分子量は、77.95である。アルシンの常圧における融点は-116 ℃、沸点は-62 ℃なので、常温常圧では気体として存在する。なお、気体のアルシンに色は無い。

立体構造アンモニアに近いが、水素の結合角はアンモニアのそれよりも小さく直角に近い。極性溶媒に溶け易く、有機溶媒に溶け難い。しかし、窒素の電気陰性度が3.0のアンモニアとは異なり、ヒ素の電気陰性度は2.0なのに対して、水素の電気陰性度は2.1と、極性が弱いためアルシンは水素結合を作らない。

アルシンは還元作用を示し、例えば、硝酸銀水溶液に通ずるとを遊離する。なお、その標準酸化還元電位は以下の通りである。

As +3H+ +3e=AsH3 ,{\displaystyle {\ce {As\ +3H^{+}\ +3{\mathit {e}}^{-}=AsH3\ ,}}}E º = -0.225 V
2AsH3 +12AgNO3 +3H2O12Ag +As2O3 +12HNO3{\displaystyle {\ce {2AsH3\ + 12AgNO3\ + 3H2O -> 12Ag\ + As2O3\ + 12HNO3}}}

濃厚な硝酸銀水溶液では、ヒ化銀を含む黄色の複塩 Ag3As·3AgNO3 が沈殿する。このように、そもそも還元性を示す物質なので、強力な酸化剤とは、爆発的に反応する。したがって、引火し易く、爆発に至る場合もあるので、取り扱いには注意を要する[注 1]

なお、酸素との反応、すなわち、燃焼すると、及び三酸化ヒ素を生じる。

そもそもアルシンは比較的不安定な化合物であり、熱・光・水分によって分解され、ヒ素と水素を生じる。

毒性

[編集]

ヒトに対してアルシンは猛毒であり、アメリカ合衆国産業衛生専門家会議英語版イタリア語版(ACGIH)の勧告によるアルシンの許容濃度は、時間加重平均濃度にて 0.005ppmである。アルシンを大量に吸入した場合、血液・腎臓に影響が出て、最悪の場合には死に至る。

アルシンの曝露された結果の症状は、数時間から数日遅れて現れる場合もあるため、その間は医学的な経過観察が必要とされる。

合成

[編集]

例えば、ヒ化カルシウム希硫酸を作用させると発生する。

Ca3As2 +3H2SO42AsH3 +3CaSO4{\displaystyle {\ce {Ca3As2\ + 3H2SO4 -> 2AsH3\ + 3CaSO4}}}

この合成法によって合成したアルシンは、ニンニクに似た特徴的な臭気を持つとされるが、このニンニク臭は、不純物のテルルによる匂いだとも言われる。

また、ヒ素を含む試料に、触媒として亜鉛を加えて、そこに希硫酸を作用させるとアルシンが発生する。このようにして発生させたアルシンを、水素ガスと共に燃焼させて、その炎を冷たいガラス、または、磁製皿に触れさせると、単体のヒ素が付着し、光沢のある「ヒ素鏡」ができる。これはマーシュ法と呼ばれるヒ素の検出法の1つである。

なお、これは積極的な合成法ではないものの、シェーレグリーンと呼ばれる顔料を、カビバクテリアが分解すると、アルシンが発生し得る。

用途

[編集]

ヒ化ガリウム(GaAs)やヒ化インジウム(InAs)等の化合物半導体の原料として重要である。アルシンを原料としての半導体製造においては、有機金属気相成長法(MOCVD)やガスソース分子線エピタキシー法(GS-MBE)が用いられる。原料ガスとしてアルシンを管内に送り込む方法で、均等に層を積み上げる成長工程を担う[5]

有機アルシン

[編集]

有機化学において、水素化ヒ素を親化合物とし、一般式が RR1R2As(各置換基は H または有機基)と表される一連の誘導体も、俗に「アルシン」と呼ばれる。トリフェニルアルシン((C6H5)3As)などは、配位子としての用途がある。

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^危険性とその対処については国際化学物質安全性カード[4]にまとめられている。アルシンのTLV(暴露限界)は、0.005 ppm(TWA)である。

出典

[編集]
  1. ^abcdefgNIOSHPocket Guide to Chemical Hazards 0040
  2. ^Levvy, G.A. (1946). “The Toxicity of Arsine Administered by Intraperitoneal Injection”. British Journal of Pharmacology and Chemotherapy 1 (4): 287–290. doi:10.1111/j.1476-5381.1946.tb00049.x. PMC 1509744. PMID 19108099. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC1509744/. 
  3. ^abArsine”. 生活や健康に直接的な危険性がある. アメリカ国立労働安全衛生研究所(NIOSH). 2026年2月12日閲覧。
  4. ^ICSC 0222 - アルシン”. 2024年1月5日閲覧。
  5. ^MOCVD装置”. 大陽日酸. 2016年9月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年11月14日閲覧。

関連項目

[編集]
二元化合物
多元化合物
オキソ酸
カテゴリカテゴリ
As(III)
As(III,V)
As(V)
ヒ化物
典拠管理データベース: 国立図書館ウィキデータを編集
https://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=アルシン&oldid=107050293」から取得
カテゴリ:
隠しカテゴリ:

[8]ページ先頭

©2009-2026 Movatter.jp