博士課程を修了した後の人材が現在どうなっているかを調査している NISTEP(科学技術・学術政策研究所)の博士人材追跡調査の第4次報告が公開されていました。
2015年に1次調査が公表されていましたが、その後も継続して実施されていたようです。
† 年収は 300~500 万円くらいのことが多い?
注目したいのは年収の部分。黄色の保健には1000 万円超の部分に山がありますが、これは医師や歯科医師が含まれているためなのであまり参考になりません。工学系だと「300~400万円」「400~500万円」が最頻値になっています。工学系の場合は元々が社会人のことも多いので、修了後の年収は会社員の場合には元々着いていたポストのままそれほど変化がない人も多いでしょうが、そのまま大学に残ったり、新卒で会社に入ったりするとそんな感じかもしれません。
ちなみに僕の場合、ポスドクの時は年俸 300 万円、任期付き助教の時は年俸 450 万円でした。常勤の身分でしたが、足りない分については「学外のことは関知しませんので、自分で何とかしてくださいと」言われていたので、1~2日くらいは普通に仕事をしたりしているような感じでしたね。
科学技術指標2021*1によると、あいかわらず日本の研究開発費は増えていないことが指摘されています。
現在の政策に問題があることについては指摘されて久しいわけですが、これ、いつになったら改めてくれるんでしょうか。
科学技術の研究開発費、米中との差がさらに広がる 博士号人材の登用進まず - ITmedia NEWS
企業の研究開発費は、日本では約14兆円で前年比0.2%減。米国は約50兆円(前年比8.9%増)、中国は約41兆円(前年比11.4%増)という結果だった。
博士号取得者が先進国では日本だけが減少していることがニュースになっていたのでメモ。
ちなみに 118 名という数字は、以前発表されていた数字から変化がないので、そこだけ見れば横ばいですが、そもそも増えていないことが大きな問題なんですよね。
博士号取得者 主要7か国で日本だけ減少傾向続く | NHKニュース
大学で博士号を取得した人がどれくらいいるか、主要7か国で分析すると、日本は2016年度、人口100万人当たり118人で、日本だけ減少傾向が続いていて、文部科学省は研究力が低下している原因の1つではないかと指摘しています。
前回と同じく元ネタは科学技術・学術政策研究所 (NISTEP) の科学技術指標2019です。
日本の博士学位の取得率が米独仏英韓中との比較で唯一減少していることがニュースになっていたのでメモ。
元ネタは文科省 科学技術・学術政策研究所の科学技術指標2018*1のようなので、詳しく見てみると人口100万人あたりの博士取得率は日本は 118 名ほど(2014年)で、最も多い 353 人のイギリスや、348 人のドイツと比べると3倍近く差があります。
待遇が良くないので、当たり前と言えば当たり前なんですよね。
修士・博士:日本だけ減少…研究力衰退あらわ 7カ国調査 - 毎日新聞
人口当たりの修士・博士号取得者が近年、主要国で日本だけ減ったことが、文部科学省科学技術・学術政策研究所の調査で判明した。
科学技術・学術政策研究所が発表した研究者の意識調査*1がニュースになっていたのでメモ。
研究費が足りなかったり、研究するための時間をもらえないのは大なり小なりどの大学でも同じ傾向のようです。
研究者「時間ない、お金ない」…現状に危機感 : 科学・IT : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
文部科学省科学技術・学術政策研究所は、大学や公的機関の研究者が、研究費や研究時間の確保が著しく不十分だとして研究環境の現状に危機感を抱いているとする調査結果を発表した。
ちなみに原文では、以下のようにもっと生々しく雑用が増えていることが指摘されています。
文部科学省 科学技術・学術政策研究所 科学技術・学術基盤調査研究室,"科学技術の状況に係る総合的意識調査(NISTEP定点調査2017)報告書(概要)," NISTEP REPORT, No. 175, p.4, Apr. 2018. (DOI:10.15108/nr175)
「研究時間を確保するための取組(Q202)」: 「大学改革、中期計画等の策定により、研究以外の業務エフォートが増加している」、「人員削減により、1 人当たりの事務作業や仕事量が増加(事務職員の不足)」、「機器のメンテナンスに時間を取られる」、「まとまった研究時間を確保できない(細切れ時間)」
僕もこのところ雑用ばかり(しかも組織の根幹に関わるような問題の仕事)なので、テンション上がらない日も多かったりしますが、科研も取れたのでめげずにやっていくしかないですね。
学位を取った後の人材が現在どうなっているのかについて NISTEP が実施した日本博士人材追跡調査の結果が公表されています。
少し前に「博士が100にんいるむら」という、博士課程の後の悲惨さみたいなものを描いた話が話題になりましたが、これのアップデート版のような感じでしょうか。
個人的に気になるのは任期と奨学金。修了後に任期なし採用されているのは約3割で、任期つきのうち3年以内の任期を付されている人が過半数を占めています。
また、返済義務のある借入金については半数弱(46.4%)がなし、200~500万円未満が40.7%、500~1,000万円未満が34.0%となっているので、みんな結構借りていますね。
「第1回日本博士人材追跡調査結果 (速報版)」の公表について | 科学技術・学術政策研究所 (NISTEP)
科学技術・学術政策研究所では2014年11月から12月にかけて「第1回日本博士人材追跡調査」を実施いたしました。本調査に御協力いただきました皆様に感謝申し上げます。
調査結果を取りまとめ、「第1回日本博士人材追跡調査結果 (速報版)」を作成いたしました。本結果(速報版)は暫定版であり、正式な報告書は2015年6月頃に公表する予定です。
NISTEP が発表した大学等教員の職務活動の変化という調査研究で、大学教員の研究時間が減り続けている実態が明らかになりました。暇な職業と思われているかもしれませんが、実際に下手なITエンジニアよりも忙しい職業です。時間割がびっしり埋まっているので、先日、学生に「これ?(体力的に)大丈夫なんですか?」と心配される始末。
大学教員の研究時間減少続く 13年、勤務全体の35%:日本経済新聞
大学教員が研究に充てる時間が減り続けていることが7日、文部科学省の科学技術・学術政策研究所の調査で分かった。2013年の勤務時間に占める研究活動の割合は35.0%で、08年の前回調査から1.5ポイント低下し、02年の初回調査に比べると10ポイント以上減った。
原文は下記から読むことができます。
科学技術・学術政策研究所 (NISTEP) がポスドクの現状についてまとめた調査結果を発表*1していたのでメモ。これによると 2012 年度のポスドクはのべ16,170人。最多だった2009年度に比べると1,000人ほど減ってはいるようです。
僕も元ポスドクなのでやっぱりこういうのどうしても気になってしまいます。それにしても、よりによって一番人数が多いときにやっていたんですね。この報告書で一番最初に確認したのは進路状況。というのも、ポスドクは必ず「任期付き」の採用で、その期間は1年~長くても3年くらい。年収は300万くらいのところが多いでしょうか。研究機関のプロジェクトや予算の期間によってまちまちですが、必ず数年内に出て行かなければならないポストなので、コンサルの「 UP or OUT 」のような感じで、常に「続けるか」「やめるか」という二択を問われ続けることになります。
"ポストドクター等の雇用・進路に関する調査-大学・公的研究機関への全数調査(2012年度実績) 速報版," 科学技術・学術政策研究所, p.12, 2014年8月,
2013年1月に在籍していたポストドクター等の2013年4月1日までの継続・職種変更の状況を見ると、65.3% (9,290人) が2012年度と同じ状況でポストドクター等を継続し、13.9% (1,978人) が機関・研究室・雇用財源を変えてポストドクター等を繰り返しており、合計79.1% (11,268人) が同一の機関・研究室・雇用財源の下でポストドクター等を継続している。一方、ポストドクター等から職種変更した者は12.5% (1,785人)である。
ここまで来た人はみんな死に物狂でやってきた人たちですから、やっぱり続けたい(できれば教員になりたい)と誰しも思うわけですが、イスの数は限られているので現実はそうもいきません。この結果を見ると職種変更できたのは全体の 12.5% (教員になったのは全体の 7.1%)で、教員に限ってみれば14人に1人というかなり狭き門だということが分かります。しかもかなりの割合でその後も任期付きの職が続きます。
また、状況不明が 8.3% いますが、おそらくこれがこの道を諦めた人の割合でしょう。順当に進学していても30歳近い人が多いはずです。自分にとってはもはや過去形ですが、この数値を改めて冷静に見ると恐ろしくなります。自分のしてきたことに後悔はありませんが、現状を見る限り他人には絶対に薦められない道であることは確かです。