架空の地方都市(「千葉の東・神奈川の西」と『密室の鍵貸します』にある)である烏賊川市を舞台に繰り広げられる本格ユーモア・ミステリー。作風としてギャグが多いこと、野球に関連する話題(話によっては野球を知らないとちんぷんかんぷんなものも多い)や外国産高級車に関する記述が多いことが挙げられる(これはほかの東川作品にも当てはまるが)。ユーモラスな会話のなかに伏線が張り巡らされており、物理トリックよりはプロットと叙述の見せ方によって効果的な結末を演出することが多い。この東川の作風については、有栖川有栖が『密室の鍵貸します』の推薦文で「思わず含み笑いをしてしまうような楽しい小説でもあるのだが…その面白さも実は〈罠〉かもしれないのだ」と評している。
また、西澤保彦の「匠千暁シリーズ」などとおなじように、作品ごとに探偵役が変わるのも特徴である。おおむね、複数の人物がいくつかの推理パートを担当して、それを収斂させることで最終的な結末に向かっていく。主な探偵役は烏賊川市警察の砂川警部と、私立探偵の鵜飼杜夫のふたり。
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