弁護士の笹山尚人です。
2018年7月10日、私と、江夏大樹弁護士とで担当した事件について、東京地裁民事第11部(阿部雅彦裁判官)が判決をしまして、完勝と言って良い勝利判決でしたので報告します。
事案は、ソフトウェアの開発・販売などを事業とする株式会社システムディで働く私たちの依頼者Iさんが、勤務している会社と会社の代表取締役Dを訴えたものです。
訴えの内容は、被告株式会社システムディに対し、
①原告の賃金を一方的に減額した点について差額賃金の支払い
②退職強要によって休業させられたことについて休業損害や慰謝料などの支払い
③復職を求めたのに会社がその復職を拒絶したのでその期間の賃金の支払い
④復職後も一方的に賃金を減額したので差額賃金の支払いを求め、
⑤代表取締役Dの言動(「裏切りの人生」や、「この寄生虫」といった言葉)を投げつけたことについて、Dと会社に連帯して慰謝料の支払いを求めた、
というものでした。
判決は、賞与の一部と消滅時効によって支払いを認めなかった部分、慰謝料の金額判断において当方の主張全部を認めなかった、という点があったものの、それらを除き、当方の請求を全て認める、という内容でした。
判決の中では、次の判旨は特に良かったと評価しています。
ア、労働契約は労働者と使用者が対等の立場における合意によって形成され変更される(労働契約法第3条1項)。特に賃金はもっとも重要な労働条件であるから、労働者の業績不良などを理由に使用者が労働者の賃金を一方的に減額する場合、その法的根拠が就業規則にあるというためには、就業規則においてあらかじめ減額の事由、その方法、程度等につき、具体的かつ明確な基準が定められていなければならない。本件の場合、それがないから賃下げは許されない。
イ、使用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう配慮する義務を負うが(労働契約法第5条)、さらに、労務遂行に関連して労働者の人格的尊厳を侵しその労務提供に重大な支障を来す事由が発生することを防ぎ、又はこれに適切に対処して、職場が労働者にとって働きやすい環境を保つよう配慮する注意義務を負う。使用者がこの義務を怠り、その使用人においてほかの労働者の意思決定を不当に強要し、あるいはその人格権を違法に侵害する言動があった時は、使用者は債務不履行に基づき労働者に発生した損害を賠償する義務を負う。
ウ、退職強要の言動に関しては、直接的な証拠が存する部分では勿論、それがない場面でも、Iさんの供述、Dの供述、使用人の証言などや物証などから丁寧に事実を認定し、当方が主張する事実を認定した。
エ、認容した慰謝料の金額も、相当であった。
退職強要の慰謝料は、80万円を認容。一方、Dが、Iさんに対し、「裏切り」「寄生虫」という言葉を投げつけたことについては、Dと会社の連帯責任の慰謝料を20万円として認容。
この判決は、労働法を丁寧に解釈して法のなんたるかを示すとともに、本件で発生した事実についても証拠に基づき丁寧に認定したものです。
会社が、労働者を気に入らなくなり、その職場外への追い出しをはかろうとして、賃下げをしたり、パワハラの言動を行うことがまま見受けられますが、そうした事案が許されないことを明らかにしてくれた判断と、高く評価できるものです。
会社と代表者が、この判断に従い、自らの行いを反省して、今後は法に即した職場環境を形成すること、Iさんの就業環境、ひいては会社の就業環境を正常化して働きやすい職場作りを行うことを切に希望します。
以 上
事務局の金田です。
この間、掲載しています新宿区の公園規制問題で、区内にその見直しを求める実行委員会(新宿区立公園使わせて! アピールデモ実行委員会)が立ち上げられ、東京法律事務所も参加しています。
ネット署名を始めましたので、下記にリンクを添付します。
7月24日までと短期間ですが、ご協力をお願いします。
こちら
・「新宿区のデモ規制と表現★集会の自由を考えるシンポジウム」のお知らせ
日時:7月24日(火)18:30開始
場所:新宿リサイクル活動センター(高田馬場駅 徒歩3分)
・「新宿区立公園使わせて! 7.31新宿アピールデモ」のお知らせ
日時:7月31日(火)19:00デモ出発
出発:柏木公園
解散:新宿遊歩道公園
署名へのご協力、各企画へのご参加、署名・各企画の拡散にご協力をお願いします!
よろしくお願いします。
弁護士の笹山尚人です。
DNPファイン争議が、2018年6月6日、東京都労働委員会にて、和解の成立をもって終結しました。
2009年、橋場恒幸さんは、㈱DNPファインエレクトロニクス(大日本印刷久喜工場内)で請負契約として働いていましたが、業績不振を理由に解雇されました。その後、自らの働き方が二重偽装請負という違法状態にあったと考えた橋場さんは、さいたま地裁に対して、DNPファインへ雇用の地位確認と損害賠償を求めて提訴しました。
さいたま地裁は、職業安定法44条違反、労働基準法6条違反の事実を認めましたが、地位確認と損害賠償が退けました。東京高裁の判決は、橋場さんの主張を退け、職安法、労基法違反の事実も認めず、橋場さんの訴えを棄却しました。橋場さんは最高裁に上告しましたが、2016年に棄却の決定で裁判闘争は終結しました。
橋場さんが加入した労働組合である、全国印刷出版産業労働組合総連合会(全印総連) 、同東京地方連合会は橋場さんの裁判を一貫して支援し、この観点から、2016年に東京都労働委員会に対して、大日本印刷とDNPファインの二社に対し、団交拒否による不当労働行為救済の申し立てを行い、話し合いによるこの争議の解決を目指してきました。
都労委申立てから2年が経過し、この度6月6日、DNPファイン争議を終結する和解を成立させることになりました。
9年にわたる争議の期間、橋場さん、本当にご苦労様でした。また、長年にわたり多数の皆様から物心両面にわたるご支援を頂きました。御礼申し上げます。
本件を担当したのは、弁護士井上幸夫、弁護士笹山尚人、でした。
あざみ 共産・社民でこの委員会前に申し入れた。公園を1ヶ所に制限することは違憲、憲法「表現の自由」に違反する。
地域住民はヘイト規制を求めている。昨日の朝日新聞夕刊に取り上げられた。そこで、区長はヘイト規制(人権侵害の発言が横行する状況を放置できない)と言っているが、基準の見直しではヘイト規制は言及されてない。
区役所 デモの規制は周辺住民からの要望。
あざみ 朝日記事の区長の発言は人権侵害とあるので、ヘイトの見直しか?
区役所 区長の回答なので承知していない。
あざみ 区長の発言なのだから公式だろう、個人ではない。区を代表しての発言なのだから、承知していないと言えない。
区役所 同席してないので承知していない。区として意見は上記の通り。
あざみ どうして所管が認めないのか?すり合わせすべきで、認識が違うなら抗議すべき。
区役所 きっかけの1つがヘイト、そしてそれも含めて総合的な判断。
あざみ 全てのデモを規制するのは違う。地域からの要望は具体的に出すべき。
区役所 町会・商店会が要望書というかたちで出した。
あざみ そこにヘイトは書かれているのか?
区役所 ヘイトデモは無く、全般的に交通規制や騒音被害について書かれている。
あざみ 住民から聞いたが迷惑はヘイトデモだと。一般的なデモと警備体制が違う。細かい路地にも立っていて、近所を通る時も名前や住所を聞かれて大変。ヘイトは聞くに堪えない。ヘイトを何とかしてほしいという声は聞いているのか?
区役所 ヘイトの苦情は聞いている。
あざみ ヘイトの件数について、各公園でいくつずつあるのか?
区役所 平成30年度は柏木公園で3件。平成29年度は柏木8件、花園西4件、中央1件。
あざみ ヘイトデモについて警備は把握しているのか?
区役所 把握している。ヘイトに限らず大量動員はある。
あざみ ヘイトを事前に知っているのなら、区と警察で連携して使用取消は可能ではないか?
区役所 情報をもらって慎重に対応、思想で取消はできない。
あざみ ヘイトは線引きが難しいと区長は言っているが、警察は把握している。そこは分かるのではないか?
区役所 ヘイト規制を意識している。他の自治体を参考に研究している。
あざみ 規制の検討が先だろう。区も都(人権条例)と連動しなくては。
区役所 都の部分も研究する。
あざみ 急いで対応するべき。江戸川区は許可条件を明確にしている。
区役所 江戸川区も参考にしたい。
あざみ 本当のヘイト対策が先で公園規制はやめるべき。柏木がヘイトの解散地点になるという不安の声がある。その不安は公園が4ヶ所から1ヶ所になっても変わらない。
区役所 それで影響の少ない中央公園を残した。解散は流れ解散なので警察と連携したい。
あざみ 1つにしてもヘイトは解決しない。解決しないなら全ての規制をやめるべき。
有馬としろう議員(公明党)
有馬 地域からの要望書は2地域か?
区役所 柏木と花園西地域から。
有馬 中身は?
区役所 柏木は歩行者の往来についてと拡声器の騒音。近隣は学習塾やホテルも建設されている。土日にデモをやられるのは死活問題。花園西は住宅地なので車両規制と騒音被害。住宅地なのでふさわしくない。商店は街の印象が悪いと。
有馬 公園規制の要望もあるが、デモ使用の要望もある。それで公園の使用を1つにしたのか?
区役所 区民の生活環境と憲法21条を考慮した。
小野裕次郎議員(立憲民主党・無所属クラブ)
小野 苦情は何件ずつあるのか?
区役所 直接、区にというのは多くない。
小野 細かく分析しているのか?苦情はヘイトなのか?他のデモなのか?問題を調べないのは検証不足。
区役所 ヘイトは苦情強め。商店会はデモ全般。
小野 本来、苦情はそこで何件あり、内容は何なのか?ヘイト規制を考えないといけない。
川崎・大阪の検証を。総務課から公園課に話がいっているのか?
区役所 分析している。
小野 考えている最中に出したのは独断案か?
区役所 ヘイトは耐えられないので何とかしてほしいのと、憲法21条に違反しないところで。
小野 条例で縛るのが本来では?公園条例に書くのは考えなかったのか?
区役所 デモ規制は公園基準で進めた。
小野 公園基準だけでは縛れないのでは?条例で公園使用を規制するのは憲法違反になるから行わなかったのではないか?
区役所 条例で制限しているものを、基準に書いた。
小野 憲法違反だ。いち委員会で論じていいのか?ヘイト条例に手をつけるのが手続の順序だ。
区役所 ヘイトより区民の要望。
小野 デモを起こすのは騒がしいと聞こえる。
区役所 ヘイトは申請者が違うから把握しきれない。周辺のストレスを解決したかった。
小野 デモの内容の判断云々より、近隣の問題でファクターしている。デモを起こさせないことを意図しているのか?
区役所 何で柏木にこだわるのか?
小野 他の自治体で使用できる公園を1ヶ所に絞ったところを調べたことがあるのか?
区役所 調査していないが、ゼロの自治体(23区で)は6区ある。
小野 1ヶ所しか使用できない自治体は他に無い。イベントとデモ申請が重なったらどうする?
区役所 52週×午前・午後でデモが集中する日曜でも104回あるからデモで使用できる。
小野 イベントも日曜が多いので、中央公園が空いていない場合が多い。デモをイベントの無い日に入れるのは問題。
区役所 使用時間は30分なのだからいいではないか。
小野 それならデモの30分の時にイベントを中断させられるのか?
区役所 それは、さすがに無理。
小野 理解・検証してから進めるのが筋。
ふじ川たかし議員(新宿区民の会)
ふじ川 商社35年の経験で中国語がでる。総務・区民委員会で大阪市の条例を参考にすると言ったが進められてない。条例が理想的で、公園条例にヘイト規制が無いから入れるべき。4公園を1公園に絞るのでなく、ヘイトを1公園に絞るのが正しい。
区役所 規制はデモ全体の問題。しかし、川崎市を参考にしたい。
ふじ川 柏木で年間50回、1回につき30分の使用でどこが多いのだ?
区役所 知らない人が来るのは周辺からしたら嫌だ。
ふじ川 中国はデモ以前に集会すらダメ。そこに近づいているのではないか?共謀罪もできたし。
桑原羊平議員(自民党・無所属クラブ)
桑原 現在、柏木の使用が7割だが、中央公園に集中したらどうする?近隣に結婚式場があるが。
区役所 柏木は住宅等が近接しているが、中央公園は周辺に住宅等がない(大通りを挟むため)。
桑原 柏木周辺住民と話すが、今の活用はいかがかと聞く。
区役所 町会・商店会からヘイトに限らず苦情がある。
桑原 7割が集中するのは何とも言えない。考慮を。
雨宮武彦議員(共産党)
雨宮 住民からの不安はあるので、誰がやっているのか明確にすべき。きちんと調べて全体の議論を。大阪・川崎と調査してきたのに公園を1ヶ所に絞るのは納得できない。ヘイト対策をしなかったのが問題で、やろうと思えばできる。
区役所 ヘイトは検討しているが、30分の集会では分かりづらい。
雨宮 基準に住宅だけでなく、商店・学校を加えた。それでは中央公園ありきだ。理屈にならない。ヘイト規制をすれば9割解決できる。住民が困るデモはしていない。9割は通常のデモなのだから、それを規制するのは憲法違反。
ヘイトデモはこうで、通常デモはこうだと内容を出すように。議会軽視、自分たちで勝手に決めるのはおかしい。大阪・川崎を検討しろ。事実を集約し、見直しを議会に出すように。
区役所 私は、ヘイトはもちろん、それ以外のデモが行われるような周辺公園には住みたくない。
雨宮 規制ありきはマズイ。
弁護士の中川勝之です。
上智大学、上智短大等を運営する学校法人上智学院の不当労働行為事件について、本日7月6日、東京都労働委員会にて第1回調査期日が開催されました。申立人は首都圏大学非常勤講師組合です(本年4月23日申立)。
組合は、二人の組合員の2018年3月末の雇止めにかかる団体交渉が、不誠実団交(労組法7条2号)ないし支配介入(同条3号)と主張しています。
雇止めとなったのは勤続5年(2013年4月1日採用)の組合員と、勤続16年(2002年4月1日採用)の組合員です。
いずれも無期転換申込権(労契法18条)阻止の雇止めです。
特に前者の組合員には2014年の契約更新の際、4年上限の定めが契約書に記載されましたが、同組合員が調べたところによると、周りで同じ2013年4月1日に採用された非常勤講師は2018年3月末で雇止めになっていました。
学校法人上智学院は、就業規則には5年上限の定めを入れないまま、2013年4月1日以降に採用した非常勤講師の個別の契約書に5年上限の定めを入れたと考えられます。
この点については、本年3月23日、組合の松村比奈子委員長及び大野英士副委員長が平塚労働基準監督署に告発状を提出しました。
告発事実は、学校法人上智学院が、2013年4月1日以降に採用された非常勤講師について、「更新により契約期間が5年に達する時」という「退職に関する事項」を定めておきながら、同事項を記載した就業規則を労働基準監督署長に届け出なかったというものです(労基法89条違反)。
告発の件は、本年3月27日のしんぶん赤旗が報じていましたが、先日、平塚労基署から告発について正式受理をしたという連絡がありました。
※■しんぶん赤旗(2018年3月27日)記事(全国国公私立大学の事件情報より引用)
首都圏大学非常勤講師組合は、上智大学にだまし討ち的な手法で非常勤講師を5年雇い止めしようとしているとして撤回を求めています。23日には、松村比奈子委員長、大野英士副委員長が労働基準法違反にあたるとして神奈川・平塚労働基準監督署に刑事告発しました。
上智が2013年4月に制定した就業規則には契約上限の規定はなく、非常勤講師組合の質問にも「従前の更新手続きを変更するものではない」と答え、契約上限を定める場合には「個別に対応する」としていました。
ところが、13年から上智短大(秦野キャンパス)で教える組合員は、学科長から「13年4月以降に雇用された非常勤講師には、一律5年上限が課されている。法人の決定であり、学科ではいかんともしようがない」と言われ、3回の団体交渉でも雇い止めが撤回されていません。
組合の入手した英文資料には「13年の労働法制定に対応して、上智大学では非常勤講師に対し、5年の更新上限を定めることを〝公式に″決定した」と記載。労働基準法89条では、退職に関する事項は就業規則に書き入れなければならない「絶対的必要記載事項」とされています。
組合は上智大が無期転換逃れのために一律に5年で雇い止めする制度をひそかに制定しており、就業規則の適正な制定にも反すると批判。組合員は、神奈川労働局平塚総合労働相談コーナーに対しても、「助言指導」を求めています。
この問題で本紙問い合わせに対して上智大は「交渉中のため回答は差し控えたい」としています。
なお、本件の事案については、東洋経済にも掲載されていますのでこちらもご参照下さい。
40歳非常勤講師、「夫婦とも雇い止め」の深刻~学校側の行為は「無期転換逃れ」の疑いがある
首都圏大学非常勤講師組合は、日本大学の雇止め問題について大きく取り組んでいます。
上智大学の雇止め問題も日本全体の非常勤講師に関わる問題として取り組んでいますので、皆様からのご支援をお願いします(弁護団は、今泉義竜弁護士、川口智也弁護士と私)。