若者たちの、今を一生懸命に生きている姿が羨ましかった。料理、音楽、花など気持ちのよいものに包まれている青春小説。若かりし頃の記憶は薄れてしまうものだけれど、そのときの葛藤や人とのつながりは現在の自分自身の根になっているのだとしみじみ思った。高校生限定のオルタネートというSNSアプリは思わぬ縁を引き寄せる。現代は以前より世界を広げる可能性に満ちているが、その可能性を活かすもつぶすもその人次第なんだなと。終盤、文化祭一日目にあった、三者それぞれの出来事が、速まる心拍数と共に波のようにうねって盛り上がり昇華して真っ白い光の中へ放たれるような書き方、素敵だった。