■薄桜鬼
幕末、文久三年──
主人公である雪村千鶴は、江戸育ちの蘭方医の娘。
父の綱道は娘と離れ京で仕事をしていたはずだった。
連絡が取れなくなった父を心配した千鶴は京を訪れる。
千鶴はそこで見たのは、
血に飢える化け物を切り伏せる新選組の隊士だった──。
新選組と奇なる縁により結ばれる千鶴。
行方不明の父を捜すうちに主人公の前に現れる謎の刺客たち。
やがて明らかになる新選組の秘密──羅刹の存在──。
狂った時代の中で、理想と信念を胸に刃を振るう男たち。
幕末の争いの陰で、新選組の闇の争いが始まる──。
■薄桜鬼 随想録
【あの動乱の時代へ、再び】
文久三年 十二月――父を探しに京を訪れた雪村千鶴は、このとき彼らと出会った。
人々が恐れる人斬り集団≪新選組≫。
彼らの秘密を知ってしまったことで、千鶴の運命は変わる。
新選組の屯所に軟禁され、殺伐とした環境の中で父の安否を心配するばかりの日々。
今のところ、すぐに殺されることはなさそうだが、千鶴を監視する彼らの目は、決してやさしくはなかった。
彼らは悪い人間ではない。
気さくに話しかけてくれることもあれば、笑ってもくれる。
……だが、彼らにとって千鶴は仲間ではない。
もし千鶴に存在価値がなくなれば、すぐに斬られるだろう。
一寸前に向けてくれた笑顔など、何の保障にもならない――。
そんな思いを抱きながらの日々は、千鶴にとってはひどく辛いものであった。
そんな日々が三ヶ月ほど続いた、元治元年三月のある日。
千鶴と隊士たちの間に、ごくささやかな転機が訪れる。
――それが、彼女の随想の始まり。
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