このような医療行為は、社会的には必要だけれども、病院経営の観点からすると採算の取れる医療ではありません。そのため、民間病院が担うことには限界があるため、税金で支えて公共の医療を守ろうという発想で、都立病院・公社病院が設けられ、法令等によって行政医療を担っています。
新型コロナウィルス肺炎の治療も、病院経営の観点からすると赤字の部門です。感染者をいつでも受け入れられるように病床を空けておかなければなりませんし、感染対策のために病床数を減らさなければならないので、満床にすることができないからです。
それでも感染者を受け入れるのは、都立・公社病院が『行政的医療』を担っているからであり、それが都立・公社病院の使命でもあるのです。」
「このような都立・公社病院が、なぜ『地方独立行政法人化』されようとしているのでしょうか。
それは、都立・公社病院が『赤字経営』であるとして、経営の自助努力を求めるためです。東京都は、都立・公社病院に対して、一般会計から『繰入金』を支出しており、これを問題としているのです。
しかし、「繰入金」は、行政的医療のための費用であり、これがなければ採算の取れない行政的医療を都民に提供することはできません。」
として、2006年に独法化した大阪府では、運営負担金をこれまでに半減させているという例を紹介。
「東京都の繰入金や運営負担金も年々削減されていくことが予測され、行政的医療を維持・拡充していくことは困難になります。」
「また、地方独立行政法人となると、自助自立の財政が求められます。」「3年ごとの中期経営計画とその達成度合いに対する評価をもとに、病院の経常収支および医業収支が改善されなければ、補助金は減らされる可能性があります。」
「それをおそれれば、病院自身の取り組みとして不採算部門の切り捨て、収益構造の改善のための取り組みをすることとなります。」
「実際、『東京都健康長寿医療センター』では、独法化された後、病室の25%である141室が有料個室とされました。」
「新型コロナウィルス肺炎患者を受け入れられる病床数が減っていくことになります。」
「日本では年々公的医療の病床数は減っており、平成19年に230,823床だったのが、平成29年には209,293床になっています。10年間で2万床以上が減らされています。」
さらに、「都立・公社病院が『行政的医療』といういわば不採算部門を扱っている以上、地方独立行政法人となり経営について自助努力しなければならなくなると、経費を削減せざるを得ません。一番大きい経費というのは、人件費です。」
「都立・公社病院の医療従事者が、『行政的医療』という大変な役割を、低賃金で担わざるを得なくなります。耐え切れなくなって退職してしまう方が多く出ることが予想されます。そうすると、都民に現在の質の医療を提供できなくなります。」
「イタリアでは新型コロナウイルスの感染拡大によって、医療崩壊に直面しています。」「過去5年間に約760の医療機関が閉鎖され、医師5万6千人、看護師5万人が不足しているといいます。EUが求めた財政緊縮策として、政府が公立病院の統廃合や医師の給与カットなどの医療費削減策を進めた結果、多くの人材が国外に流出し、緊急事態に対応できなくなったと指摘されています。同様のことが日本でも起こりかねません。」
しかし、「この新型コロナウィルス肺炎の状況下でも、都の方針は変わっていません。」
都知事選で、独法化を止めましょう!
下記イベントを開催します。
お気軽にご参加ください!
KENPOウェブセミナー第1回
都知事選挙で何が変わる?
~新型コロナ対策から見る憲法と都政~
主催:東京法律事務所
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2020年6月20日(土)15時~16時
ZOOM(ウェビナー)にて開催
コロナ禍でわたしたちの生活が大きな制約を受ける今、国民の自由を守るための憲法が「安全安心のため」と銘打って改悪されようとしています。
7月5日(日)投開票の東京都知事選挙は、都民の声を都政に反映させるチャンスです。
今こそ、憲法が活かされる都政を実現するために、私たちは何を考えたらよいのか。その材料を弁護士がお話しします!
【セミナー内容】
テーマ①「自粛と補償はセット」と憲法(弁護士本田伊孝)
テーマ②緊急事態宣言と緊急事態条項(弁護士加部歩人)
テーマ③都立病院独法化問題(弁護士長谷川悠美)
テーマ④都知事選挙の争点はここだ(弁護士中川勝之)
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_1sZ0-Q59SRGNEG3a00WYiw
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★お申込み後、ウェビナー参加に関する確認メールが届きます。
弁護士の平井哲史です。緊急事態宣言が解除されたのも束の間、東京では1週間の新規感染者増が100名を超え、「もう第2波が来るのか?」と気が気でならない方も少なくないかもしれません。
外出自粛要請が続くなか、なんとか皆さん頑張ってこられましたが、対策も支援策も後手に回った結果、ここへきて倒産件数の増大がニュースになるようになっています。
私たちの事務所にも、「解雇された」、「雇止めをされた」、「シフトを減らされた」といった雇用にかかわる相談や、「正社員は給与保障で自宅待機なのに、バイトやパートは出てくるよう指示される」といった格差処遇に関する相談など、いろいろな相談が寄せられています。
相談を受けていて、これは広く知ってほしいなと思うことを書いてみたいと思います。
1、「助成金の積極活用を」
――助成金等を活用しない解雇には解雇回避努力は認められない
●助成金等を活用しない焦った解雇が起きている
まず、休業要請が出されていた業種などではやはり雇用にかかる問題が起きていますが、「これは問題だな」と思うのは、「雇用調整助成金」や「緊急雇用安定助成金」(※)などの使用者の経費負担を軽減して事業の存続をはかろうとする助成金や、「持続化給付金」(※※)の申請をすることなく、焦って解雇等に踏み切っているケースです。都内のあるタクシー会社が話題になりましたが、それ以外にも外資系のファッションブランドのショップやある大手ホテルなどでも起きています。
※厚労省のサイトをご参照↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07.html
※※経産省のサイトをご参照↓
https://www.meti.go.jp/covid-19/jizokuka-kyufukin.html
●合理的理由のない解雇は違法
こうしたケースでは、売上の減少を理由としていますが、こうした経営上の理由による解雇や雇止めの場合、人員削減の必要性や解雇回避努力、人選や解雇等に至る手続が相当であるか、といったことを考慮し、客観的に合理的であると認められなければ、法的には有効となりません(※)。つまり、裁判になると使用者側が敗訴になります。
※ 整理解雇の法理。厚労省のサイトご参照↓
コロナウイルスの影響で売上が極端に落ちたのだから合理性はあるでしょうという見方もありますが、即断は禁物です。実際には個々の裁判ごとに判断は変わりえますが、政府がわざわざ助成金をいくつも設け、あるいは枠を拡大して支援策を用意しているのに、これを利用せずに解雇等に踏み切れば、解雇回避努力が不十分との評価を受けるでしょう。
●雇用調整助成金の活用で解雇は回避できる
少し具体的に見てみますと、仮に100人の労働者をかかえるホテルで、仕事が減ってしまったので、1か月自宅待機(休業)してもらうことにし、給与月額の60%の休業手当を支払うことにしたとします。中小企業ですと。この支払った休業手当の90%までは雇用調整助成金が出ます(今の国会で補正予算が成立すれば1日の上限額が1万5000円まで上がる見込み。)。労働者の給与が一人平均で30万円だとすると、休業手当は概算で18万円/人になります。その90%を雇用調整助成金でまかなえると、1万8000円/人が使用者自身の負担分となります。100人だと180万円になります。そして、中小企業ですと、持続化給付金は200万円出ますので、おおざっぱにいえば、雇用調整助成金と持続化給付金で100人の労働者の休業手当1か月分がまかなえる計算となります。これならば、売上が大きく落ちたとしても解雇までする必要はまずないでしょう。
ですので、使用者の皆様にはぜひ積極的に助成金を活用し、雇用を維持できるよう頑張っていただきたいなと思いますし、労働者の皆様は、「コロナで売上落ちたからしょうがない。」とあきらめないで相談にきていただければと思います。
●小学校等の臨時休業に伴う保護者の休暇について
なお余談ですが、保育園から小学校まで(まとめて「小学校等」と言います。)の小さいお子さんのいるご家庭では、小学校等が臨時休校になると、お子さんだけを家においておくわけにいかず、共働き家庭ですと、夫婦のどちらかが仕事を休まざるを得ないのが一般かと思います。
そうしたときに、「仕事に出てこらないなら辞めてくれ」と無体なことを言う使用者は少ないだろうとは思いますが、小さい子を抱える共働き家庭の労働者に安心して休んでもらえるようにする助成金があります。厚生労働省の事業で、「新型コロナウイルス感染症に係る小学校等の臨時休業等に伴う保護者の休暇取得支援(新たな助成金制度)」(※)がそれですが、臨時休校(休園)に際して仕事を休まざるを得ない労働者に有給の特別休暇を付与する使用者にはその給与分100%を助成するというものです。こういう制度もありますので、使用者は簡単に辞めさせることを考えず、労働者は、あきらめて仕事を辞めてしまうことのないよう頑張っていただければと思います。
※厚労省のサイトをご参照
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/kyufukin/pageL07_00002.html
2、「よくわからずにサインするのは『ちょっと待った~』」
――サインする前に相談を
●退職届を出させるケースが頻発
次に、今の情勢下でなくても起きていることですが、解雇や雇止めをするときに、リップサービスで「状況がよくなったらまた雇うからね。」と言われることがあります。ニュースにもなった某タクシー会社もこのケースでした。この場合に、解雇や雇止めであれば、離職票では「事業主都合」での離職となり、失業給付は待期期間なしにもらえるようになるのですが、中には、リップサービスとともに、「退職届」や「退職合意書」を渡して、「これにサインして」と言うケースがあります。
●退職届を出してしまうと争うのは困難
しかし、これ簡単に応じてしまうと後で大変なことになりかねません。
というのも、解雇や雇止めであれば、後で冷静になって考えたときに、「やはり納得できない」と思えば、「解雇(あるいは雇止め)は無効だ!」と言って裁判で争うことはできますが、退職届や退職合意書を出してしまうと、「自分の意思で辞めたんでしょ。解雇じゃないから争えないよ。」とされてしまいます(厳密には、真意に基づくものではなかったと言って争う道もあるのですが、裁判所はその主張は簡単には採用しません。私も辞表を書かされた方の依頼で退職届の効力を争った裁判をやって煮え湯を飲まされたことがあります。)。
しかも「退職届」だと、自己都合退職扱いにされてしまいますから、失業給付をもらうのにも3か月の待期期間を設けられてしまいます。
●絶対にその場でサインはしない!
ですから、「辞めてくれ」と言われたときには、たとえ「しょうがないかな。」と内心思ったとしても、その場でサインすることはせずに、サインしちゃっても大丈夫か相談してからにするようにしていただければと思います。まじめに提案をしている使用者であれば、持ち帰って検討したいと言うのを制してその場で書いてなどとは決して言わないはずです。何が何でもその場で書かせようとするのは何か後ろめたいことがあると思ったほうがよいでしょう。
3、「シフト削減は使用者の都合になります」
――休業手当は払い(もらい)ましょう
よく飲食店勤務の方で、「シフトが減らされた」と言うのを聞きます。マクドナルドのようにデリバリーでやれるところはよいのですが、そうでないところは本当に来客が減ったため大変です。
こうしたところでは、バイトやパートの方のシフトを減らすことが普通におこなわれていますが、中にはその削減したシフトの時間分給与をまるまる支払わないというところがあったりします。
ですが、「休業手当」はきちんと払い(もらい)ましょう。
たとえば、通常、週4日、6時間勤務でシフトに入っているところを、週2日にシフトが減らされた場合、その使用者の都合で減らしたシフト時間については、コロナウイルスの影響による顧客の減少が原因ですから、使用者に全責任があるわけではないとしても、休業手当の支払いを定めた労働基準法26条の言う「使用者の責に帰すべき事由」にあたります。このため、その減った時間分の休業手当は支払われなければなりません。(使用者は、売上が減ったために解雇や雇止めの代わりにシフトを減らしたのであれば、雇用調整助成金の申請をできるでしょう。)
「バイトはシフトで決めた時間だけ働くのだから、シフトに入っていない時間については給料を払う必要はない」と考える使用者が少なからずおられますが、そうやって開き直って休業手当の支払いを拒むと労働基準法違反となります。働いている皆様のほうでは、「シフトに入ってないから給料はもらえない。」と誤解して給料をもらい損ねないようご注意を。
4、「店に出ていてコロナに感染したら労災になります」
店舗勤務で不特定多数の人と接する機会の多い方は、特に医療や介護従事者の方は、「いつ誰から感染するかわからない」という恐怖とたたかいながら日々勤務されておられると想像します。もし感染してしまった場合、自身が入院や、そこまで至らずとも隔離されて治療を受けることになります。当然、出勤は停止となります。この場合、有給の病気休暇制度が用意されている職場であればともかく、そうでなければ欠勤扱いとなってしまい、治療費は自己負担で、給料もカットされてしまうのか?ということが心配になります。
ですが、医療や介護従事者は業務外で感染したことが明らかでないかぎりは業務上感染したものと扱われ、労災となります。それ以外の労働者でも、勤務中に感染者と濃厚接触したことが判明した場合のほか、感染経路が不明でも不特定多数と接する職場においてコロナウイルスに感染した場合には、業務外で感染者との濃厚接触があったことがなければ労災として認定を受けやすいでしょう(※)。今のところ、申請例は少ないようですが、申請があったものはすべて労災認定を受けているようです。
ですので、コロナウイルスに感染してしまい、しばらく休業をせざるを得なくなった方は労災申請の相談をなさってみるとよいかと思います。
※厚労省のQ&Aご参照↓
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/dengue_fever_qa_00018.html#Q5-3
☆ここにあげなかったものも含めて日本労働弁護団が想定される様々な疑問に答えるQ&Aを公表していますので、そちらもご参照ください。
http://roudou-bengodan.org/covid_19/