
7話の櫻井アイナを語るためにも、まず話中2つのネタを先にクリアしないと。
回想シーンとスリーV
運用ピット。とくにピットの構造の方は、把握してるのとしてないので7話後半の展開推移の理解度が違ってくる。

まぁもちろん、
だのに!劇中でピット構造の説明なんかいっさいしてくんない。ぶっちゃけ「一本道構造」が明らかになるのはもっと先の11話。その容赦のなさがヴァルヴレイヴの素晴らしいトコだね!もちろん「易しく説明してくれない」だけで、調べれば調べるほど応えてくれる、細かく密度高く組まれてるのがヴァルヴレイヴ。「
求めよ、さらば与えられん」。本編つうじて描かれ続ける精神性は、
とうぜん作品制作の段階でも一貫してる。

まずは回想シーンから。1年のクラス内、アイナが語るサキとのやりとり。

…ヴァルヴレイヴの鬼作劇では「まったり回想」だからって油断しちゃいけない。回想入りの
アタマからいきなり芝居がはじまってますね。手前でじゃれてるモブ子達はここではスルー。むしろコイツらは画面の大半を占めて観客の注意を惹かせ
奥の芝居に気付かせないためのダミーと言ってもいいw あえてハードルを高くするマジキチぶりが素晴らしい!

教室の隅でアイナと誰かがお話してます。会話を聞かずとも大ぶりなゼスチャーからその
内容を読み取れと。誰かがアイナにスッゴイ
お礼を言って、アイナは「いいえどういたしまして」な返しをしてる。そんなアイナは
手に何か抱えてるから、これが「お礼」されるほどのアイナの「
親切」
を示唆するアイテムなんだなというコトはワカる。

ココもはしゃぐ生徒たちの方にピンを合わせてるけど、もちろんさっと横切るアイナの方が本題w 抱えてるモノは…

コレだ。咲森学園女子
体育着。 余談ではあるが!小生このシーン、視聴5度目くらいでやっと奥に立ってるのが「
眼鏡してないアイナ」だと気付いた程のヌケサクだ!

んでアイナは教室最後端までやってくる。サキの怪我に気が付いて…

即反応。

こんなコトもあろうかと常に持ち歩いてる絆創膏を差し出す。「
やさしさの瞬発力」は常に健在。 たいしたもんだ。
まぁたったコレだけの回想シーンなんですが、むしろ「怪我したサキに絆創膏をあげる」だけの内容で、ホントに「たったそれだけ」しか描いてないのに、「
ここには描かれないだけで、そこに至る背景はこの世界にもちろんちゃんと存在してる」気配がガッツリ盛り込まれてるんですよ。
なんでサキがこんな
みっともない怪我してるんだ?とか、なんでこのやりとりでサキ視点で「特別扱いしなかった」コトになるんだ?とか、そのへんはこんだけの材料から「
お前が自分で考えてみろ」と。 じゃあ考えてみよう。

まず位置関係だけど、ロッカーも扉も何もない教室最後尾までまっすぐフツーに走ってくるのだから、この一番後ろの席が「アイナの席」。サキの斜め後ろで、座っていたら
怪我した脚がちょうど見えない位置だね。抱えて席に戻るってコトは、
体育着は自分のモノ。
いっぽうシーン冒頭では教壇と扉の近く、生徒の席からはいくらか離れた場所で会話をしてる。つまり話してる相手は
クラスメートじゃない(同じ教壇近くに居るのは「
誰も映り込まないよう」撮影する女子達と、「
誰にも見られないよう」隠れて画像を見る男子達だけ。教室前方は生徒の生活空間じゃないということ)。前側扉からやってきて、おとなしく席に着いていたアイナを呼び出し、
アイナはいかにもアイナらしく扉の前じゃ誰かの邪魔になるからと彼女を教室内に招き入れ、隅に寄って立ち話をしたと推察される。

それでこの「感謝&どういたしまして&体育着持ち帰り」なのだから、コレはもう「
体育着を貸して、返してもらったところ」だろう。んでそのままじかに自席に戻るときに、はじめてサキの膝が視界に入って、その怪我にやっと気付いたと。
「体育着を返してもらった」ってコトは、このシーンは「体育の後の休み時間」なんじゃないか?ありがちな男女別・2クラス混合の体育授業。アイナ本人は「今日は都合により見学()」でも「予備の体育着を持ってた」でもどっちでも構わない。アイナ&サキのクラスと隣のクラスが合同授業をやって、アイナは隣のクラスの子に体育着を貸したけど、生憎サキも持ってなくて、それでもサキのことだから「
制服のままで大丈夫です」とかやせ我慢しちゃってそのまま授業を受けた。常にアイナはアイナらしく、サキはサキらしく。
もちろん「制服のままで受けられる授業」ってのが前提で、さすがにサッカーとかバレーは無理。制服でもなんとかなる 陸上競技的な種目だったからサキは強行して、でも制服だから惜しくもスッ転んでしまう、そんな都合の良い授業内容なら何があるだろう?
…ひらめいた!「
ハードル走」だ。コレなら転ぶか転ばないかのギリギリのラインだし、制服だから惜しくも転んだってエクスキューズも立つってモンだ。サキが
すっ転んでも即起き上がって駆け出す闘志をみせれば怪我したコトには気付き辛いしね。そりゃまぁハタ目には「カッコ悪い」けれど。それにホラ、なんたって「
流木野サキは跳び越える」からさ。「
自業自得」ってのもとてもサキっぽい。

ここまでストーリーが構築できればあとは容易い。ただでさえ注目される元アイドルのサキが、ひとりだけ制服で体育やるんだから、これはもう浮いて浮いて仕方ない局面。
恥ずかしい方向でひとり目立つワケだから、こりゃ相当にタフなメンタルでないと乗り切れない黒歴史イベント。 で、櫻井アイナだけがソレをまったく気にせず、体育の授業中もずっとふだんどおりの態度を取りつづけてた。
アイナがサキを避けてたからでも嫌ってたからでもなくそれが「ただ自然体だった」ってコトを、なんの躊躇も衒いもなく絆創膏を渡す姿で
確信したと。いや、いいハナシっスね。オレの脳内で。
脳内でっつーか、革命機ヴァルヴレイヴの「大胆に切り詰める一方で、過剰に細かく盛り込む」演出ってのは絶妙で、こうやって身勝手に構築するんに
ぴったり丁度良い分量を狙い澄ましたかのように与えてくれる。冒頭のチマチマしたやりとりがなければ「体育」には思い至らないワケだし、ひとつ突破したら次々に
連鎖して撃ち抜けるような「含み」がいたるところ設けられてて、テキトーにみえるそれぞれの位置関係すらも「ひとつの意図」が見立てられるように繊細に配されてる。
「描かれた事実だけは
事実として絶対に動かさない」。たったひとつのそのルールを守ったうえで、描かれてない
真実をいくつでもモギ獲るコトができる、ここまで超高容量の映像作品ってのは凄いわー。…小ネタのはずが、ピット構造解説する記事量がまたまた足りなくなるレベルで、もうどうなんだコレ!?
またつづく!
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