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東京法律事務所blog

2022年05月

5月29日、国立ハンセン病資料館不当労働行為事件の都労委命令報告集会が開催されました。

 
私からは、都労委命令のあらましを報告しました。都労委命令全文は当事務所のウェブサイトに掲載されていますが、今回報告したレジュメから、命令のポイント部分を下記に引用しておきます。証拠によりいかなる事実認定がされたのか、ぜひ多くの人に知っていただきたいと思います。


 

1 事実認定のポイント

・館長によるハラスメントが存在していたことを認定(p712

・分会が結成されハラスメント中止など職場改善のために団交、組合ニュース発行などに取り組んだことを認定(p1215

・全療協(全国ハンセン病療養所入所者協議会)が、組合員らに対する嫌がらせが日常的に起こっていることを全療協ニュースで取り上げていたこと(p16)、日本財団の資料館運営について全療協から信頼が失われる事態となっていることを認定(p17

・組合が厚労省要請や記者会見を行い、それが報道され拡散されるなどしたことを認定(p2223

・笹川保健財団で実施された採用面接の内容を詳細に認定(p2326

・稲葉組合員による私物の回収について日本財団が被害届を警察に提出し、組合員3名について、防犯カメラ映像を確認し記録をつけることとし、日本財団の指示で笹川保健財団がそれを実施した事実を認定(p2729

2 判断のポイント

⑴ 両財団の関係

・日本財団と笹川保健財団は一体とまでは言えないが、設立経緯、人事、収入依存、会長の認識、そして資料館等の管理運営業務委託については応札検討依頼、技術提案書の提供などしており「極めて密接な関係」にある(p39

⑵ 日本財団の組合に対する受け止め

・全療協との信頼関係の回復が課題となっていた日本財団にとって、ハラスメント等の問題を指摘する組合の活動を全療協が支持していることは深刻な問題であった(p42

・組合が記者会見を行い赤旗が報道するなど、資料館運営への批判を広く外部に伝える組合の活動が日本財団にとって好ましくないものであった(p42

⑶ 笹川保健財団の採用試験・組合監視

・多面評価が「極めて不自然」であり、稲葉組合員・大久保組合員が低評価となる結果を得ようとする意図があった(p43

・笹川保健財団は、日本財団から稲葉組合員・大久保組合員の消極的な評価について情報提供を受けて採否の検討をした(p45

・笹川保健財団は、日本財団の指示に基づき、稲葉組合員、大久保組合員、田代組合員の行動記録をつけており、活動状況を監視しようとしていたとみるのが相当。

⑷ 結論

・組合活動について、「笹川保健財団が、日本財団とほとんど一体となって警戒し、資料館の管理運営業務の受託に当たっての採用試験の不合格という形式を装い、同人らを資料館から排除したもの」(p46

・「笹川保健財団は、稲葉及び大久保が、成田館長との関係が悪化したために、他の職員との関係も悪化して業務にも支障を来していたことに加え、同人らが、組合に加入して分会を結成し、成田館長や他の職員からのハラスメント問題を追及したり、それらを広く外部に訴える組合活動を展開したことから、同人らを資料館から排除しようと決意したとみるのが相当」(p47

 

 都労委の手続きにおいて、組合の提出した証拠は甲182号証までに至ります。組合員3名が力を合わせて大量の証拠を収集し、一つ一つの事実を立証していったことが、今回の勝利命令につながっています。

ところで、この間笹川保健財団は都労委命令を履行することなく、命令を不服として中央労働委員会に再審査申し立てをしました。

もっとも、都労委の救済命令は交付の日から効力が生じ(労働組合法27条の12・4項)、使用者は遅滞なくその命令を履行しなければなりません(労働委員会規則45条)。再審査申立てをしても救済命令の効力は停止されません(労組法27条の15)。

再審査申し立ては、命令を履行しない正当な理由にはなりません。笹川保健財団は違法行為を直ちにやめ、法律に基づき都労委命令を速やかに履行すべきです。また、管理運営の委託者である厚生労働省は受託者の違法行為を傍観するのではなく、笹川保健財団を厳しく指導すべきです。

 

※労働組合法

(救済命令等)

第二十七条の十二 労働委員会は、事件が命令を発するのに熟したときは、事実の認定をし、この認定に基づいて、申立人の請求に係る救済の全部若しくは一部を認容し、又は申立てを棄却する命令(以下「救済命令等」という。)を発しなければならない。

2 調査又は審問を行う手続に参与する使用者委員及び労働者委員は、労働委員会が救済命令等を発しようとする場合は、意見を述べることができる。

3 第一項の事実の認定及び救済命令等は、書面によるものとし、その写しを使用者及び申立人に交付しなければならない。

4 救済命令等は、交付の日から効力を生ずる。

 

(再審査の申立て)

第二十七条の十五 使用者は、都道府県労働委員会の救済命令等の交付を受けたときは、十五日以内(天災その他この期間内に再審査の申立てをしなかつたことについてやむを得ない理由があるときは、その理由がやんだ日の翌日から起算して一週間以内)に中央労働委員会に再審査の申立てをすることができる。ただし、この申立ては、救済命令等の効力を停止せず、救済命令等は、中央労働委員会が第二十五条第二項の規定による再審査の結果、これを取り消し、又は変更したときは、その効力を失う。

2 前項の規定は、労働組合又は労働者が中央労働委員会に対して行う再審査の申立てについて準用する。

 

※労働委員会規則

(命令の履行)

第四十五条 前条の規定により救済の全部又は一部を認容する命令につき命令書の写しが交付されたときは、使用者は、遅滞なくその命令を履行しなければならない。

2 命令を発した委員会の会長は、使用者に対し、命令の履行に関して報告を求めることができる。

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(挨拶する国公一般中本委員長)

弁護士の今泉です。

小部弁護士とともに取り組んでいた国立ハンセン病資料館不当労働行為事件で、5月9日、東京都労働委員会は、労働組合側勝利の命令を交付しました(都労委ウェブサイト→2不43 (tokyo.lg.jp) 命令全文は東京法律事務所ウェブサイトにアップしています)。
報道もされています。
ハンセン病資料館運営法人に救済命令 「組合員の不採用は不当」 | 毎日新聞 (mainichi.jp)
組合活動が理由の不採用は不当 都労委、ハンセン病学芸員 | 共同通信 (nordot.app)
組合活動が理由の雇い入れ拒否は不当 都労委が笹川保健財団にハンセン病資料館学芸員の雇用命じる:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
「パワハラ横行」の職場改善に意欲 雇い入れ拒まれた国立ハンセン病資料館の2学芸員会見:東京新聞 TOKYO Web (tokyo-np.co.jp)
ハンセン病資料館学芸員の不採用は不当労働行為 都労委が救済命令:朝日新聞デジタル (asahi.com)


この事件は、日本財団の運営する国立ハンセン病資料館の学芸員が、職場環境の改善を求めて労働組合を結成して活発に活動していたところ、2020年4月1日付で受託者が日本財団から笹川保健財団に切り替わる際に、笹川保健財団が組合員2名を不採用として職場から排除したという事件です。
 
都労委は、笹川保健財団による不採用を労働組合法違反の違法行為であるとして、組合員2人を2020年4月1日付けで資料館の職員として採用したものとして取り扱い職場に戻すこと、陳謝文を掲示することを笹川保健財団に命じました。

本日、組合と弁護団で以下の声明を発表しました。
笹川保健財団に都労委命令を履行させるため、労働組合は運動を強めていきます。
ぜひご支援をお願いします!

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厚労相記者クラブでの記者会見

※申立ての際の過去記事
日本財団・笹川保健財団を相手方とするハンセン病資料館不当労働行為事件、都労委で調査開始 : 東京法律事務所blog (livedoor.jp)

国立ハンセン病資料館不当労働行為事件・東京都労働委員会救済命令にあたっての声明

1 事案の概要

 本件は、国立ハンセン病資料館に長期に渡り勤務してきた学芸員らが、ハラスメントや労基法違反などが横行する職場環境の改善を求めて労働組合を結成し資料館の管理運営を受託者する日本財団に対し様々な要求をして活発に活動していたところ、202041日付での受託者の変更を契機に、笹川保健財団が労働組合の中心的な役割を担っていた組合員2名を不採用とした事案である。

2 東京都労働委員会命令の概要

 本命令(2022315日付命令・59日交付)は、日本財団と笹川保健財団の間に密接な関係が認められる本件においては、笹川保健財団による不採用が、従前の雇用関係である日本財団との関係において、組合員であることを理由とする不利益な取り扱いに当たるという事情が存在する場合には不当労働行為に該当するという判断基準を示した。

 その上で、資料館運営への批判やハラスメント問題等を広く訴える組合の活動は日本財団にとって好ましくないものであったこと、笹川保健財団の採用試験における多面評価の実施方法や組合員2名の不採用理由が極めて不自然なものであること、日本財団と笹川保健財団が資料館内の防犯カメラで組合員らの活動状況を監視しようとしていたことなどの事実関係を認定した上で、笹川保健財団が日本財団と一体となって組合活動を警戒し、採用試験の不合格という形式を装って組合員を資料館から排除したものと断じ、不採用は不当労働行為にあたると判断し、組合員の職場復帰と陳謝文の掲示を命じた(労組法7条1号違反)。

3 本件命令の意義

 判例上、採用行為については原則として企業の自由とされ(三菱樹脂事件・最高裁昭和48.12.12)、採用拒否は、それが従前の雇用契約関係における不利益な取扱いにほかならないとして不当労働行為の成立を肯定することができる場合に当たるなど「特段の事情」がない限り、労組法7条1号の不利益な取扱いに当たらないとされている(JR採用拒否事件・最高裁平成15.12.22)。この「特段の事情」の内容については、事例判断が積み重ねられているところであり、これまで認められた例としては、事業譲渡の際の雇入れ拒否の事例(ドリームアーク事件・京都府労委平成21.8.12)や請負から派遣に切り替えた際の採用拒否の事例(東リ伊丹工場採用拒否事件・兵庫県労委平成31.4.25)などがある。

不利益取扱いにあたる場合を限定的にとらえるこの最高裁判例は学説上厳しく批判されてきたところではあるが、本件は、この最高裁判例の枠組みを踏襲しながら、本件の受託者変更に伴う採用拒否について不当労働行為の成立を肯定できる「特段の事情」があると判断したものである。

公的施設の民間委託が進められる中で、現場の労働者は不安定な地位におかれる一方、声を上げにくい現実がある。そのような中で、職場環境の改善を求める組合活動を嫌悪した使用者が採用試験の不合格という形式で行った組合員排除について東京都労働委員会が厳しく断罪し、このような脱法的なやり方を許さない判断を示したことは、労働組合の活動による職場環境の改善を後押しするものとして重要な意義がある。

4 笹川保健財団は速やかに命令に従うべきである

 厚生労働省管轄の人権啓発の場で、管理運営団体による組合員排除の違法行為がなされたこと、そしてそれを東京都労働委員会が断罪したことは極めて重大であり、日本財団および笹川保健財団はこの命令を真摯に受け止めなければならない。また、人権尊重を謳う国立ハンセン病資料館でこうした問題が放置されれば、めざすべきハンセン病問題の解決にも支障をきたすことは明らかである。笹川保健財団は速やかに東京都労働委員会の命令に従い、組合員2名を職場に戻した上で、職場環境の改善を求める労働組合の要求に誠実に対応すべきである。

以上
2022510
                                    国家公務員一般労働組合国立ハンセン病資料館分会
同弁護団弁護士今泉義竜・同小部正治




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