地域医療機構・相模野病院パワハラ報復不当転勤事件勝利声明 2022年4月18日 全日本地域医療機能推進機構病院労働組合 (全地域医療JCHO労組) 2022年4月5日、5年6ヵ月もの長きにわたり全地域医療JCHO労組と地域医療機能推進機構本部が争ってきた『相模野病院パワハラ報復不当転勤事件』が、中央労働委員会において和解し、労組側勝利で終了しました。 5年6ヵ月に及んだ『相模野病院パワハラ報復不当転勤事件』に対し、長らく支援してくださった多くの皆様に、あらためて感謝申し上げます。 【経過】 1. 2015年(平成27年)当時、院長が労働基準法による宿日直許可を労働基準監督署長から受けることなく法律違反状態で病院労働者に「宿日直」として救急患者への対応をさせていた。 労組相模野病院支部は使用者との自主交渉で解決するように努力したが、院長が一向に解決しないため、相模野病院に勤務する嶋田泰久(やすなが)薬剤師(相模野支部書記長)が、相模原労働基準監督署に労基法第104条に基づく申告を行った。労基署は調査し同年11月11日に、病院の法人である地域医療機構・尾身茂理事長と大井田正人院長宛に「是正勧告書」と「指導票」を交付した。しかしこの後も院長が労基法違反を直さなかったため、翌年7月に労基署は2回目の是正勧告書を交付した。 2. 当時、相模野病院大井田院長らは、時間外労働及び休日労働(労基法第3 6条)に関する協定において、医師等の職種に通常の限度時間を大幅に超える「特別条項」の締結を画策していた。 一方、職員の健康に配慮し締結することに反対していた労組支部長を過半数労働者代表にさせないために「病院側の意を汲んだ職員」を対立候補者に擁立し激しい選挙戦が繰り広げられていた。残念ながら支部長は無記名投票で当選することができない状態となった。嶋田薬剤師はこの選挙においても支部長の勝利のために奮闘していた。 3. こうした状況のもと、2016年8月26日に嶋田氏本人には事前に何の打診もなく、相模野病院でやりたい放題をしたい院長らから、突然、東京高輪病院への転勤が通告された。 嶋田支部書記長は労組本部と相談し、理不尽な院長・機構のやり方は認められないとして、転勤拒否による解雇を避けながら、かつ、闘いを継続するために、「パワハラの報復転勤は認めないとの権利を留保する」との文書を院長に提出して、相模野病院在籍中の同年9月29日に全地域医療JCHO労組として不当転勤を不当労働行為として認定してもらうために東京都労働委員会に申立を行い、そして東京高輪病院に勤務場所を移して闘いを継続することにした。 なお、嶋田薬剤師・支部書記長は、社会保険病院時代において当時の内野直樹病院長から(当時の副院長は大井田正人氏)厚生労働省において売却が決定されていた川崎病院への「転勤」を強要されたり、病院の経営者が現在の地域医療機構に変わるときにも内野院長から新機構への「移行職員」名簿から排除され、中央の交渉で回復して移行した経緯があった。 このようにして、院長らは執拗に「病院側のいいなりになる支部」をも作ろうと画策していた。 4. 一方、全地域医療JCHO労組本部・嶋田支部書記長をはじめとする相模野支部・全国の支部・東京法律事務所の3名の弁護団・日本医労連で争議団を作り、反撃を開始した。 東京都労働委員会開催日には全国の支部から多くのなかまが支援傍聴に駆け付け、審議を見守った。様々なやりくりをして毎回の審議に参加した支援者の行動は、嶋田薬剤師・支部書記長や弁護団を勢いづけ、公益委員・労働者委員・使用者委員・都労委事務局へも労組の闘う姿勢をアピールした。また、毎回メール速報等で全国の仲間に報告・宣伝した。 中央要求書にも相模野事件の早期解決の要求を掲げ、中央団交等で解決を求めたが、機構本部は和解を拒否し続けた。 こうした闘いと審議が続く中で都労委から「和解」の話が提起され、労組側は和解案を提出したが、機構本部・院長らは都労委の和解には一切応じない姿勢を続けた。 5. 長い断固たる闘いの中で、2019年(平成31年)11月13日に都労委は、労働組合側「全部救済」の完全勝利命令を機構理事長・院長に交付した。機構本部・大井田院長らは、この都労委命令に従うのではなく拒否するために命令からわずか2日後に中央労働委員会へ都労委命令の取消を求めて再審査請求を申し立てた。なお、都労委段階の機構本部・院長ら側の弁護団3名が辞任したために、正式の再審査申立の理由書が再審査申立から数ヵ月も経ってから中労委に提出される始末であった。 6. 折しも2020年2月以降は新型コロナウイルス感染症の全国的まん延により、医療現場は極めて厳しい状態になり、コロナへの感染防止対策を取り組みつつ、中労委の審議を進めた。 中労委は、コロナ感染対策が必要な地域医療機構の状況も踏まえて当初から「和解解決」を提案してきた。これに対し、労組は和解を受けとめたが、機構本部は拒否を続け、都合11回の調査審議・大井田元院長と神守実一事務部長に対する証人審問を経て、和解に前向きな姿勢を見せ始めたものの、労組に対し「嶋田薬剤師(支部書記長)の転勤は不当労働行為ではなかったことを労使確認する」という非常識な文言の挿入にこだわり続けた。9回目の調査審議において機構本部は中労委から「和解書に『不当労働行為ではなかった』との記載はできない」と言われ、ようやく機構本部は「転勤は不当労働行為ではなかった」との文言を取り下げた。 こうした経緯を経て、2022年4月5日の第11回調査審議で和解案がまとまり、和解書を締結して5年6ヵ月に及ぶ相模野病院パワハラ報復不当労働行為事件は労組勝利で終了した。 【中央労働委員会の和解勧告書に基づく労組本部と機構本部の和解協定書の内容及び意義は次のとおりである】 ① 法人である機構(機構本部・地区事務所)・元院長らのパワハラ報復転勤の不当性を明らかにし機構に謝罪させたこと。 ② 人事権は機構の専権事項としてきた転勤について、転勤の有無については「職員個人の諸事情を考慮する」との内容を、機構本部理事長と全地域医療JCHO労組中央執行委員長とで、労使対等の関係で協定(約束事)を結んだこと。 ③ 相模野病院へ戻すことを大前提であると認め、嶋田氏の健康状態が整い次第、相模野病院で勤務し復帰プログラムを進めること。 ④ 労基法の申告(合法である法律行為)に対する報復転勤などの不利益扱いは、してはならないことを明確にしたこと。 なお、不当労働行為事件以前から闘ってきた過半数労働者代表選挙において今年の3月の選挙で支部長が苦節8年目にして当選となったことを全国の仲間に報告します。 この勝利和解の内容を活かし全地域医療JCHO労組は、引き続き地域医療を一層充実させるために労働条件の改善に向けて邁進するものです。 以上 |
<過去のブログ一覧>
2019年11月14日 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)による不当配転が不当労働行為として断罪される!-東京都労委が全部救済命令
2020年 3月 6日 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO、尾身茂理事長)の不当労働行為事件(不当配転)の中労委期日が延期となりました
2020年 8月13日 独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO、尾身茂理事長)の不当労働行為事件(不当配転)は期日続行~配転の不当労働行為性について考える~
2020年 9月26日 不当配転からもうすぐ4年~独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO、尾身茂理事長)は嶋田さんを直ちに相模野病院に戻せ!~
2020年11月27日 来年こそ嶋田さんは相模野病院に戻るぞ♪~独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO、尾身茂理事長)の不当労働行為事件(不当配転)~
2021年 2月19日 嶋田さんを相模野病院に戻すことを真摯に検討して下さい♪~独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO、尾身茂理事長)の不当労働行為事件(不当配転)
2021年 7月 1日 10月5日に中労委で審問(証人尋問)実施♪~独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO、尾身茂理事長)の不当労働行為事件(不当配転)
弁護士の川口です。
昨日、シフト制労働対策弁護団の結成・ホットライン開催(シフト制労働対策弁護団と民法協の共催)について記者会見を行い、複数のメディアに取り上げていただきました。
NHK(2022年4月14日首都圏ニュースWEB)
東京新聞(2022年4月15日WEB)
「シフト制」休業手当未払い続く 厚労省紛争防止促すも、救済見えず 弁護団発足
毎日新聞(2022年4月15日WEB)
新型コロナ 勤務減、電話で相談を 大阪の弁護士団体があす /大阪
赤旗(2022年4月15日WEB)
◆「シフト制」労働に関するホットラインを下記の日時で開催します◆
「シフト制」で働く方の労働問題について、ホットライン(相談無料)を受け付けます。
「シフトを減らされたが、休業補償がない」「シフトが減ったことで、社会保険から脱退するように言われた」「休業支援金制度を使いたいが自分が対象になるのかわからない」など、お困りの方はご相談ください。
【シフト制労働対策弁護団(東京)】
4月16日(土)11時~18時 ホットライン番号 03−5395−5359
【民主法律協会(大阪)】
4月16日(土)11時~18時 ホットライン番号 06−6361−8624
「シフト制」労働とは?
シフト制労働(者)とは、労働日や労働時間を確定的に定めず、一定期間(1週間、1か月など)ごとに作成される勤務割や労働時間が確定するような働き方(労働者)のことを言います。
一般的には「パート」「アルバイト」と呼ばれる労働者がこれに当たります。労働契約書や労働条件通知書などに、労働日や労働時間は「シフトによる」とだけ記載されており、具体的な労働日数や労働時間が記載されていない点に特徴があります。
コロナ禍とシフト制労働者
新型コロナウイルスの感染拡大によって、多くの事業が休業状態になりましたが、その際、シフト制で働くパートやアルバイトの労働者がシフトゼロ(シフトを全く入れてもらえないこと)や、大幅なシフトカットを受けるという被害が多発しました。
政府は、雇用調整助成金制度の適用を拡大して、休業者への補償を拡充しましたが、シフトで働く労働者は「シフト制」であることにより、補償の対象から漏れてしまいました。その結果、大幅な収入減となるシフト制労働者が多く発生しました。シフト制労働者は、時給制で働いている者が大半のため、シフトに入れず、休業補償もなければ、直ちに生活困窮に陥ってしまいます。
また、コロナ禍では感染情勢によってシフトを変動させられ、十分な収入を得られないシフト労働者も続出し、シフト労働者が人件費の調整弁として使われる実態も浮き彫りになりました。
このように、シフト制労働者は、企業の都合により、シフトを簡単に減らされる恐怖に晒され、非常に脆弱・不安定な立場にあります。
シフト制労働の問題は、コロナ禍で浮き彫りとなった非正規労働の新たな課題であるとして、社会問題化しました。
2020年4月以降、首都圏青年ユニオンは、シフト制労働の問題に取り組み、シフト制労働者を組織化し、企業と交渉したり、国に救済制度の創設を求め、成果を上げてきました。
こうした活動の成果として、休業支援金・給付金制度の創設があります。この制度の改善(適用拡大)についても、首都圏青年ユニオンは大きな役割を果たしました。
また、首都圏青年ユニオン顧問弁護団は、青年ユニオンとともに、「シフト制労働黒書」を共同で作成し、シフト制労働者の事件に取り組むなど、シフト制労働者の権利を守るためにたたかってきました。
※これまでの取組みについては、以前のブログ記事(下記)をご覧ください。
シフト制労働対策弁護団の結成
首都圏青年ユニオン顧問弁護団は、青年ユニオンなどの労働組合とともに、国への要請行動を行ったり、事件活動をする中で、現在の法令では、コロナ禍でのシフト制労働者の救済に十分に対応できていないことを痛感するようになりました。
また、厚生労働省は、2022年1月に「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」という通達を出し、現在の法令に基づく
コロナ禍で問題となった「シフト制労働」に関する通達が出されたのは、初めてのことです。首都圏青年ユニオンや顧問弁護団が取り組んできた活動の成果とみることができます。しかし、この通達は、基本的には現在の法令の範囲内でシフト制労働に関するルールをまとめた内容であり、休業補償の問題に言及していなかったり、シフトの作成・変更に関する労使間でのルール化を「勧める」内容にとどまっています。
今後、労働者・労働組合が活用することは十分に考えられますが、シフト制労働の問題を根本的に解決できる内容にはなっていません。
そこで、首都圏青年ユニオン顧問弁護団の有志(若手を中心に10名の弁護士)で、新たにシフト制労働の問題に特化した弁護団として、「シフト制労働対策弁護団」を結成することにしました。
4/16ホットラインの開催・今後の取り組み
シフト制労働対策弁護団の第1弾の活動として、「シフト制労働」に関するホットラインを、大阪でシフト制等の非正規労働者の労働問題に取り組む「民主法律協会」と共催で開催します(開催日時は本ブログの冒頭のとおり)。
また、シフト制労働対策弁護団では、シフト制労働に関するよくある質問と回答をQ&A形式でまとめました。ぜひご覧ください。
ホットラインの開催後も、シフト制労働対策弁護団は、シフト制労働者からの相談に対応し、その実態を社会に訴えながら、シフト制で働く労働者の権利擁護や被害救済のため、立法・政策実現の活動などに取り組んでいきます。
今後のシフト制労働対策弁護団の取組みについては、下記ホームページ(首都圏青年ユニオンホームページ内)で随時ご案内します。