『人よ、何故刀を振るう』
江戸時代、まだ怪異が現代より身近で鬼が跋扈していた頃のこと。
江戸より百三十里ほど離れた山間の集落“葛野”にはいつきひめと呼ばれる巫女がいた。
護衛役である甚太はいつきひめの為に刀を振るうが、何一つ守れず全てを失う。
巫女を、惚れた女を殺したのは大切な妹。
彼女は百七十年後、全てを滅ぼす鬼神となって再び現世に姿を現すという。
憎しみから鬼となった甚太は、何を斬るべきか定まらぬまま、遥か遠い未来を目指す。
鬼に成れど人の心は捨て切れず。
江戸、明治、大正、昭和、平成。
途方もない時間を旅する、人と鬼の間で揺れる鬼人の物語。
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