古の『協定』により、人と妖はそれぞれの棲む世界を『扉』で隔て、無益な争いを可能な限り避けてきた。
協定は200年に1度、人と妖の血脈を継ぐ者によって結ばれることで脈々と守り続けられていた。
そして今、再び協定を結ぶ時が間近に迫っていた……。
2007年、初夏―――。
行方不明者の多発した昨年は、『神隠し』の見出しが新聞の紙面に何度も掲載された。
多くの者は数日で還って来たが、幼馴染みの天宮月夜だけは還ってこなかった。
彼女が行方不明となってから過ぎた時間には様々な出来事が起こっていたが、
この事件を含めていろいろな事を諦めるには充分すぎる月日だった。
それ故に、彼女と再会した時の衝撃は大きかった。
「……約束、覚えてるよね?」
『神隠し』から還ってきた天宮月夜の登場を契機に、緋原龍一の運命が動き出す―――。
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