本記事はこんな方におすすめ 極力ネタバレ無しで本作の魅力に触れてみたい おすすめの社会派ミステリー作品を探している 単巻完結の打海文三代表作から入りたい 『時には懺悔を』は探偵小説の衣をまといながら、夜更けの廊下の灰色や離れた台所で皿が重なる音、鍵を回すときの小さな引っかかりのような生活の粒子に指先を添え、真相のうねりよりも日々の段取りが読者の歩幅を決めていく。 導入部分は明確で、代理教官を引き受けた佐竹が受講生の中野聡子とともに旧同僚・米本の事務所へ実習に入るが、鍵の向こうで遺体と出会い、現在の殺人と年を隔てた障害児誘拐の線が静かに干渉しはじめる。なお、本書は単巻完結で予備知識は不要だ。 私…