神の存在がいまほど遠くなかった時代。
剣と魔法が存在し、国家間の争いが絶えない世界。
人々はひとつの大陸の中で生きていた。その大陸の中では、
争いによって様々な国家が生まれ、そして争いによって滅亡していった。
人類がいなくなるまで、この争いは絶えることはないと、誰もが思っていた。
豊穣な土地と資源に恵まれた小さな地方を統べる女性貴族がいた。
彼女はやがて戦乱に喘ぐ民に平安をもたらすために立ち上がり、君主となる。
他国の覇道を阻まんと強力な軍を組織し侵略を退けていく彼女は、
希望の王と呼ばれた。
明日の平和を信じて、彼女の元には各地から有能な人物が集まる。
誰もが新たな時代の始まりを予感していた。
しかし希望の王は倒れる。
敵にではなく味方によって。
人々の希望は閉ざされ、より深い混乱と絶望が世界に拡がっていった。
希望の王の領土は蹂躙される。
豊穣な土地は各国の奪い合いとなり、
恵まれた資源を欲して各地から賊が押し寄せる。
そして希望の国は、大陸の中でもっとも混乱に満ちた国に成り下がっていく。
……人々の欲望の渦から逃げ延びた集団があった。
それは、希望の王の血を受け継いだ若き姫と、彼女を守る騎士団の精鋭たち。
希望はまだ失われていない。
若き姫君は、劫火に消えゆく故郷を背に国の再興を誓う。
市井に身を隠し、いつの日か必ず——
……旅を続ける彼女たちは風の噂で知る。
希望の芽を摘み取るための布令が広まっていることを。
生きていくことさえ困難な時代。高貴な身分が故に勝手がわからぬ生活。
先立つもののなくなった姫君の一行は、路銀を稼ぐ為、
裏路地にある酒場へ踏み入れていくのだが……
そこで待ち受けていたのは、賎ましい者たちの欲望だった。
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