「春泥棒」以来約5ヶ月ぶりとなるヨルシカの新曲「又三郎」は、宮沢賢治「風の又三郎」をモチーフに制作。
現代社会の閉塞感、不安、憂鬱さなどを打ち壊して欲しいという想いを風の子に託した疾走感溢れるナンバー。
Review:
「どっどどどどうど」
宮沢賢治の『風の又三郎』はこう始まる。「青いくるみも吹きとばせすっぱいかりんも吹きとばせ」。童話の中で子供たちはそんな歌を夢に聞く。ヨルシカのデジタルシングル「又三郎」はその一節を引用し、広く知られた名作にオマージュを捧げた一曲だ。童話に登場する風変わりな転校生が、もし本当に風の精霊だったなら。時を超えて2021年の今も生きていたならば。風の又三郎が何気ない素振りで隣にいたならば、果たして僕らはその子に何を願うだろうか。鬱屈を抱えた毎日や、不透明な未来や、不誠実がまかり通る社会の仕組みや、何もかもを吹きとばしてほしいと思わないだろうか。
——柴那典/音楽ジャーナリスト
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