京都の駅ビルの中にある手塚治虫ワールドの中に300インチシアターという劇場があり、そこでオリジナル短編アニメが上映されています。手塚漫画の代表作の、そのエッセンスを詰め込んだアニメーション作品と、京都にまつわる歴史的なエピソードを紹介するアニメーションとの二本立てという形で上映され、その二本を火の鳥がストーリー・テラーとなってつないで行く、という構成です。 火の鳥は「平和な世界を夢見ながらも、過酷な運命に翻弄される人間たち」の象徴として手塚漫画の中から『リボンの騎士』を選んで紹介します。天使の間違いから女の子の体の中に男の子の心を入れられてしまったサファイヤ。男の子しか王位継承権を得られない国でサファイヤは女の子であることを隠し、王子として育てられます。けれど国の支配権を奪おうと企んでいるジュラルミン大公一派はサファイヤがじつは女の子だと見ぬき、それを公にして国民を騙した王を追放しようと画策しています。平和でおだやかな世界を夢見ながら、悪意に満ちた陰謀に立ちはだかられ、それでもなお「明日」を信じ続けるサファイヤの姿。火の鳥はそこに「希望を失わない限り、けっして世界から光は失われない」ことを伝えようとします。サファイヤのように平和を望みながらも陰謀によって戦いの渦中に巻きこまれて行った人物として、京都の歴史にその名を残す源義経を振り返ります。義経がまだ牛若丸と呼ばれていた頃に敵として出会い、その後、生涯の相棒として義経を守った弁慶という名の豪傑の物語。この有名なエピソードを手塚治虫のマンガ『弁慶』からキャラクターを引用しながら語っていきます。実の兄に嫉妬され、命を狙われる運命に「何故だ!」と問いかける義経の姿が胸に迫ります。
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