――収容施設の実験室で、有馬春は床に這いつくばり、
凶暴化しそうな己を、必死に抑え込んでいた。
「くそ……なんで収まらないんだよ……っ!」
日に日に弱っていく自分の身体。
最近では力をコントロールする事も難しくなり、
春は悔しさに顔を歪めた。
五年前、日本政府が行った実験「RUNLIMIT」の被験体となった春は、
実験失敗の代償として、その身体に致命的な欠陥を負ってしまっていた。
夜になると、実験が与えた右脳・左脳への影響で理性を喪失し、
凶暴化する体質へと成り果ててしまったのだ。
19歳の彼に残されたタイムリミットは、あと僅か……。
そんなある日、春は新たな監察官がつくと紹介される。
目の前に現れたのは、彼が昔から恋心を抱いていた幼馴染の少女。
しかし、彼女の中に春と過ごした日々の記憶は無くなっている。
その理由を、春はすべて知っていた。
内心では再会できたことを喜んでいるが、
まるで初対面であるかのように彼女と接する春。
その後も、何も打ち明けないまま、他人として関わり続けるが……?
この再会によって、実験の裏に隠された悲しき愛の物語が、ふたたび動きはじめる――
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