1994年6月、東京近郊の住宅地・富士見町に拠点を構える町内楽団「富士見市民交響楽団」通称フジミに、新しい常任指揮者・桐ノ院圭が現れた。フジミのコンサートマスターを務めるバイオリニスト・守村悠季は、圭の傲慢で高飛車な態度や、団員の実力以上の成果を求める厳しい指導方法に反発をおぼえるが、フジミは圭のカリスマ性と天才的な指導力によってしだいに上達していき、これまでにない盛り上がりを見せていく。 天才との差を見せつけられたことによりプライドが崩壊し、さらには憧れの女性である川島奈津子までもが圭に惚れていることを知った悠季は、嫉妬といらだちから「フジミをやめる」と宣言。だが圭はその言葉に激昂し、タンホイザーのCDを大音量でかけた部屋で悠季を激しく陵辱する。実は、圭はゲイであり、奈津子ではなく悠季のことを以前から愛していた。男に犯された屈辱と失恋のショックであわや発狂しかける悠季だったが、奈津子のとりなしなどによって圭の謝罪を受け入れるかたちで一件を不問にし、二度と強姦などしないという圭の言葉を信じて、お互い表面上はこれまでと変わりなくフジミに参加することに決める。 この件がきっかけとなり圭に嫌悪感を抱きながらも強く惹かれはじめた悠季は、さまざまな事件の末に彼の愛情を受けとめて恋人同士となる。愛しあい、時に反発しながら切磋琢磨していくふたりは、やがて日本を代表する若き音楽家として成長していく。
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