「新しい日本大学をつくる会」訴訟判決に対する声明
我が国きってのマンモス大学である日本大学では、この間、著しいガバナンス不全が顕在化している。田中英壽理事長らをはじめとする役員の責任を、大学執行部の意思決定によって追及することが全く期待できない、「大学存亡の危機」ともいうべき事態に陥っているのである。 そのような中、本来日本大学執行部の意思決定によって日本大学自身が理事長ら役員に対して行使すべき減額補助金の1割相当額の損害賠償請求権を、原告である日本大学の現職・元職の教員14名及び「新しい日本大学をつくる会」が代わりに行使することが、本訴訟の眼目であった。また、併せて本訴訟では、2018年5月のいわゆるアメフト部危険タックル事件をめぐる事後対応や、田中英壽理事長を巡る反社交際をうかがわせる報道に対して適時適切に反論等していないこと等によって原告らの愛校心が侵害されたことについての慰謝料請求も行った。
本日、東京地方裁判所民事第23部(裁判長武部知子)は、本訴訟について、減額補助金の1割相当額の損害賠償請求を「原告らに…当事者適格を認めることはできない」との形式的理由で「不適法」であるとして「却下」し、慰謝料請求については、「原告らの主張する愛校心が法律上保護される利益であると認めることはできない」として棄却する判決を言い渡した。 もとより、原告らが日本大学の有する損害賠償請求権を行使することついては法律上の明文根拠のない挑戦的な訴訟ではあったが、私たちは現在の状況では司法に訴える他に日本大学を救う手立ては存在しないことを訴え、裁判所に対して「形式論理にのみ堕するのか、実態に目を向け、改善を図っていこうとするのか、どちらの道を選ぼうとしているのか。」と厳しく迫ってきただけに、判決内容は残念であり、到底受け入れられるものではない。「愛校心」を法的利益と認めなかったことも、原告らの心情を理解せず軽視する内容であり、承服しがたい。 そしてついに昨日、脱税容疑でではあるが田中英壽理事長が逮捕される事態にまで発展した。 本判決では私たちの請求は認められなかったが、私たちの請求の基礎にあった「大学存亡の危機」が、単なる抽象的懸念に留まらず、根拠ある現実のものであることが刻一刻と明らかになっている。本訴訟で問題となった補助金減額が、刑事事件を契機に再度なされるのではないかとも危惧している。
私たちは、田中英壽理事長の即刻辞任と日本大学執行部の全面刷新を求めるとともに、今後も日本大学が自浄作用をいかんなく発揮し、真の大学の自治と、母校の誇りを取り戻すことができるよう、今後も全力を挙げて活動する決意を表明する。
2021年11月30日 「新しい日本大学をつくる会」訴訟弁護団 |
はじめに
新人弁護士の伊能です。
ドキュメンタリー映画『私はチョソンサラムです』を上映したあと、韓国在住のキム監督と青龍弁護士とのZOOMトークが行われ、活発な意見交換がなされました。
<ZOOMトークの様子:(左から)キム監督、青龍弁護士、朴さん>
1 9条の会活動報告
まず浅野ひとみ弁護士から、本年度の9条の会の活動報告がありました。
土地利用規制法の1分動画制作や、ウェブセミナー開催など、今年も盛りだくさんだった東京法律事務所9条の会の活動を写真と共に振り返りました。
報告を聞きながら、来年もたくさんの活動報告ができるように頑張っていきたいと改めて感じました。
<活動報告:浅野ひとみ弁護士、(右)司会進行の私(伊能)>
また、この映画上映を後援していただいた「朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会」所属の千地さんからご挨拶をいただきました。
<「朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会」所属の千地さん>
2 映画『私はチョソンサラムです』上映
この映画は、韓国で活躍中のキム・チョルミン監督が、在日朝鮮人の活況を描いたドキュメンタリー映画です。
映画の冒頭は、朝鮮学校が攻撃を受ける映像から始まります。民族云々という以前に、同じ人間に対してどうしてこんなことができるのか、ニュースでしか知らなかった私は、衝撃を受けました。
この映画は、そんな差別を受けながらも在日朝鮮人は、なぜ朝鮮人として日本で生きるのか・・・そんな疑問に答えてくれる映画です。
私を含め、在日朝鮮人という方達は一体どういう方達か、そもそも知らない、そんな人は意外と多いのではないかと思います。
一人でも多くの方たちにこの作品を観てもらい、私たちは個人として、また日本社会として、在日朝鮮人という文化、社会とどう付き合っていくのか、考えていくきっかけになればと感じました。
この映画は、今後韓国の50か所近くの劇場で公開される予定もあるそうです。みなさまも機会がありましたらぜひご覧ください。またこの記事を読んでいただけてご興味が沸いた方、ぜひ各地で自主上映をご検討下さい!!
3 監督とのZOOMトーク
次に、冒頭でも紹介した、韓国のキム監督と会場の青龍弁護士によるZOOMトークが行われました。
通訳をお願いした朴さんを含めて、民間レベルでの日韓交流の在り方など映画を超えた活発な意見交換がなされました。
<対談の様子:(画面上)キム監督、(左から)青龍弁護士、朴さん>
以下、キム監督と青龍弁護士の対談の概要です。
Q1:映画製作のきっかけは?
→A:2002に金剛山で在日朝鮮人に出会い、2005年から本格的に取材しはじめた。
植民地支配から70年以上たっても差別あること、南北分断に心傷める人が日本にいることが衝撃だった。植民地支配と分断を乗り越えていく証言者・抵抗者の存在を韓国で知らせたかった。
Q2:日本での差別は、韓国でどの程度認識されているのか?
→A:最近ドキュメンタリーやニュースで流れることがあるので多くの人たちが知っている。韓国社会では、韓国に来ている日本人にヘイトの言葉を浴びせるようなことがあり得ないので、納得できない。監督個人としても思うことが沢山ある。
Q3:監督は韓国人として、この映画を撮ることについて葛藤や悩みはあったか?
→A:在日朝鮮時の歴史や生き様について知り、複雑でセンシティブだと感じた。韓国の監督なので、統一問題について語りたいことについて制約を受けることも制作する上で感じた。1,2世~4,5世まで、彼らが守ろうとしたこと、どう生きているのかをありのままに伝えようと心掛けた。
Q4:この映画に対する韓国での反応は?
→A:韓国では在日朝鮮人について表面的にしか知らないひとが多く、学びが多かったという反応。統一問題にあまり感心がない人も多いが、この映画をみて、(在日朝鮮人が)統一問題について深く考えている姿を見て、反省したり、韓国にいてできることはないかという反応もあった。
Q5:(日本と韓国・北朝鮮が)「休戦状態」にある中で、平和的統一のために市民レベルでの連帯を築くためにどうしたらいいと考えるか?
→A:あまりにも難しいが、日本と朝鮮半島は近く一緒に生きてきた。これからもそうすべき。しかし帝国主義・覇権主義の渦の中に日本も朝鮮もあると考える。こういった問題を一日も早く克服するために共存・共栄が大事だが、日本の市民団体と韓国の市民団体が連帯することが大事である。植民地支配の精算・分断の解決が非常に重要であるが、何よりもそのために米国中心主義からの脱却が大事である。韓国にもそういった志のある弁護士団体があるので、今日出席の弁護士方もそういった団体と連帯することでもできるのではないか。
むしろ教えてほしい。
青龍:民弁と交流している。2016年にも行った。言葉の問題もあって、何か一緒にやろうというところまではいけていない。韓国の米軍基地も外からだが視察した。日本にも主に沖縄に米軍基地があるが、そのような共通のテーマについて研究を深めている。
パク:在日3世で、朝鮮学校出身。朝鮮学校に子を通わせている保護者でもある。戦後75年経った日本と朝鮮南北との関係でいうと、もっとも厳しい状況と感じている(1975年生まれなのでその前はしらないが)。ウルトラCはなく、地道な活動が大事だが、唯一強いのが「出会い」である。今はオンラインで顔をみて直接話せるようになっている。いかに活用できるかが重要である。あきらめてはいけない、といつも考えている。
青龍:今日の上映会がそういう「出会い」になっていればいいと思う。
Q6:最後に今日の来場者にメッセージを。
→A:日本の方が多いと思うが、これまで在日朝鮮人の存在を知っていた方も知らなかった・感心なかった方も、問題に関心をもつきっかけとなれば嬉しい。「民族」のアイデンティティー・言語・文化の尊重が大事である。
4 最後に閉会の挨拶
最後に、今泉弁護士(東京法律事務所9条の会共同代表)から財政報告と閉会挨拶がありました。
東京法律事務所9条の会は、今後も戦争をしないさせない国づくりのため、活動を続けていきたいと思います。
みなさま、引き続きどうぞよろしくお願い致します!