Movatterモバイル変換


[0]ホーム

URL:


hamachanブログ(EU労働法政策雑記帳)

フォト
2025年12月
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031   
無料ブログはココログ

« 健康保険法には「哺育手当金」が残ったのはなぜか? |トップページ|スポットワークの系譜と今後の展望@『労働法律旬報』2025年12月上旬号 »

2025年12月 7日 (日)

マシナリさんが拙著を2冊まとめてガッツリ書評

マシナリさんが久しぶりにブログを更新しておられて、なんと拙著を2冊まとめて書評していただいております。

互いに補助線となる良書(両書)

Asahishinsho_20251207172601 まず、昨年の『賃金とは何か』についてですが、

実は『賃金とは何か』は発売後すぐに購入して雑ぱくな感想をメモしていましたが、それはどこかに散逸してしまったので改めて読み返すと、終章に出てきて帯にもでかでかと書かれていて「上げなくても上がるから上げないので上がらない賃金」というパワーワードが本書の真骨頂だなと思います。それに先立つ各章は、いかにこの呪文が日本型雇用の一部でありながらその運用に大きく影響しつつ頑健なシステムとして形成され、その結果どのような問題を抱えてしまったのかを丁寧に解き明かすために書かれたようなものと理解することもできそうです。

Asahi2_20251207173201 そしてこの賃金の問題と密接不可分なのが、もう一冊で取り上げた管理職問題になります。

日本型雇用においては新卒で「白地の石板」として採用されて異動しながら職能資格を積み上げてきた正社員の進化形が管理職であって、その進化の境目は極めてあいまいです。日本型雇用の正社員はポケモンよろしく全く違う形態に「進化」(まあ生物学的には変態でしょうけれども)するのではなく、新卒でヒラの正社員として入社し、何年かまっとうに勤務を継続すれば主任とか係長の役職が付いて、同じように課長とか部長とかの「管理職」となっていくような進化を遂げます。もちろんその前提として、自分の担当業務に加えて、平社員のうちから新卒一括採用で毎年入社してくる後輩に対して指導を行うことを「管理的」業務の経験として評価するシステムがあります。つまり、新卒から管理職に至るまで全員が評価対象となるシステムがあり、そこで職能資格が上がったと評価されると管理職に進化=昇進するのが日本型雇用であり、その運用は経験年数による年功的昇進となっているわけですね。

1年を隔てて出した2冊の本が、「散逸」のせいとはいえ、こうして有機的につながった形で論じられるのは嬉しい限りです。

日本型雇用的「管理職」が職種として認識されうる経路として過半数代表者制を法定するというのは有効そうですが、「罰ゲーム」「無理ゲー」化している管理職への風当たりは強くなることはあっても弱くなることはなさそうにも思えるところでして、その現状を考える上で歴史的経緯を学ぶために必読の書であることはいうまでもありませんね。この分野になじみのない方も朝日新書から続けて刊行された良書(両書)を互いに補助線として読まれるとよろしいのではないかと思うところです。

ありがとうございます。

 

 

 

 

2025年12月 7日 (日)管理職の戦後史|固定リンク

« 健康保険法には「哺育手当金」が残ったのはなぜか? |トップページ|スポットワークの系譜と今後の展望@『労働法律旬報』2025年12月上旬号 »

コメント

ご紹介いただきありがとうございます。もちろんまとめて取り上げるつもりはなかったのですが、諸事情によりまとめてしまい恐縮です。賃金についてはややもすると会社単位の制度論に陥って会社が自由に決めるものという印象で語られがちですが、日本ではそもそも「経験年数で賃金が上がる」とか「上がる賃金に合わせて役職も連動しなければならない」という前提から自由な会社はほとんどないのが実情だと思います。本来は「業務に応じた職務」であるはずの管理職が「定期昇給する賃金に見合う役職」に様変わりする歴史的経緯があって、その賃金と昇格(管理職への道)との切っても切れない関係を考える上でこの2冊が絶妙な組合せになっているという印象でした。余力があれば個別の論点についても取り上げたいところです。

投稿:マシナリ |2025年12月 9日 (火) 14時25分

はい、よろしくお願いします。

投稿:hamachan |2025年12月 9日 (火) 21時42分

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 健康保険法には「哺育手当金」が残ったのはなぜか? |トップページ|スポットワークの系譜と今後の展望@『労働法律旬報』2025年12月上旬号 »


[8]ページ先頭

©2009-2025 Movatter.jp