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『日経ビジネスアソシエ』連載: 肉食系教養講座 フェルディナントヤマグチ x 山形浩生 (2010-2011)

日経ビジネスアソシエは、日経ビジネスのもうちょっと軽い話を扱う、まあ日経ビジネスのディフュージョンブランドみたいなもの。確か宴会でフェル山さんと編集の方とがいて、なんかやろうぜってな話で決まったんじゃなかったっけ。柳瀬さん経由の話だったかな? 毎回、テーマとなる本を決めて、山形とフェルディナントヤマグチが雑談するという趣旨。どちらもそれなりに慣れているので、本の話からビジネスの話から経済から趣味から、いろいろ風呂敷が広がって楽しゅうございました。
主に日経ビジネス編集部にでかけて対談した。あとフェルヤマ邸でやったのも何回かあったな。隔週なので結構忙しかったんだな。でも当時は忙しかったので、あまり気にもならなかった。本は半分くらいが編集部がお題で出したんだっけ? 他に山形の推薦や共通の知り合いからふられたネタ、みたいなのもあった。美術のやつとか。山形がだいたいどんな本を提案しても、ホイホイ受け入れてもらえたが、唯一ダメだったのは、山本耀司のファッション哲学みたいなやつで、さすがにフワフワしすぎていた。フェル山ファッション談義を聞きたかったんだが……
しかし、我田引水ではあるけれど、みんな本を読んで他の人とこの程度の雑談交わしてくれるようになるといいんだけどね。別にその本自体への賛成反対とかはどうでもよくて。すぐに「わかった」「わかんなかった」「好き」「嫌い」で止まってしまうけれど、それをだれかと話すと別の面が見えてくるところもあるんだよなー。だれかが言っていたが、何かをSNSなんかですら書いてしまうと態度が決まってしまい、それに自分が縛られてしまうんだけれど、ぼやーっとした段階で雑に話ができると、いろいろ柔軟に考えられるし、それで漠然としていた自分の認識や態度も揺れ動く。そういう場がもっとあると、出版業界全体にとってもいいんだろうね。その一方で、どっかでそれを書きだして見て、結局自分はどう思うのか、というのを整理するのも重要ではあるんだけれど。
全20回か。最後は、担当してくれた編集者が栄転して異動になったことで、連載もおしまい。
- 第1回:サイド『非才』——才能は幻想だ! (2010/07/20号)
- しょっぱなから自分の訳した本のヨイショでアレですが、サイドの非才。努力か才能かという話で、断然努力だ、という本だが、結構フェル山さんが真面目にのってくれておもしろかった。
- 第2回:『ゲーム理論で不幸な未来が変わる!』——ゲーム理論で未来を変える? (2010/09/02号)
- ゲーム理論の話というより、相手のインセンティブを考えろ=弱点を突け、みたいな話に落ちているが、まあ結構そういう話ではあると思う。
- 第3回:広瀬隆『資本主義崩壊の首謀者たち』——陰謀が世界経済を狂わせたのか? (2010/09/20号)
- これはたぶん編集部推薦かな。きちんと罵倒書評もやったという実例。広瀬隆だからすべてロスチャイルドだが、暴落がロスならそれまで上がったのもロスかよ、という話。まじめな陰謀論批判。
- 第4回:『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』——現実歪曲フィールド! (2010/10/05号)
- そうだ、ハノイでiPhone盗まれた直後だったんだ。ジョブズ絶賛でもなく、いろいろ雑な話をしている。
- 第5回:サンデル『これからの「正義」の話をしよう』——こんな正義を考えるのはつらい (2010/11/02号)
- サンデルについて、言ってることはわかるんだけど、それをつきつめ始めると結局どんどんわからなくなるし息苦しいよというのを山形がブツクサ言っていて、フェル山氏がバーのマダム的にお話を聞いてくれる回。
- 第6回:ルイス『世紀の空売り』——金融危機の実話 (2010/11/16号)
- 『世紀の空売り』は超おもしろい話なんだけど、最後にきちんと予想を当てたのにみんなにハブられる主人公がかわいそうなのよね。最後のゼロ金利は、まだ白川時代か。山形はそこで思うところあったはずだが、何も加筆はしなかった。
- 第7回:レヴィット&ダブナー『超ヤバイ経済学』——世の中を見る目がやばくなる (2010/12/07号)
- ラストのインド人のちんこネタ、フェルヤマさんが本当に電話してたのは覚えているが、答が何だったのかはあまり記憶がない。本当のところどうなのかね。
- 第8回:『全国工場見学ファイル』——工場に行かなきゃわからない (2011/01/06号?)
- 工場見ないで製造業の話をするやつは詐欺。フェルヤマさんも、車も半導体も見てるのでえらい。山形は途上国の場末工場ばかりだけど。
- 第9回:山口裕美『観光アート』——現代アートの価値 (2011/01/04号)
- 山口裕美さん元気かなあ。この頃はまだ直島には行っていなかったけれど、その後いった。よくできている。アート話って、スノッブになりがちで嫌がられるかと思ったがフェルヤマさんが、普通に話に応じたのでびっくりした面はある。
- 第10回:現代アート special guest 山口裕美 ——価値観で作家に投資 (2011/01/18号)
- 前回の続きみたいなもの。なお、消してある写真は使用許可がおりなかったもの。実際の紙面では別の写真になった。
- 第11回:『Facebook:若き天才の野望』——SNSの未来 (2011/02/15号)
- 当時はまだSNSは、ミクシィくらいでFacebookは新興でしたねー。贈与経済との関連でフェイスブック&ザッカーバーグを語る話はおもしろいんだけれど、これを書いている2025年現在、トランプに露骨にすり寄るいまのザッカーバーグ見てその名残がどこまで見られるか。
- 第12回:近藤正高『新幹線と日本の半世紀』——未来への仕分けは慎重に (2011/03/01号)
- インフラ輸出、世界銀行からの融資、その他自分の持ちネタをたくさん出せたおもしろい回ではありました。
- 第13回:『ホーキング 宇宙と人間を語る』——「事実」「実在」のあやふやさ (2011/03/15号)
- のっけからフェルヤマさん、泣きが入った。それでもなんとか話を成立させてくれたのはありがたいところ。ほんと、なんでこの本がそんなに売れたのかはよくわからないところ。
- 第14回:リドレー『繁栄』——訳知り顔の悲観論に鉄槌を (2011/04/05号)
- 人類進歩するよ。危機があっても一時的なものよ、という楽観論のリドレー本。そのテーマをなぞっていると対談が終わったので、いいのではないでしょうかー。
- 第15回:震災と復興関連の数冊——判断停止ではいけない (2011/04/19号)
- 震災直後の自粛ムードの中で、まったく意に介さずに通常営業させてくれて感謝。原発の問題、危機での判断の仕方、復興計画まで、よくこれだけ詰め込んだ感じ。
- 第16回:『ホリエモンの宇宙論』——ゲーム理論で未来を変える? (2011/06/07号)
- ホリエモンのロケット談義。この頃、「オレはホリエモンの右腕でその宇宙事業の画策をしている」という人に会ったなあ。この本も、その中で民間事業として宇宙開発やるべきという指摘に注目したフェルヤマさんも、2025年現在にSpaceXの躍進みるとえらいねえ。
- 第17回:辛酸なめ子『女子校育ち』——special guest 辛酸なめ子 (2011/06/21号)
- これはおもしろい本なんだけど、なんでここで採りあげようという話になったんだっけ。二人とも知り合いで「おもしろい本だ」→じゃあ著者も呼ぼう、的なノリだったかな。
- 第18回:ハーツォグ『それでもぼくらは肉を食う』——いい加減な正義 (2011/07/05号)
- 恥知らずな訳書のヨイショだが、この連載のタイトルからして採りあげないわけにはいかないでしょう。いまにして思えば、もっと実際の肉の話をしてもよかったかも。でもなかなか。
- 第19回:タリー他『子どもが体験すべき50の危険なこと』——未来への準備 (2011/07/19号)
- これは本自体楽しいし、途中から(いや最初から) 自分がやったヤバいこと自慢に走っておもしろかったわー。なんかもっとヤバいネタもかなりたくさん出たように思うんだが、記憶にありませーん。
- 第20回:横田『ユニクロ帝国の光と影』——覚悟して楽しく働きましょう (2011/08/02号)
- この本を読んでも、ぼくはむしろユニクロの優れたところが指摘されているだけで、そんな裁判で訴えるべき本とは思えなかったんだよね、という立場は今も変わらない。なお、「新連載開始予定」とあるけれど、2025年になっても実現はしておりません。残念!
- おまけ:日経アソシエ読書ムック巻頭コラム「すごい本」との出会い方 (2010/12月)
- 全体がどんなムックだったのかは、今となっては覚えていない。訳書をいっぱい紹介してもらえたのは幸甚。あと、言っていることが全然変わっていない。フォーティアン・タイムズの宣伝まで変わっていない。これは2025年に出た「翻訳者の全技術」でも言っていること。成長がないと見るべきか、あるいは昔からワタシは完成されていたとみるべきか。
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YAMAGATA Hiroo (hiyori13@alum.mit.edu)
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