時は大正。
主人公の和泉時雄(いずみときお)は、成り上がり華族の跡取り息子。幼い頃に拾われ、妹として育った結衣(ゆい)と共に、屋敷で暮らしていた。母親は早くになくなり、父親は世界中を飛び回り家に寄りつかない。そんな中で時雄と結衣は、本当の兄妹以上に家族の絆を深めていた。
しかしある日、隠されていた屋敷の地下室で妖しい棺を見つけた。時雄は、結衣が止めるのも聞かず、好奇心から蓋を開けてしまう。――果たして、中にはなにも入っていなかった。がっかりする時雄と、ほっとする結衣。ところが、事件はすでにこの時から始まっていたのである・・・・・・
その夜、テラスで結衣の姿を見かけた時雄は、信じられない光景を目にする。時雄の方に振り向いた結衣の目は紅く、紅く光っていた。次の瞬間、結衣の髪は美しい金髪へと代わり、口元には鋭い犬歯が除く。吸血鬼エル――そう名乗った少女は妖しく微笑むと、時雄の血を吸い始める。血を吸われるけだるさと共に、今まで味わったことのない快楽を感じながら、時雄の意識は遠のいていくのだった・・・・・・。
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