仲間と鶴見半島のシシ垣のフィールドワークに着手した。前回は梶寄浦、今回は中越浦を囲うシシ垣を対象にした。半島にはシシ垣を観察出来る遊歩道が先端と中程の二ヶ所に整備されているがその全貌を知るには不十分である。 1973年に安部弥右衛門氏が半島のシシ垣に関する地図付きの記録を残している。地図に関しては思い出しながらの手書き地図なので正確性を欠いているが、位置や特徴を記しているのでシシ垣調査には知る限り唯一の資料である。地元の方々にお聞きしても殆どその記憶に乏しい。その意味ではフィールドワークは未踏のシシ垣探検隊になったかのような高揚感がある。 シシ垣は各集落（浦）を囲っている。沈降海岸（リアス式海…

今月に入ってから、身辺がにわかに慌ただしくなり、趣味のバイクを終日どっぷり楽しむことが難しくなってしまった。まぁ、これからだんだん寒さもましてくるだろうから丸一日乗ることもないとは思うのだが‥‥。 さて、12月に入り、「冬もいよいよ本番」と言いたいところだが、先日の週末、日中は日差しも眩しく暖かな休日となった。となると、バイクに乗って出かけたくなる。午前中、用件をこなし、早やる気持ちを抑えつつ準備をする。たかがバイクを走らすだけなのだが、出発までの準備がいろいろある。前もってやっておけばなんのことはないのだが、突然乗りたくなったときなどは結構慌ててしまう。バッグの中に、「車検証」「パンク修理材…

お大師様（空海）は「真言密教の根本道場」となる伽藍建立の地を求めて番匠川の河谷を遡っていた。806年のことである。正面に遠く「米花山」が見える長い土手を辿り、やがて「尾岩越」を越えてこの村に入って来た。因みに空海の姓は「佐伯氏」で父は讃岐の豪族佐伯田公である。この地を訪れる謂われ無しとは言い切れないのである。 峠を降りて来ると、お大師様は、よっこらしょ、と道脇に腰を下ろして休息を取った。腰につけたひょうたんの水筒の水が実に美味い。被っていた托鉢笠を側の枝木に掛けると、神々しい尊顔に柔らかな朝日が差し込んでまるで後光がさすようだった。後年、この集落を「笠掛」と呼ぶようになった由縁である。 お大師…

「奥ノ院、佐渡ケ山穴殿上有名ナル行場アリ」 「佐渡ケ山にある奥の院（石灰岩の洞穴内）」の暗闇で友人が「般若心経」を唱え始めた。およそお経らしくない響きだったが最後まで唱え終えたのには驚いた。般若心経は大乗仏教の根本思想が凝縮されている262文字の短い経典である。今は介護施設に移った母親が毎朝仏前でお経を唱えていたが、あれは般若心経だったのだ。父祖の時代、人々は日常的に仏前でお経を唱え信仰心を深めて来た。友人はその稀有なる残党だったのだ。 番匠川の河谷には弘法大師（以下、お大師様）伝承が多い。お大師様伝承は全国至る所にあるが、今回、フィールドワークを通じてこの地のお大師様伝承の背景を考えさせられ…

あの錆びついた鉄の階段は、何の為に長く伸びるシシ垣のその一か所だけに掛けられてあったのだろう。以前、そう思った事をおばちゃんから聞かされるまですっかり忘れていた。 鶴見半島先端側の丹賀浦と梶寄浦にあるシシ垣を訪問するのは四度目になる。それぞれのシシ垣はかつての段々畑を囲って、尾根とその両端から海に降りていく竪堀で築かれている。今回は鶴御崎側から梶寄浦まで尾根伝いに戻って西端の竪堀から海まで降りた。シシ垣を初めて訪問する後輩と二人連れである。 早朝、後輩の軽トラで鶴御崎に至るまで海岸道のあちらこちらに多くの車が駐車していた。宮崎、熊本、久留米、島根と遠来の県外ナンバーが目につく。岩場には競うよう…

「お前のところの柿は渋くて食えん」と以前叔父に言われていた。だからてっきりそれは渋柿だと思っていた。 友人が干柿を作ったと自慢げに写真を送って来た。もっとも自分は柿は嫌いで干柿も食わぬと言う。「柿の木に登る奴はバカだ」と父親によく言われたとも添えていた。それが柿が嫌いになった理由でもないだろうが。柿の木は折れやすいので危険防止の為にそのような言い回しとなったのだ。 それなら一丁自分も干柿でも作って見るかと思い立った。昔、親父が裏の畑に三本の柿の木を植えたが生育は芳しくなかった。実の付き具合が悪く去年までは収穫するでもなく放置しておいた。今年、一本は殆ど実をつけず仕舞いだったが二本だけはそこそこ…

佐伯フルマラソン大会が11月16日に開催された。制したのはランナーとしてではなく運営者側の誘導員としての参加人数においてである。市内一の”寒村”から13名が参加し一大勢力（22%）となった。メンバー一同はコースの辻々に立ち交通誘導並びに応援役として役割を果たした。誇ってもいいような気がするのである。 あらためて日本のマラソン熱を思った。年間を通じて数えきれないほどマラソン大会が開催されている。大分県だけでも年間34大会（内、フルマラソン3、ハーフマラソン12）、佐伯マラソンと同じ開催日の11月16日だけでも全国で59大会（内、フルマラソン5、ハーフマラソン17）が開催されていた。11月は気候も…