「カムイ」とは主人公である忍者、およびサブストーリーとして語られる狼の名前である。主にカムイ(非人)、正助(農民)、竜之進(武士)という三者三様の若者を中心に物語は展開されてゆくが、非人のカムイは物語の進展にともない傍観者的になり、農民の正助が物語の中心になっていく。江戸時代初頭の架空の藩を舞台に展開され、主人公もまた架空の人物である。百姓道具の発案を作中の架空の人物にさせていることや、作品の発表された時代背景により「穢多」「非人」身分を全て「非人」に統一しているなど、フィクション的要素も多い。旧来の漫画にはみられない様々な群像が入り乱れる骨太のストーリーが高く評価され、時代小説に比しても遜色ない漫画路線の礎を築いたとされる。それは「ヴィジュアルは映画を凌ぎ、ストーリーは小説を越えた」というかつてのキャッチコピーにもみて取れる。
白土はこの作品連載のために「赤目プロダクション」を設立。『カムイ伝』前半のペン入れを小島剛夕が、後半のペン入れを白土の弟である岡本鉄二がそれぞれ担当した。物語中盤において画風に少し変化が感じられるのはそのためである(明確ではないが、全15巻型単行本では第10巻第四章辺りから)。作品の最後に『カムイ伝』は全三部作であると述べられるが、これは当初から決まっていたことである。
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