このところ活況なニコニコ市場。一部では最強のマーケティングツールだと意見まで出ているが、その効果について疑問視している意見もいくつかある。その中の一つが「申し込みはネタであって実際に購入したかどうかはわからない」というものである。この意見に対する回答なのか、先日からニコニコ市場での実績数の表示が申込数から発送数に改められた。
このニュースを聞いた瞬間にこれを機に実際に購入したかの率を分析することを思いついてはいたのだが、あいにくとこのところ若干バタバタして手元に切り替え前の申込数データをキャッシュとしてセーブし忘れてしまった。週末にやっと時間が出来たので、まずは記憶に残っていた以下の2つの製品について調査した。
※上記にだけでなく今日のエントリーで用いた数字は、申込数は7月26日での数字、購入数は7月28日の昼頃に私が調べた数字である。
実のところ私もミキサー(しかも20万円もする)やごまあえの素というネタ系の商品を本当にAmazonで購入しているというのには懐疑的であった。ところがいきなりこの衝撃の事実をつきつけられて正直驚いた。あわてて捜し回ったところ、クローバー商会さんのところで7月26日時点でニコニコ市場の実績データ(出所は2ちゃんねるの模様)を発見したので、これを使って他の商品も調査した。
ゲームとアイマス関係音楽CDだけのデータになるが、以下の結果になる。
ゲーム系
アイマス系
さらに調査したところ、ニコニコ動画に「ニコニコ市場~誰だよこれ買ったの~」という動画を発見。そこに7月26日のデータがあったので、こちらの中から主にネタ系と思われる商品を追跡調査した。
数字が変更されたのが7/27なので1日分の差がありその分100%を超えているものがあるが、ナタやナイフといったスポーツ商品を覗けばおおむね高購入率だといって良いだろう。このデータを見る限りまず「申し込みはネタであって実際には購入前にキャンセルしているかもしれない」という冒頭の仮説は却下しても良いのではないだろうか。関連する「特に予約制の商品の場合、実際の販売日までに多数がキャンセルするのではないか?」という仮説については、現時点ではまだ検証できていないが、これはいくつか新商品が今週発売されるのでそれらの発売日での発送数を分析することで検証できると思っている。もっとも今の流れから考えると予約分のキャンセル率も相当低そうだ。
さて、ニコニコ市場というマーケティングツールに対する懐疑的な意見としては他に、「需要を創出していない(ニコニコ市場で購入しているような人はもともとニコニコが無くても購入していたのでは?)」という仮説や「コンバージョン率が悪い(ブログなどに比べるとクリック者の購入率が低い)」という意見もある。当然これらの仮説や意見についても引き続き検証を行う必要があるだろう。
しかしながら現時点での私の個人的意見としては、上記のPerfumeのCDやアイマス系の「THE IDOLM@STER MASTER ARTIST」群と「THE IDOLM@STER MASTERWORK」群での売上数の差を見る限り相当の需要創出効果を発揮していると考える。例えその需要が他の類似商品分の売上を横取りする形だとしてもだ。またもし需要創出効果が小さいとしても、あのようなオープンな場で販売数が公開されるということはそれだけで(他の人が買っているから買おうという心理効果面での)広告効果があるわけで、今までのような見えないところで売れているよりは販売側にとって嬉しいことだろう。
現時点でのニコニコ市場では、売上上位の商品は音楽やゲームが並び対象分野にかなりの偏りがある。とはいえ、ああいった形での広告や商品販促に一定の効果があることが分かった事は、今後ミドルメディアにおけるマーケティングを考えていく際には無視できないポイントではないだろうか。
参考にした記事
===2007/8/3 PM追記
このエントリーの内容については、引き続き米欄で追っかけているが、本日ITmediaのほうでも岡田記者による「この速さなら買える!――WiiよりXbox360が売れる「ニコニコ市場」」という関連記事が掲載されたのでリンクをしておく。
(以下、若干個人的妄想入ります)
で、実際に売れている製品を眺めていると、こういった効果を今最も生み出していそうなのはMAD動画系の作品だ。MAD動画には、未だ著作権問題がついて回っているが、このように作品の2次利用で先ほどのような経済効果が得られることが明確になれば、当然2次利用を厳しく取り締まるより、こうしたメリットを享受したほうがよいと考えてその方法を模索する権利者がこの先増えてくると思う。
そうなれば今のコマーシャルと同じようなビジネスモデルが成り立つ可能性がある。権利者はゲームのキャラクターや音楽、動画などを提供することで(芸能人のCM出演料と同じように)対価を受け取り、商品の販売元は売上を得る。販促用の動画は、既に創作活動と技術トレーニングの場となった動画サイトに住む職人達の能力を活用すれば、安価で高質なものを手軽に作れるので、今までのTVのCMより数桁やすいプロモーションが行えるはずだ。ついでにMAD作成職人の雇用創出効果もあるかも知れない、とまで書いたら書き過ぎか(爆)
具体例としては、「ごまあえ」というある食品の紹介動画がある。確かに現時点ではこの作品の中でBGMにある楽曲を使っていることは、著作権法違反の可能性がある。でもこの動画は(たぶん)この食品のイメージアップに寄与しているし、(少なくとも私には)元の楽曲の権利や尊厳を犯しているようには見えない。こうした作品を権利者と編集者と食品会社が同意して作成できて三者が幸せになるそんなインフラがこの先出来上がってくるのではないかとまで期待してしまうのだ。
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