向坂伸行はヘルパーとしても時々病院に通っている。病院から戻った早々、実家の引っ越しの片づけの続きを再開する。伸行の母が仕事をやめるため、ここを引っ越すことになったのだ。自分の部屋を片付けていると、ふと大好きな本の下巻だけがなくなっていることに気付く。下巻の内容を思い出そうとするが思い出せず、とうとう片付けそっちのけで上巻、中巻を読みふけってしまう。
本を読み終えても下巻の内容が思い出せず、気になる伸行はネットで内容の検索を始めたところ、ひとみが管理人のサイト「レインツリーの国」を偶然発見し、とても共感する。サイトにはメッセージボタンがあったため感想を書き溜めておいた。後日、本業の仕事の帰宅後に一杯やりながら、感想メールのハンドルネームを考えていたところ、ふと名前を思いつきメールに書き込んだところ、勢い余って送信ボタンまで押してしまう。
メール送信後、気持ち悪がられるのでは、と後悔する反面、返事がもらえるのでは、と期待する伸行だったが、返事はなかなかこず、あきらめかけていたころひとみからの返事が入る。大喜びの伸行はすぐに返信しようとするが、会社の先輩は、返信は夜9時まで待てという。伸行は先輩の忠告通り夜9時まで待って返信を送ったが、ひとみからはすぐ返事が届き、2人はとても盛り上がる。
会ったことのないひとみがどんな人なのか、思いをはせながらメールのやり取りを続ける伸行だったが、とうとう、会いたいというメールを送ってしまう。そのとたん、ひとみからの返事はこなくなってしまった。メールがこなくなって5日目、会社の先輩に話したところ社内の懇親会に誘われ、そこで社内の女の子に気に入られるが相手にせず、場の雰囲気を壊してしまう。
懇親会からの帰りの電車の中で、ひとみにお詫びのメールをどう入れようか悩んでいたところ、ついにひとみからの返事が届き、2人は青山の本屋で会うことになったのだった。
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